子会社が自己破産申請へ

弊社記事「新電力事業の落とし穴(2021年7月16日)」で報じた ㈱ホープ(福岡市中央区 代表者時津孝康氏)が、子会社の㈱ホープエナジーの破産手続き開始の申し立てを行うことを決議した。
負債総額は約300億円。

昨年3月にも 新電力の大手F-Powerが 会社更生法の適用を申請(負債 464億円)したように、業界の環境は悪化している。
民間事業者に電力事業への参入を促したのはいいが、こうした現状を見るにつけ、国の制度設計に問題があったと思われる。

電力市場からAIを駆使し購入・販売することで利益を出す いわゆる「元手のいらないビジネス」、目の付け所は良かったもしれないが 梯子を外された格好で、ある意味 犠牲者と言えるだろう。

新電力事業の落とし穴・ホープ(後)

ホープ社は平成17年、現代表が24歳の時、自治体保有の様々なスペースの広告事業化等を目的に㈲ホープ・キャピタルとして創業、同21年に㈱ホープに組織・商号変更を行った。

自治体情報誌やアプリケーション等のサービスを行う一方、自治体向け営業活動の支援・代行等事業を拡大、同25年には グロービス・キャピタル・パートナーズから約1.5億円の出資を受け、同28年に東証マザーズに上場を果たした。

良かったのか悪かったのか、転機となったのが、同30年3月に自治体向け電力小売事業に進出したことだ。
その後の躍進ぶりは凄まじく、令和元年度には公共機関の電力調達入札において、落札金額 合計約23億円で東電・九電・中電に次ぎ全国4位となり、株式市場で注目される存在となった。
令和元年6月期の売上は38億6200万円、経常利益7500万円だったが、同2年6月期には売上144億0700万円、経常利益10億1200万円に急伸させ、初の配当を出した。

しかし前述の卸電力の高騰により、今年4月に発表した 令和3年6月期連結業績の修正予想では、売上は280億0650万円に倍増するのだが、経常利益が最大59億3700万円の大幅赤字となり債務超過に転落するとした。
電力小売事業を始めてからは、売上の9割以上を電力事業を占めるようになっているため、今後の資金繰りのハードルは高いと思われる。

ホープ社を急成長させたのは電力小売事業、しかし思わぬところで落とし穴にはまってしまった格好だ。
大手電力会社の反撃もある中で、地元福岡の若き経営者には 創業以来の危機を乗り越えてもらうことを切に願っている。

ー 了 ー

新電力事業の落とし穴・ホープ(前)

九州電力など 大手電力会社が事業者向けの電力供給でカルテルを結んでいた疑いがあるとして、公正取引委員会が独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで立ち入り検査を始めた。
大手電力会社が利益を守るため、なり振り構わぬ姿勢が露呈した格好だ。


電力自由化後、多くの新規事業者が公共施設などの電力入札に参加し、相応の受注ができていたのも束の間、ここ2~3年で 九州電力が「本気」を出し、シェアを奪い返した感がある。

そして、昨冬の卸電力の異常な高騰は、短期間で急成長した新電力企業を潰すため、大手電力が仕掛けたという噂もある。
真相は藪の中だが、制度に盲点があったことは事実、その影響で、㈱F-Power(東京都)が 3月末に 負債総額464億円で会社更生法を申請したことは記憶に新しい。

福岡市に本社を置き 電力小売り業に参入したことで急成長を遂げた㈱ホープ(福岡市中央区薬院1-14-5 代表者時津孝康氏)も 卸電力高騰の影響をもろに受けた会社の一つで、昨年10月には 6920円の過去最高を記録した株価が、1月8日には3330円まで急落、その後も下がり続け 7月15日現在で 771円となっている。

ー 続 く ー