議員定数削減、提案者の真の目的とは?

飯塚市議会で「議員定数のあり方に関する調査特別委員会」が開催されているが、市民3000人に現行の定数28の是非を問うアンケートを2月に実施することが決まったという。
前期、経費節減を理由に次の選挙から定数を28から24に削減する条例改正案を可決するも、市民団体の請願が採択されたことで一度も選挙をしないまま定数を28に戻したことが話題になった。

多様な市民の声を拾い上げるには議員は多いに越したことはなく、他自治体と比較しても 人口12万3700人に定数28が必ずしも多いとは言えない。
「議員定数削減で経費節減」というと聞こえはいいが、経費節減なら議員報酬削減という方法もある。
なぜ議員定数はそのままで報酬削減という議論にならないのかが不思議だ。

実は、この定数削減の裏に隠された本当の目的があるという話を聞いた。
委員会開催を提案したのは、立憲民主党の道祖満議員、他に立憲民主党の市議が2人いるのになぜか坂平末雄議員と会派を組んでいる。

坂平議員と言えば、前期は副議長辞職勧告決議が可決したにも拘わらず2年間副議長の椅子から下りなかったほか、新飯塚市体育館移動式観覧席入札の不正の疑いで百条委員会にかけられ検察に告発されたことで知られる。
それでも選挙にはめっぽう強く、昨年4月の統一地方選では「今すべき事を、今行います。」と当たり前の公約を掲げ、定数28人中7位の素晴らしい成績で再選を果たした。

さて、今回の委員会設置を提案した道祖議員は、平成29年9月議会において公共工事の入札に総合評価方式を取り入れるよう求めた人物だ。
翌30年に市は総合評価方式を導入し、その後4年間で坂平氏が株式を保有する企業グループが、市が関連する公共事業のうち約3分の2を受注、それに反発した地場17業者が「総合評価方式は不公平」として廃止を求める請願書を提出した経緯がある。

道祖議員が信念に基づいて提案した総合評価方式によって仲間が潤ったが、これはたまたまで、きっと偶然と思われる。
定数が28から24に減ると、現職の4人が落選する。

複数の地場業者に取材したところ、「それが本当の狙い」という答えが返ってきた。
総合評価方式の撤回に賛同する政敵を落選させるため、市民受けする議員定数削減を掲げているというのだ。

考え過ぎと思うが、そんな見方もあるのかと感心した次第である。

建設土木業者の反乱・飯塚市

建設・土木業者の請願が可決

9月27日の飯塚市議会最終日、市内のSランク建設・土木業者22社のうち 17社が連名で提出した請願書が、14対12の賛成多数で可決された。
この請願は、平成30年度より試行的に導入された、1億5000万円以上の市発注工事に導入した入札制度「総合評価落札方式」の廃止を求めるものだ。

22業者のうち17業者というのは ただごとではない。

飯塚市に限らず、国や地方自治体、それに準じる公共工事の発注者は、これまで公平公正で最適な発注ができるよう試行錯誤を繰り返してきた。
原資は税金、発注銀額は安ければ安いほどいいのだが、出来上がった工事の品質が「安かろう悪かろう」ではよくない。

一般的に業者といっても 技術力はピンキリ、中には素行の悪い業者や 管理能力のない 要注意の業者が存在するのも事実である。
行政はこうした要注意業者が落札した場合、後々 苦労するため 頭を悩ますことになる。


それを避けるために 最近主流となってきたのが総合評価落札方式だ。
「価格」のみで決める従来の落札方式と異なり、「価格以外」の技術提案性能などの項目を評価・加点して落札者を決定する落札方式で、国や県も推奨している。

ではなぜ、飯塚市で いったん導入した総合評価落札方式の廃止を求める請願が提出され、可決されるという事態になったのだろうか。


総合評価落札方式導入で増した不公平感

総合評価落札方式が飯塚市で受け入れられなかった背景には、一部業者の圧倒的な受注額があることが分かった。

同市ではこれまで、一般競争入札において 低入札調査基準価格を事前公表してきた。
公共工事の発注数に対して業者過多、最近の入札は、低入札基準価格で業者が横並びになり、最後はくじ引きで決定する傾向にあった。

業者にとってみれば くじ引きで公平、役所にとっても 最も安い金額で発注できるというメリットはある。
その一方で、前述のようなデメリットもある。
ここに 国・県が推奨する総合評価落札方式を導入すると、こうしたデメリットを克服することが可能になる。

ただ、議会の一部議員からは、同方式では 総合評価ポイントの高い業者のみが落札するという指摘が出ていた。

導入して3年、結果はどうだったか。
平成30年度以降、これまで市発注の1億5000万円以上の工事は7件、合計約49億5000万円の一般競争入札が行われ、市外業者2社、市内の異なる業者5社が代表企業として受注しており、総合評価ポイントの高い業者に集中したとは言いきれない。



しかし、市内業者Sランクの受注額で比較してみると、総合評価ポイント3位の K社が受注1件約17億円で 全体の 57.7%を占めていた。
金額が大きい理由は、令和2年5月に飯塚市新体育館建設工事(約34.8億万円、追加工事費約7億円を含む)を、市外ゼネコンとのJV(JV比率 51:49)で受注したことによるものだ。
また、K社のグループ企業で 総合評価ポイント 1位の S社が 1件約3.3億円で受注しており、グループ合計で約20.4億円、全体の 69.1%を占めている。

そうは言っても、受注全7件中、 K社とS社の受注件数は 1件ずつに過ぎず、むしろ 総合評価ポイント 4位のD社が 2件で計約4億円受注しており、不満が出るまでには至らないと思われる。

取材を進めていくと、不満の要因は まだ他にもあることが分かった。


市発注の工事以外でも

市発注の一般競争入札以外に目を向けると、不公平感が増した理由が見えてきた。

それは、平成30年8月にプロポーザル方式で公募された筑豊ハイツ建て替え工事、そして、令和元年に組合立消防署が行った庁舎及び車庫建設工事の一般競争入札である。

市営の公共施設、筑豊ハイツ建て替え工事は 「設計、施工、運営」をセットにした発注で 、プロポーザルに参加したのは1JVのみだった。
審査の結果、提案は適正ということで K社提案価格 約12.6億円(落札率99.73.%)で受注している。
当時、他業者からは、「条件が複雑な割に公募期間が短か過ぎる」、「もっと安くできたのでは」など疑問の声も上がっていた。

令和元年7月に組合立の消防署が発注した庁舎建設工事は、総合評価落札方式の一般競争入札で、S社が 総合評価ポイント2位のA社とJVを組み、約11.1億万円で受注した。
更に同年9月、同消防署の車庫建設工事は、同じく総合評価落札方式の一般競争入札で、K社が 約2.2億万円で受注している。
ちなみに、この2つの入札いずれも、応札した6社が低入札調査基準価格で横並びになっていた。

この3年間、市発注の一般競争入札に プロポーザル方式と組合立の工事まで含めると、市内Sランクの業者が受注した工事金額の合計は10件約56億円、そのうち K社が約32億円、S社が約11億円、グループで合計43億円、全体の約77%を占めたことになる。

こうした状況を見る限り、他の業者の間で不満が溜まっていったことは頷ける。
今回僅差で請願は可決となったが、多数の業者が連名で S社・K社の王国に真っ向勝負を挑んだとして 注目が集まっている。

自治体を悩ます入札制度

総合評価落札方式そのものに欠点があるわけではなく、S社は福岡県下でも有名な 定評のある業者、発注者側に安心感はあるかもしれない。
ただ公共工事が限られる中、地元の一部業者の独占状態となると バランスを欠き、軋轢が生じるのは仕方がないことだ。
何でもやり過ぎはよくない。程度というものがある。

今回請願に Sランク22社中 17社が署名し議会で可決したが、中には地元新聞社にも取り上げられ、ここまで大ごとになると思わなかったと 後悔している業者もいるという。
請願で要望されている総合評価落札方式を中止しても、問題が解決するとは思えないが、それぞれの立場で 多少 動きが変わってくるだろう。
飯塚市としても請願内容を受け止め、より適した入札の在り方を工夫していくことが求められている。