自民党県議団、JAに筑後の土地取得疑惑で調査要請 ④

ー 方向はひとつ ー

自民党県議団が動いたことで、組合員らは力強い援軍をもらった形だ。
ただ地元では、怪文書をきっかけに別の思わぬ波紋が広がっている。
同文書には、「なぜ大物議員に情報を漏らしたのか?」との見出しもあるからだ。
大物議員とは、地元選出の蔵内勇夫県議を指していると思われる。
その後も、組合の会合でこの問題が話題になった際、ある組合員から県議の名前が出てきたという。

確かに、パール社が土地購入を決めた頃と時期を同じくして、全農ふくれん幹部が筑後市長に面会した際、蔵内県議が同席したことは事実のようだ。
その時は全農ふくれんの事業の件での訪問だったが、その際に、同系列のパール社が駅裏に工場建設を予定している旨、市長に報告があったとしても何ら不思議ではない。

しかし、同席したというだけで「情報を漏らした」との情報が独り歩きし、まるで6億円の取引に関与があったかのように印象づけられてしまっては、県議にとっていい迷惑だろう。
そもそも怪文書は、その「情報」の内容や、情報と県議や土地取引との関係については何も述べていない。まさに最近流行りの印象操作の感がある。
巻き添えを食った形の県議や自民党県議団も余りに度が過ぎると立腹しており、繰り返される場合は法的措置も視野に入れているとの情報もある。

重要なことは、土地の価格が2年間で3倍になった事情の解明だ。
もし仮にJA予算から合理性のない法外な支出がなされ、しかもそれが全て東京の机上で決められたということであれば、情報収集、経理、監査に問題があると言わざるを得ない。
JAという組織が持つ「個々の農業者が互いに助け合って、営農と生活を守り高める」という目的から逸脱していると言ってよいだろう。

今、自民党県議団と地元の組合員は同じ方向を向いている。
JA全農の体質を、ここ福岡から問う良い機会と捉え、歩調を合わせていくべきではなかろうか。

― 了 ―

自民党県議団、JAに筑後の土地取得疑惑で調査要請 ③

ー 動いた自民党県議団 ー

組合員らが裁判も視野に入れて検討を始めていたところ、この状況を知った福岡県議会、自民党県議団 農政懇話会(原口剣生会長)が動いた。
福岡県は「足腰の強い農林水産業をつくる」と題し、多額の農業関連の補助金等を支出しており、農業従事者に不利益を与える土地取引の疑惑を問題視した。

10月13日、JA福岡中央会の乗富幸雄代表理事会長、全農ふくれんの大坪康志本部長がJA全農(東京都)の山本貞郎米穀部長らとともに議会棟を訪れ、農政懇話会のメンバーの質問に答えた。
冒頭、乗富会長が、今回の取引に関わりのない地元県議や自民党県議団に迷惑をかけたことを謝罪した後、山本部長からは、「日清製粉から不動産業者への売却価格は『農業の自立を考える会』の怪文書で初めて知り、土地は不動産鑑定評価額の範囲内で取得した」との説明があったという。

全農側の問題の深刻さを理解していないような回答には驚きだったが、懇話会は全農に対し、事実関係を調査して提起された疑惑に明確に答えるなど厳正な対処を要請した。
納得いく回答が得られない場合は、県議会から意見書を提出するなど厳しい態度でのぞむという。

山本部長らは、パール社の役員にかけられた背任の疑いに対する反証を示すことを約束して議会棟を後にした。

ー 続く ー

自民党県議団、JAに筑後の土地取得疑惑で調査要請 ②

ー 舞台は筑後、役者は東京 ー

東京都に本社を置くパール社は、用地取得に際し、土地の選定や仲介をJAグループの ㈱全農ビジネスサポート(東京都)、不動産鑑定をアデックスリサーチアンドコンサルティング㈱(以下アデックス社、東京都)に依頼、そして、福岡でサポートしたのが JA全農ふくれん(福岡市中央区)である。

価格決定の経緯についての組合員からの質問に、全農ふくれんは、「不動産鑑定業者の評価により価格を決定した。不動産鑑定は近隣地域での取引事例の価格を基にした取引事例比較法によって算定された。」と回答している。

しかし、同用地は都市計画法で用途が制限された工業地域で、市内の工業地の公示地価は約4.5万円/坪、商業地でも15.5万円/坪とされており、組合員らにとって到底納得いく回答ではなかった。

また、不動産鑑定を行ったアデックス社は、ホームページが存在せず、公益社団法人「日本不動産鑑定士協会連合会」のウェブサイトの業者検索でも、会社名はヒットするものの「(同社に)所属個人は存在しません」と表示され、実体がよくわからない会社である。

舞台は筑後市、JAの大型の施設建設の取引が行われたにも拘わらず、役者は全て東京、頼りの全農ふくれんからは十分な回答は得られない状況が続き、組合員らの不信感は募るばかりだった。

弊社も、パール社、全農ビジネスサポート、全農ふくれんにそれぞれ取材を申し込んだが、「個別の取引については回答できない」とのことだった。
また、アデックス社の代表を務める男性に電話取材を申し込むも、守秘義務があることを理由に断られてしまった。

ー 続く ー

自民党県議団、JAに筑後の土地取得疑惑で調査要請 ①

10月13日、福岡県議会自民党県議団、農政懇話会(原口剣生会長)は、JA全農(東京都)に対し、全農パールライス㈱(以下パール社、東京都)が、筑後市の日清製粉工場跡地を2年前と比較して約3倍の価格で購入した具体的経過について、調査及び説明をするよう要請した。

ー 出回った怪文書 ー

2014年4月、JR羽犬塚駅西側に隣接した日清製粉㈱筑後工場が閉鎖され、2016年5月に広川町の不動産会社が同工場跡地(約5466坪)を3億3000万円(6万371円/坪)で購入、2017年12月には筑後市が市道として土地の一部約204坪)を約1248万円(6万1050万円/坪)で購入した。
しかし、その7ヵ月後の2018年7月には、パール社が同不動産会社より 9億5000万円(18万548円/坪)で購入し、価格が約3倍になっていた。

一連の売買は民間同士の契約で他人が口を挟む余地はないが、問題は購入したパール社がJA(農業協同組合)グループということだ。
不動産取引の売買価格や面積は通常当事者以外は知り得ない情報だが、間に入った不動産業者は、約2年で6億円以上の利益を手にしたことになり、関係者の間で噂になっていた。

今年6月頃、「農業の自立を考える会」という団体名で、土地取引の履歴と地元の政治家の関与をほのめかす怪文書が筑後市内に出回り、JA組合員からは事実の解明を求める声が上がり始めた。

ー 続く ー