元市議会議長と商工会会頭、告発される

15日、豊前市 及び 民間会社の経営者1名は、市が出資する第三セクター「豊前開発エネルギー㈱(以下三セク)」の経営者らを特別背任事件として、豊前署と地検小倉支部に刑事告発した。

豊前市は、告発対象者である三セク役員の氏名を、個人情報保護を理由に公表していない。
しかし、もう1人の告発者、三セクの出資者で南洋ホールディングス㈱社長の甲斐明夫氏の弁護士は、三セク社長の白石康彦氏(元北九州市建設局長)、副社長の上田大作氏(豊前市商工会議所会頭)と専務の片桐達朗氏の3名に加え、契約の相手方である㈱進栄海運社長の磯永優二氏(元市議会議長)も共同正犯として告発の対象としたことを明らかにした。

甲斐氏の弁護士によると、三セク設立時は取締役であったが、相応の売上があったにも拘わらず利益が出ていなかったため、三セクに問い合わせるも回答がなく、その後、2021年の株主総会で理由の説明もなく取締役を解任された上、誹謗中傷する嘘の情報をネットニュースに提供されたという。

豊前市も三セクに対し、不透明な支出があるとして書類の提出や説明を求めてきたが回答がないまま現在に至っている。

豊前市と甲斐氏は、三セクの経営者らが、進栄海運への高額な委託料が三セクに損害を与えることを認識しながら契約を締結していたと考えられることから、実態解明を司直の手に委ねることにした。
対象者に元市議会議長や商工会議所会頭が含まれており、今後 検察と警察の対応に注目が集まるだろう。

参考記事 → 三セク幹部を背任罪で告発へ(2024年1月18日)


甲斐氏の弁護士が公表した資料より

 

 

三セク幹部を背任罪で告発へ

豊前市が出資する第三セクター「豊前開発環境エネルギー㈱」の経営が不透明な状況に陥っている問題で、市は代表取締役社長 及び 取締専務を背任罪で告発する方針を固めた。

弊社記事はこちら → 豊前の超優良企業(2023年7月27日)

同社は平成26年6月、豊前海の水質改善に使用するハイビーズ(石炭灰を再生加工したもの)製造を目的に 民間企業10社と豊前市が出資して設立され、市は480万円を出資、監査役には榎本義憲副市長(当時)が就いていた。

同29年11月から 原料に九州電力の長崎や熊本の石炭火力発電所から排出される石炭灰を船で搬入。
当初は設備投資で赤字スタートだったが、令和3年3月期に初めて黒字を計上、経営的に明るい兆しが見えていた。

ところが、同社は市に毎年詳細な会計報告をしないという不可解なことが続き、黒字転換後の市からの出資金精算の要求にも回答を避けるなど不誠実な対応に終始、市議会からも問題視する声が上がっていた。

そうした中、令和3年12月、県が発行する事業許可証を偽造しバイオマスの焼却灰を取り扱っていたことが発覚、同4年3月には許可取消の処分を受け、向こう5年間は営業ができなくなるという事態に陥った。

その後、市が会計書類や過去の取締役会の議事録等の提出を求めても、何かと理由をつけて応じなかったことから、市議会は 昨年12月、10回目の調査特別委員会を開き、市長に対し「告発すべき」との申し入れを行っていた。
市民への説明責任があるため、市は昨年来弁護士とも方針を協議をしてきたが今年に入り告発することを決めた。

同社の支出先に、元市議会議長が経営する企業に不当に高額な費用が支払われている疑いがある。
今回の告発対象は、代表取締役社長と取締役専務ということだが、副社長(豊前市商工会議所会頭)や監査役(元副市長)も、設立時から不透明な資金の流れがあることを認識していたと見られており、全容が明らかになることが期待されている。

豊前の超優良企業

役員報酬 家族3人で7600万円

福岡県豊前市に、主に九州電力㈱から得る収入で潤っているS社という企業がある。
家族経営で不景気やコロナ禍であっても安定収入があり、京築地区における超優良企業と言って良いだろう。

同社は、宇島港に入る石油運搬船の水先案内を主たる目的として設立された会社だ。
公表資料によると従業員4人、直近3年間の平均年商は 約1億9000万円でコロナ禍の影響はなし、それらは九州電力、豊前環境開発エネルギー㈱、豊前ニューエナジー合同会社、以上3社からの収入で、約1500万円の純利益を安定して稼ぎ出している。

特筆すべきは役員報酬である。
役員には代表取締役として元市議会議員のA氏とその 家族2名が名を連ねているが、令和3年3月期には その3人に計 7600万円が支払われている。

S社の直近4年の決算

S社がどのように安定した財務基盤を築いたか、その成り立ちについて取材をしたところ、実に興味深い話を聞くことができた。

昭和52年、豊前市の宇島港で九州電力の豊前(石油火力)発電所が稼働を始めた。
昭和の時代、国内各地で海岸埋立地に発電所が建設され、電力会社からかなり手厚い漁業補償等の地元対策がなされたという話を聞くが、ここ宇島でも 例に漏れず 同様の対策が行われた様だ。

関係者の話では、豊前発電所の建設が決まってから九州電力と地元住民との間で協議が行われ、水面下である合意がなされたという。
それは、九州電力から漁協に直接「補償金」として支払うことはできないので、幹部らが新規事業を行う会社を設立し そこに業務委託費として支払い、その会社から漁業関係者に還流させるというものである。

当時、物事を前に進めるための苦肉の策だったと思われる。
昭和50年9月、漁協の幹部4人が役員となって設立したのがS社(設立当初は有限会社)で、役員のうち監査役を務めていたのがA氏の父親だった。


成り立ちと現在

豊前発電所が運転を開始し、S社が石油運搬船港の水先案内をするようになり、九州電力からS社には 業務委託料が支払われるようになった。
設立当初こそ S社から漁協関係者に様々な形(飲み食いや旅行等)で支払いが行われていた様だが、平成に入り時間の経過と共に、次第にその回数や額も減っていったという。

平成8年に役所勤務だったA氏が市議会議員に初当選を果たす。
S社は役員の入れ替わりなどを経て 平成19年4月に株式会社に組織変更を行い A氏が代表取締役に就任、そして同25年12月には過去を知る全役員が退任し A氏1人の経営になった。
その後、同27年6月には A氏の娘が、同29年7月にはA氏の妻が取締役に就任し、家族経営の会社として現在に至る。

ちなみに、九州電力豊前発電所は令和元年6月に運転を停止、S社が水先案内を行っていた石油運搬船は入って来なくなったが、九州電力からの業務委託料は現在も継続して支払われている。

S社への支払い額と運転停止後の支払いの妥当性について、九州電力に電話で尋ねてみたところ、支払い額については「社内基準に基づき適正に査定している」ということで教えてもらえなかった。
また 支払いの妥当性については「S社は燃料の受入れ業務に必要な知見経験を有し、稼働するため契約維持が必要」という回答だった。
廃止が決定しない限り、今後も支払いが続いていくということだろうか。

公表資料によると、S社は 九州電力と、豊前市が出資する豊前開発エネルギー、及び 豊前ニューエナジー合同会社の3社からの収入があり、その合計額は約1億9000万円程度である。
令和2年3月期で 豊前開発エネルギーが支払った金額が 年間約4500万円だったので、九州電力からの業務委託料は年間1億円程度ではないかと想像する。

地元の人の話では、「過去も現在も殆ど仕事はなく、S社の社員は釣りをして一日を過ごしている」そうだが、それが事実なら こんな上手い商売はない。
繰り返すが、年間1億9000万円を売り上げ 純利益1500万円、役員報酬が家族3人で7600万円である。
高い電気料金に苦しんでいる住民がこれを知ったらどう思うだろうか。


会計報告をしない三セク

豊前市が出資している豊前開発環境エネルギー㈱という会社がある。
第三セクターでありながら市に会計報告をしておらず、不透明な経営が続いている。

同社は平成26年6月、豊前市海域の水底質悪化を改善するため、石炭灰を原料にした「軟弱ヘドロ地盤改良材・ハイビーズ」の製造を目的に設立された。
豊前市のほか 民間企業10社が出資、開業して5年間は九州電力の長崎や熊本の石炭火力発電所から排出される石炭灰を船で搬入、ハイビーズに加工する業務を行ってきた。
また、令和元年度からは豊前バイオマス発電所(イーレックス㈱・九電みらいエナジー㈱・㈱九電工の共同出資)等から排出されるバイオマス灰の加工業務を始めた。

代表取締役社長の白石康彦氏は元北九州市建設局長で北九州高速鉄道(株)代表等を歴任した人物、副社長には 現豊前市商工会議所会頭の上田大作氏(上田産業㈱代表)、監査役には豊前市からの榎本義憲副市長(当時)が就いている。

ところで、石炭やバイオマスの焼却灰は産業廃棄物に該当し県の許可が必要とされているが、開業7年目の令和3年12月、同社が 県発行の事業許可証を偽造しバイオマスの焼却灰を取り扱っていたことが発覚する。

→ 西日本新聞 福岡・豊前の三セク、バイオマス焼却灰を無断処理 県の許可証偽造か(2021/12/4)

結局、第三セクターの専務が逮捕(後に有罪判決「懲役3年、執行猶予5年、罰金50万円」)される異例の事態となり、同4年3月には県から許可取消の処分を受けたことで、向こう5年間は営業ができなくなっている。
問題は、同社の会計内容が市に報告されないということである。

そのために副市長が監査役に就いているのだが、当初から副市長の榎本氏は豊前市に同社の会計報告を一切行ってこなかったのではないか。
市が詳細な内容を把握していないことから そんな疑問が湧いてくる。
副市長でありながら市長の補佐役を十分に務めていなかったため、榎本氏は平成29年度途中に副市長を「解任」されている。

本来なら 副市長解任と同時に同社の監査役も辞任すべきところ、なぜか現在も榎本氏は監査役に居座り続けている。
市議会も同社の会計が不透明な点を問題視しているが、議会の問いかけにも応じていない。


こうした中、弊社では 同社が事業停止する前の令和2年3月期・ 同3年3月期の決算書を入手、確認したところ 3億円以上の債務超過に陥っていることが判った。


豊前三セクは清算か

豊前市が出資した 豊前開発環境エネルギー㈱(三セク)の所期の目的は、豊前の海の水質を改善することにあった。
そのために出資者が集い、九電の石炭火力発電所から排出される厄介者の石炭灰を同社で再生させることで、「九電」、「豊前三セク」、「再生に関わる業者」、そして何より「漁業関係者」も喜ぶ、先駆的な「四方良し」の仕組みを作り上げるということで、当時は意気揚々、やる気がみなぎっていたという。

会社設立は平成26年6月、プラントに設備投資をして、九電の松浦発電所から石炭灰が初めて入ってきたのが同29年11月、そこから本格的に稼働を始めた。

弊社が入手したのが令和2年3月期(令和元年度)と同3年3月期(同2年度)の貸借対照表及び損益計算書である。

令和2年3月期の売上高は 4億2332万0236円、売上原価が4億1205万4190円、最終利益が 4953万8161円の赤字となっており、長短借入金合計が 8億3691万0019円、3億8681万1416円の債務超過となっている。

令和3年3月期の売上高は 4億9211万3040円、売上原価が3億8865万5975円、最終利益が 3275万1809円の黒字、長短借入金合計が 8億1747万8019円、3億5405万9607円の債務超過である。

新規事業を始めた会社が、初期投資に費用が掛かり 債務超過でスタートするのは珍しいことではない。
また、当初の石炭灰に加え、令和2年1月からは近隣のバイオマス発電所から出るバイオマス灰の処理も始めたことで事業拡大の意欲も窺われ、同3年3月期では黒字に転換しており、債務超過脱出への希望も見え始めたと捉えて良いかもしれない。

ところが、その矢先の同3年12月、些細な書類偽造が発覚し、同4年3月には県による事業認可が取り消されるという事態に陥った。
向こう5年間は事業を再開することはできず、利益を生むことができない状況になっている。

令和4年3月期以降の決算は不明だが、関係者はもうこのまま復活は難しいのではと話す。
設備投資したプラントのメンテナンスもできておらず、九電から主原料の石炭灰が搬入される確約がなく、再開の見込みが立たないというのだ。

となれば、債務超過のまま清算、出資者は資金を全額回収できないことになる。
三セクだけあって簡単に清算とはいかないかもしれないが、豊前市も出資金の回収ができなくなる可能性もあるだろう。
結局、目的の豊前の海の水質改善も道半ば、当初のやる気も虚しく、三セクに関わった殆どの企業や人の 思惑が外れてしまったのである。


豊前三セクから不透明な支出

三セクの豊前開発環境エネルギー㈱は 所期の目的を果たせないまま債務超過の状態で事業が停止し、現在も再開の目途が立っていない。
豊前市を含め、関わった全ての出資者の思惑は外れ、もはや精算するしかない状況と言えよう。

そうした中、決算書類を見ていくうちに、出資もせず、ただ儲かったと思われる企業が存在していることが判った。
それが前述のS社である。

S社は、松浦発電所から搬出される石炭灰の運搬船が入港する際、水先案内をする業務を委託されていた。
令和元年4月~同2年3月の1年間に同運搬船が入港したのが 計48回、1週間に1回のペースである。
そして、豊前開発環境エネルギーからS社に支払われた金額が、1年間で4812万5000円、傭船料が1回当たり約100万円という計算になる。

また、Y社(北九州市)に対しては、豊前開発環境エネルギーが 浮桟橋の賃料という名目で 年間 2376万円を支払っている。
月額に換算すると 約200万円、浮桟橋とは、石炭灰の運搬船からの積み下ろしや係留を目的としているそうだが、その必要性について疑問を呈する関係者もいる。
しかも、同浮桟橋の所有はなぜか S社、S社所有の物件を わざわざY社に支払っているのかが謎である。

そして興味深いことに、Y社の株式の一部を北九州市議の渡辺均市議が所有し、平成30年8月21日から令和5年1月25日までは役員に名を連ねていたことも判った。
Y社の代表者に 上記の不明な点について電話取材を試みたが、数回かけても代表は留守ということで直接話を聞くことはできなかった。

以上のように、S社とY社へ豊前環境開発エネルギーから不透明な支出がある。
同社監査役の榎本義憲氏が これまで市や市議会で会計内容の説明をしていれば、このような疑念を持たれることもなかったと思われるが、副市長を解任されても監査役を辞めず、一切説明がないので疑念は膨らむばかりだ。

また、豊前環境開発エネルギーの社長は、北九州市の部長など要職を歴任した白石康彦氏、副社長には豊前市の商工会議所会頭の上田大作氏が就いており、榎本氏が職責を果たさない場合は、出資をしている豊前市の市民に対しての説明責任を果たすべきだろう。

同社が債務超過で事業停止を余儀なくされた中で、S社は1回100万円の傭船料を売り上げているほか、所有する浮桟橋をY社に貸し出し Y社の売上に貢献しているという不可解な資金の流れもある。
その中で、S社は家族3人の役員報酬として7600万円を得ているのも既報の通り、S社の代表は 元市議会議員だ。
おそらく 公の場で、市民が納得できる丁寧な説明をしてくれることだろう。