山本コウタローさんに感謝

ヒット曲「岬めぐり」で知られる 山本コウタローさんが 亡くなった。
私がひょんなことからコウタローさんに出会ったのは1984年、当時は ミュージシャンでありながら、松山千春さんらが所属する NEWSレコードというレコード会社のチーフプロデューサーという肩書だった。

シンガーソングライターを目指していた私にとっては雲の上の人、デビューのチャンスもあるかもしれない、とにかく胸が高鳴った。
コウタローさんは飾らない気さくな人で、初めて会った日も ニットセーターのひじの部分に空いた穴を見せて、こちらの緊張を解いてくれた。

毎週 新しい曲を2曲作って来るように宿題が出された。
千春さんのレコーディング風景も見せてもらった。
ちょうどその時は 「On The Radio」という曲の収録中、あまりヒットしなかったが自分の中では思い出の曲となっている。

ある時、ジョン・クーガーの American Foolというアルバムを貸して下さった。
曲調の線が細かった私に、ちょっとワイルドなアメリカンロックのテイストが必要という判断だったと思う。

ちょうどその頃は 尾崎豊さんがデビューしたばかり、オリジナル曲の斬新さ、正統派の歌い方、ルックスの良さなどで話題を集め、音楽業界からも一目置かれる存在となっていた。
自分としては才能不足を認識させられ、デビューは諦めることにして、以後 音楽は趣味でやることにした。
結局、コウタローさんの期待には応えられなかったが、最後に挨拶に行った時は、「俺も『岬めぐり』だけだもんなー」と笑っていたのを覚えている。

夢を見させて下さったコウタローさんには感謝しかない。
ご冥福をお祈り申し上げます。