殿敷侃 逆流のうまれるところ

現代アート作家の殿敷侃(とのしきただし)氏が、50年の人生をまっとうしてから、早いもので四半世紀が経過したが、今でも殿敷侃氏は芸術を志す人たちの心の中に生きている。
その殿敷侃氏の足跡をたどることで、彼が50年前から原爆について、また環境問題について、いかに考え作品を制作してきたかという点にスポットをあて、作家殿敷侃を再び蘇えらせるために、広島市現代美術館学芸員の松本剛氏は「逆流の生まれるところ」と題した今回の作品展を企画したという。
殿敷侃氏の50年の人生の中で何年おきにか必ず訪れた節目を、そのつど作品として表現してきた彼の生き様を、見事に再現したのが今回の企画展だ。
殿敷侃氏が最後にたどり着いた分野は巨大オブジェの世界で、作品として残すことが出来ず、ビデオや写真として現存するだけだが、かつて彼の写真集製作に携わった一人として、今回の作品展を見て、誇りに思うことが出来た。

【殿敷侃・逆流の生まれるところ】作品展
「原爆・環境・協働」
日時:3月18日(土)~5月21日(日)
10:00~17:00
会場:広島市現代美術館
広島市南区比治山公園1-1
休館:月曜日
料金:一般1030円・大学生720円・高校生(65歳以上)510円

続・殿敷侃~現代アート展

我が家には1枚の写真を、絵葉書にしたものが飾ってあるが、それが殿敷侃(とのしき ただし)氏との出会いのキッカケになった作品だ。
日本海の透き通るような青空に、排気ガスで枯れた松が天に向ってそびえ立ち、その松の枝に古びた黒いタイヤが掛けてあり、吸い込まれそうな空に毅然と立っている。
枯れ松と古タイヤを組み合わせた、色の対比と構図が素晴らしく、自分の目で見たくなり、山口県長門市に車を走らせた。
その写真も同氏の作品集、「逆流する現実」の本に収録されているが、あれから少なくとも20年は経過しており、作品となった長門市の松も、朽ち果てていることだろう。
殿敷侃氏が制作した現代アートの作品は、展示されたり、現存しているものが少なく、今となっては作品集に納められたものが大部分で、貴重な本になってきた。
今回の展覧会では、この作品集を保管してきた親族の好意により、広島市現代美術館にて先着で何名かの希望者に販売するように聞いており、作品集を購入すれば、殿敷侃氏がより身近に思えるのではなかろうか。

殿敷侃~逆流の生まれるところ~広島市現代美術館

昭和17年に広島で生まれた、現代アート作家の殿敷侃氏(とのしき ただし)は、患っていたガンで平成4年、50歳の若さで亡くなった。

こうした中でつい先日、広島市現代美術館から、殿敷侃氏の没後25年を振り返り、「逆流の生まれるところ」をテーマに、3月18日(土)から展覧会を開催するとの招待状が届き、平成2年3月に殿敷侃氏の念願の作品写真集「逆流する現実」の出版に携わった関係者の一人として、月日の経つ早さに驚いている。

今年で74歳を迎えるが、民間の調査期間に勤めていた関係で、数多くの本の出版にかかわってきたが、この「逆流の現実」ほど制作に悩み落ち込んだのは後にも先にも無い。

殿敷侃氏は被爆者でもあり、健康には人一倍気を使っていたが、念願の作品集である「逆流する現実」が完成すると、ヨーロッパを訪問する前に、本を持って我が家に寄り、おいしい酒を酌み交わしたことが昨日のように思い出される。

改めて、作品を見つめてみたい。

【殿敷侃 逆流の生まれるところ】
日時:2017年3月18日(土)~5月21日(日)
10:00~17:00 入館は閉館の30分前まで
休館:月曜日 ただし、3月20日(月・祝)は開館、3月21日(火)は休館
主催:広島市現代美術館
広島市南区比治山公園1-1
TEL:082-264-1121
後援:広島県、広島市教育委員会、広島エフエム放送、尾道エフエム放送
料金:一般1030円、大学生720円、高校生・65歳以上510円


【関連イベント】
ワークショップ「シルクスクリーンを体験してみよう」
講師:斉藤伸三氏(スクリーン印刷、殿敷侃制作協力者)
日時:4月23日(日)13:30~17:00
定員:20名 参加無料
応募:ホームページをご覧ください