歪んだ3号線広川~八女バイパス「広川町編⑨」

今から10年以上前、八女市本地区在住の一人の不動産ブローカーが市長に要求して始まったと言われるバイパス構想、市長が道路族の元国会議員にお願いして水面下で事業化を検討、ついに平成29年に内定した。

住民が本当に望んでいた 国道3号久留米市上津方面のバイパスは、だいぶ先の話になった。
今回のバイパス案は県道久留米立花線と並行する不要不急のルート、更に八女市本地区と広川町の上広川小学校の2ヵ所を通ることが必須条件であるがゆえ、住民のニーズを無視した歪んだルートになってしまった。


この事業費は最低でも300億円、国が200億円、県が100億円の負担をすることになっている。
県は事業化が決定すれば、予算が逼迫する中でも支出しなければならない。
住民の皆さんは、八女市と広川町が毎年、国と県に道路整備の要望を出しているのをご存知だろうか。



直近の要望を下表にまとめたが、事故の多い箇所、狭隘な箇所、過疎化の進む地域へのアクセス向上のための道路など、整備を急がねばならない事業が多数ある。
限られた予算の中から不要不急のバイパス事業に300億円を使えば、これら国・県道の整備は後回しになるのは確実だ。
バイパス建設を推進している 市長、町長、国会議員、地方議員ら政治家の先生は、この点についてどう考えるのか、支持している政治家に是非尋ねて頂きたい。

現在、県の都市計画決定手続きの最中で、遅くとも2月中には都市計画審議会が開催され、承認されれば、国の方で事業化に向けての最終手続きに入っていく。
この段階で、事業化にストップをかけることは通常は不可能と思われるが、弊社の記事は現地に足を運び取材に基づいたものということを申し添えておく。

仮に事業化が決定した場合、住民が刑事告発やそ行政訴訟を起こすこともじゅうぶん考えられ、その場合には証言してもいいという関係者が複数いることも事実、弊社としても今後の経過を見守っていきたい。

今回で「歪んだ3号線広川~八女バイパス『広川町編』」の連載は終了するが、今後ニュースや事件があれば随時掲載していく。



― 了 ―

歪んだ3号線広川~八女バイパス「広川町編⑧」

上広川小学校の移転・建て替えとなるルートの要望を、なぜ国が受け入れたか謎だった。
だが、「渡邊町長が『ルートは国に頼まなくても K先生に言えばいい』と述べたのを聞いて、国や県が怒っている」
という話を聞いて納得した。

K先生とは元衆議院議員、辞して尚 権勢を誇っている道路族のドンだ。
同氏の東京都千代田区の事務所には、今でも国交省の役人が並んでいるとの噂もある。

そう言えば、K先生の名前は別のところでも出てきた。
平成29年10月の衆議院議員選挙、選挙前や選挙中の集会で 現職の国会議員が、
「K先生が3号線バイパスを持ってきてくれました~」
と声高に叫んだのを多くの参加者が耳にしている。
口が滑ったのではなく、各地の集会で同じ話をしているので 聴衆に向けて K先生の功績を印象付けたかったものと思われる。

当時は、バイパスの話は水面下であったかもしれないが、表ではバイパスのバの字もない状況だった。
ようやく平成30年11月から 国・県・八女市・広川町で3号線の渋滞解消について正式に協議を始め、翌令和元年5月に 国がその整備方法について検討を始め、同11月に「3号線の4車線拡幅化」、「バイパス化(最短ルート)」、「バイパス化(山側ルート)」 の3案を提示、そして令和2年5月に 「山側ルートのバイパス化」に決定している。
この間、国は2度に亘り、アンケートなど住民の意見聴取を行ったが、これらは結論に持っていくための帳面消しだったということになり、参加した住民を馬鹿にするものだ。

地元町長と現職国会議員から出たK先生の名前、これは偶然ではなく、バイパス計画とそのルート決定に、力添えがあったと考えるのが自然だろう。



ー 続く ー

歪んだ3号線広川~八女バイパス「広川町編⑦」

国土交通省が道路を新設する際の、ルート選定について考え方に「既成市街地、人家連担地域は極力避ける」「学校、病院など公共施設への影響を極力避ける」とあるが、上広川小学校の上を通るというのはこれに反している。

国交省の会議で、初めて「国道3号 広川~八女」の渋滞解消が議題に上がったのが令和元年(2019年)5月、それまでは対策として何が考えられるか、バイパスを通すのか、国道3号の現道拡幅か、全く白紙の状態だった。
そして、住民の意見聴取等を経て1年後の令和2年5月、国交省の会議で最終的に山側ルートに決定後、福岡国道事務所と広川町がルートの調整で協議をしている。

当初、国が提示して来たのは、少しプールに掛かる程度のルートだったが、町が校舎の上を通すよう要望したという。
広川町役場の担当課によると、「バイパスによって集落が分断されるのを避けたい」「学校の真横に盛土のバイパスが走ると、教育環境としてよくない」というのが理由だ。
その要望を受け入れ、同年6月中旬に国が小学校の上を通るルートを決定したということだ。
それはそれで事実だと思うが、実際は小学校を壊して建て替えるという結論は、1年以上前から決まっていたようだ。

平成31年(2019年)4月に広川町長選挙が行なわれた際、選挙前の各地の集会で、渡邉町長が「バイパスを通して上広川小学校を建て替える」と話していたのを、多くの町民が聞いている。
4期目にして初の選挙、地元建設業界からも積極的に支援をしてもらっている。
できもしないことを言えば信頼を失う。
ましてや、3期務めたベテラン町長、余程確信がないとそういった発言はできない。
この時点で決まっていたと考えるのが自然だ。

校舎を壊すとなると、学校の移転、建て替えで 最低でも30億円は掛かるだろう。
バイパス事業では、土木工事の関連業者には しばらくの間収入が約束されるが、建築業にとってはあまり美味しい話はない。
バイパスを少しずらして学校を建て替えとなると、建築業も恩恵を受けることになる。
町の金は一切使わず、町内の建設業全体が潤う素晴らしいアイデアだ。

しかし、上広川小学校は平成6年に全面改築された鉄筋コンクリート造り、まだじゅうぶん使える。
通常、小学校建設に掛かる費用は、国と地方自治体は折半するが、国の都合で学校を壊す場合は、地方自治体の負担はなくなる。
上広川小学校の移転建て替え費用を負担するのは国と県、20億円を国民、10億円を県民が負担することになる。



ー 続く ー

歪んだ3号線広川~八女バイパス「広川町編⑥」

広川町の関係者の方から、平成27~29年度、町が国と県に新バイパスの要望書を出したという貴重な情報を頂いた。

広川町の懸案事項の一つに、町の中心を東西に横断する県道84号(三瀦上陽線)の整備がある。
特に、広川町役場北入口交差点から水原地区の若宮神社の間、約3.8kmは狭隘で上陽町方面に向かう大型トラックの往来も多い道路、道路沿いには2つの小学校と1つの中学校があり通学路になっている。



道路の拡幅が一番理想ではあるが、多くの民家が張り付いているため現実的ではない。
そこで、広川町は平成27年5月、県に対し県道84号(三瀦上陽線)のバイパスの要望書を提出している。
それを再現したのが下の図で、広川ICから水原地区の若宮神社付近までを結ぶルートだ。
これが実現すれば、上陽町方面へ往来する大型トラックが流れて、通学路の安全性向上に寄与すると思われる。

それと同時に、国に対しては、整備中の県道82号(久留米立花線)と並行する国道3号バイパス化を要望していた。



町は平成30年度以降はそのルートの要望を止め、令和2年6月に国が最終的なルート案(下図)を示した。
平成27~29年度の要望にある、2つのバイパスの折衷案のようなルートだが、今回地元から不満の声が上がっているのが、ルート上に上広川小学校があること、つまり校舎の移転・建て替えになるということだ。



ー 続く ー

歪んだ3号線広川~八女バイパス「広川町編⑤」

TY氏が動き出した平成29年、もう一人動いた人物がいた。
製材業を経営するW氏であるが、平成29年7月31日付で土地6筆約3785㎡(下図の緑色の2ヶ所)を購入、その3年後にバイパスが通ることが決まった。



この場所は農地で、農業委員会の許可を得て購入している。
農地の売買は営農意欲の高い人に許されるのが前提で、広川町農業委員会の内規では、「所有権移転後3年間は農業を行う」とされているが、現地(写真)を見る限りW氏にそのような意欲はなさそうだ。

土地を売った方の話によると、「相続した土地だが、遠方に住んでいて管理できないので売却した」ということだった。
購入して3年でバイパスが通る、W氏は買い物上手の様だ。


W氏が購入した農地(田)

ー 続く ー

歪んだ3号線広川~八女バイパス「広川町編④」

ところで、広川ICの供用開始が平成10年(1998年)、もう20年以上も前だ。
IC出口から3号線を突っ切って東に約1.8km、県道82号(久留米立花線)に突き当った場所、利便性の高い地点で、実際に県道84号(三潴上陽線)のバイパスの話もあったようだ。
今回、国道3号線のバイパスの起点になることがほぼ決定しているが、TY氏の「目の付け所」はさすがだったと言える。

二人の地権者の話を合わせると、TY氏が国道3号線のバイパスの話が出てくるずっと前から、バイパスが走ることを確信しており、計画が確実になればTY氏が法定手続きを代行し、開発行為に入るつもりだったと思われる。

問題は今回の開発行為を始めた時期だ。
平成28年11月、一般国道3号線改良促進期成会(久留米市・鳥栖市・小郡市・八女市・広川町・基山町)の要望書が国に提出されたが、この年までは、「未整備区間の整備(久留米市・広川町・八女市)久留米市上津町~八女市立花町」と記述されている。
だが、翌29年に、国交省福岡国道事務所が八女市と広川町のバイパスで検討するという考え方を取りまとめており、同年11月に提出された同要望書では、久留米市が分離され、バイパス新設(広川・八女東部地域)という記述に変更されている。
そして、農地を平地にする申請書が出され、開発行為の手続きが始まったのが同年9月20日のことだ。

このタイミング、偶然と言えるだろうか。
八女市編でお伝えしたように、T氏やJ氏が新会社を作って土地開発に動き出す時期とほぼ一致する。
バイパスの話は漏れたら大変なことになり、自治体の幹部と所管課の担当職員以外は知り得ない情報だ。
TY氏が何らかの方法で情報を掴んだと考えて間違いないだろう。





 

ー 続く ー

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歪んだ3号線広川~八女バイパス「広川町編③」

今回開発行為が行なわれた場所の地権者お二人から話を伺った。
一人は80歳は過ぎておられるようにお見受けしたが、
「あの場所は、土採取業者の営業が来て土砂を取りたいと言ってきた。平地になったら梨の栽培を始めたい。土砂の費用はもらってない。」
とのことだった。
ご高齢とは言え、農業に対する意欲は感じられた。
造成費用は全体で約1200万円とされているが、実際は土採取業者に無料で土砂を提供することで造成費を相殺、「Win Win」の取り引きが成立したようだ。

もう一人の地権者(久留米市在住)の方は、電話での取材となった。
「あそこの土地を、バイパスが走るというのはもう随分昔からの話、当時不動産会社の社長(現在は会長)TYさんがまとめて計画している。あの場所を何とかするということで、地権者みんなで集まって印鑑を押して任せている。」
と、TY氏が絵を描いていたことが判った。
計画では梅の木15本を植えることになっているので尋ねたところ、
「それもどうなるか分からない。何年か前に、どっかの差し金で、農地がどうのこうのという話になった。何が目的で何がどうなっているのか自分は分からない。」
と、ご自分で農業を始める気はないらしい。

農地改良の目的で開発行為を行なった場所は、その後農業をすることが前提だが、農業を行う期間の法的縛りはないため、地権者が望めば農地を宅地に転用することは手続き上可能という。
デベロッパーが宅地開発する際によく使う手ということで、近い将来、地権者から宅地への農地転用の申請の書類が提出されることだろう。



ー 続く ー

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歪んだ3号線広川~八女バイパス「広川町編②」

国が、バイパスの起点がこの場所になる可能性を示したのが、令和元年(2019年)11月8日、社会資本整備審議会の資料として添付されたのが初めてである。
(1)現道4車線拡幅、(2)バイパス最短ルート、(3)バイパス山側ルートの3案のうち、(3)の山側ルートになれば起点になることが分かる。

そして今年5月、同審議会で山側ルートに決定、6月に山側ルートの帯の範囲内で、国道事務所が詳細ルート(下図 ピンクのライン)を広川町に提示した。
現在は、広川町の総意として、県に都市計画決定の要望書が提出され、県の方で手続き中である。

今回、急ピッチで造成を終えた場所はオレンジの部分だ。



ここが造成された理由は、「農地の改良」ということになっている。
もともと地目が「農地」だったところだが、平成29年9月20日付で「耕作能力を上げるため、山土を採取し、土地高低差を減少させる」ということで、広川町の農業委員会を通じて県に許可申請書が提出されている。
添付された資料を見ると、3年間で 約1万400㎡の山林から、土砂約2万5000㎥を採取、その後、果樹園にして、梨の木 約48本、梅の木 約15本を植栽するという壮大な計画で、造成費用は約1200万円とされている。

先月末に造成を終えたばかりなので、これから梨と梅の木が植栽されると思われるが、これだけの投資をしたのだから、最高級の品種の梨や梅が栽培されることだろう。



ー 続く ー

歪んだ3号線広川~八女バイパス「広川町編①」

平成31年4月に行われた統一地方選挙、広川町では32年ぶりとなる町長選挙が行われた。
1期目から3期連続無投票で当選を続けていた現職の渡邉元喜町長(71)であったが、元航空自衛官将補の竹下英治氏他1名が立候補、厳しい選挙が予想される中、渡邉陣営は必死に支持拡大を訴えた。
その結果、農業団体から土木業界まで幅広い支持を得た渡邉氏が勝利を収めた。

同町で建設会社を経営するTY氏も渡邉氏を積極的に支援した一人、選挙前にTY氏の夫人が町長の引き回しをしたことで、地元では話題になっていた。
TY氏が経営する建設会社の売上は、毎期2億円台から7億円台と大口案件の有無で波があるが、同町では滅多に出ない1億円以上の町発注建設工事に過去10年の間に、JVで4回挑んで見事に4回落札と、強運ぶりを発揮している。

ところで、そのTY氏の会社から直線距離で約200m東に進んだところが、「八女~広川3号線バイパス」の起点(予定)である。
九州自動車道広川インターチェンジから国道3号を直進し、県道82号久留米立花線(通称藤山線)に突き当たったT字路の箇所である。

そのT字路に面した土地は、以前は小高い丘(地目は田・山林)で草木が生い茂っていたが、平成29年9月から大規模な造成が始まった。

3年前の航空写真はこちら

平成29年というと、「歪んだ3号線広川~八女バイパス『八女市編』」で伝えたように、久留米市を分離して広川から八女のバイパスという考え方が取りまとめられた年である。
そして、国交省が八女市・広川町に詳細ルートを示したのが今年6月、造成のスピードにギアが入った。
下は、今年10月2日と12月7日に撮った写真だが、いかに急いだかが見て取れる。
その土地について取材していくうちに、興味深い話を耳にした。



― 続く ―

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歪んだ3号線広川~八女バイパス「八女市編⑰」

10月21日から始めた「歪んだ3号線広川~八女バイパス『八女市編』」も今回で最後、まとめようと思った矢先、元市役所OBの方と16年前に完了した土地改良事業の関係者の方から、とても貴重な情報を頂いた。

いずれも、本連載を興味深く読んでおられ、知っていることは話しておきたいとのことだった。
当事者しか知り得ない大変驚く内容で、最後の最後で点と点が繋がり線になったが、ここで紹介するには実名報道が不可欠と思われるため、記事にするのは差し控えたい。

その代わりと言っては何だが、空想物語(別掲)を書いてみるので、ご一読頂ければ幸いである。

さて、この連載を始めたきっかけは、八女市~広川町間に3号線バイパスが通ると聞いて、「なぜ最も渋滞する広川町~久留米市間のバイパスが後回しになるのか」と疑問を持ったからだ。

取材を通じて、八女市では行政を歪める一部の者、それを止めない、止められない政治家がいて、本来必要のない事業に大切な税金が投入され、住民に不利益を与えていることが分かった。
このバイパスについても同様で、T氏の意に沿ってルートが引かれたことは間違いない。

主導したのは国土交通省福岡国道事務所、福岡の道路インフラを司る頭脳集団だ。
当然、全体の奉仕者である公務員としての矜持は持ち合わせておられ、内部でも相当数の反対意見があったと信じたい。
しかし、結果的に事業化に向けて進んでいるところをみると、政治家からの圧に屈したと思われる。

また、同じく国道3号線の渋滞緩和の目的で、県道82号線(久留米立花線、通称藤山線)が整備中である。
それと並行して走るバイパスに、総事業費300億円、うち県は100億円を支出する。
実際、バイパス建設が決まって喜んでいる住民の方は少ない、というより一度もお会いしていない。
むしろ、久留米市方面へ向かう3号線バイパス、東部の中山地域への県道整備を望む声が圧倒的に多い。
今回のバイパスが数年後に完成しても、主たる目的の「国道3号線の渋滞緩和」が解消されるとは考えにくく、地元からの要望の多い県道整備は後回しになるだろう。
同じ区間、同じ目的の道路に二重に支出することに、財政が逼迫している県が同意するとはとても考えられない。

現在、事業化に向けて都市計画決定の手続中、もう止めようもないが、コロナ禍の今こそ、限られた国家予算と県予算の優先順位としてこのバイパスが相応しいか、与野党の国会議員、県議会議員の先生方にはご議論頂けるものと信じている。

この連載はひとまずここで終了にするが、また追加の情報があれば随時お伝えしていきたい。

ー 了 ー