組織ぐるみで隠ぺい(最終回)~改めるべきところは改めて~

前述の通り、JRJの「住宅ローン融資書類の不正」では、JR九州は第三者委員会を素早く設置し、決算報告も約1ヵ月遅らせるほどのアピールぶりだった。

公表された再発防止策の中で、「JRJのコンプライアンス教育の徹底」、「プロパー社員の人事制度の見直し」、「グループ会社へのコンプライアンスへの取り組みを評価する仕組みづくり」などを掲げ、まるで他人事の様だが、JR九州幹部のコンプライアンスこそ見直すべきだろう。

JRJの不祥事は前社長に原因があったかもしれないが、そうさせてしまったJR九州の責任には触れていない。
JR九州の田中常務や澤亀執行役員がJRJの取締役を兼務しており、未然に防ぐことができなかった。
幹部はその点を分かっているから沈黙を守っているとしか考えられない。



繰り返すが、「住宅ローン融資書類の不正」問題においては第三者委員会を設置、株主に向けての説明と合わせて役員の処分を行った。
タウンハウス建築に係る不祥事はそれと比較して、もっと重大なコンプライアンス違反であることは明白なのに、検証も処分もされていない。
今後不法に建てた建築物で区分所有者に生命危険が及ぶ可能性も排除できないのに、正面から向き合おうとしないJR九州の姿勢は不誠実と言える。

まず 最初にやるべきことは、特定建設業の資格がないまま建築した 筑後市と糸島市の物件の総点検だ。
準耐火性能が欠如しているという東京の調査会社の報告があり、その情報はJRJも把握しているはずだが 何ら対策を打っていない。

一区分所有者が損害賠償を求める訴訟の準備を進めていると聞いているが、裁判で負けたら点検するというレベルの話ではない。
不法に建てた建築物ということが判明した以上、早急に点検・調査に入るのが企業としての責任の取り方だろう。



そして、次にやるべきは 不祥事発覚後のJR九州幹部の判断の検証だ。
真の第三者委員会を設置し、JR九州の内部調査でJRJの不祥事を把握した後、誰が何のため、どういう判断が行われたかその全容を解明することである。

2018年6月までに行われた内部調査では、紹介者に高額な紹介料が支払われたこと、2018年3月期に黒字化をするために書類を偽造し売上を前倒しするなど不適切な会計処理、保全措置を取らない建物を引き渡し、建設業法違反の施工が行われたこと、更には住宅ローン融資書類の不正まで明らかになっていたと思われる。

調査後すぐ、松尾社長をいったんJR九州コンサルタンツの取締役に降格異動させ、9月に解任しているが、解任理由は公表されていない。
この「異動させて解任」という小細工は誰が考えたのか。

また、同じ月に JRJの「住宅ローン融資書類の不正」が発覚したことになっている。
10月には新聞社が一斉に報じ JR九州が第三者委員会設置を公表、これが本丸から目を逸らすためという指摘もあるが、タイミングといい事件の規模といい、的を得ている気がしてならない。
本当は6月までに分かっており、9月になって発覚したようにしたのではないか。

そして、12月にはエステート・ワンの銀行預金を差し押さえしている。
エステート・ワンは松尾氏との約束で販売しながら支払っていく予定だったが、差し押さえをすれば資金繰りに窮し倒産状態に陥り 5億8000万円を回収できなくなることは容易に想像できるはずだ。
その翌年、JRJは密かに欠損処理を行っているが、誰がどういう理由で 5億8000万円をドブに捨てる判断をしたのか。

最後に、JRJが2018年3月期に不適切な会計処理をした時点では JR九州は知らなかった可能性があるが、なぜ翌年の2019年3月期の連結決算において前期の数値を引き継ぎ発表したのか。
2020年3月期で正常に戻したが、これにはJR九州の監査だけでなく 監査法人トーマツも関わっているかもしれない。



以上、JR九州による組織ぐるみの隠蔽が行われた事績が残っており、疑問が多い。

2年前、傾いたマンションの記者会見に出席していた澤亀執行役員に挨拶しようとしたことがある。
見るからに性格の良さそうな人だ。
「福岡県民新聞の…」と名刺を渡そうとした瞬間、「あっ」と何かを思い出したフリをして 走り去って行かれたので挨拶できなかった。

九州の発展はJR九州なくしては有り得ない。
だからこそ、この問題に真摯に向き合い 改めるべきところは改めて頂くことを切に願っている。

(了)

組織ぐるみで不祥事隠蔽 ③ ~前社長の詐欺容疑~

昨年8月、エステート・ワンから JRJの松尾前社長を詐欺罪で訴える告訴状が出され、12月に福岡地検が受理し取り調べが始まっている。

特定建設業の許可を有していなかったことが明らかになったJRJであるが、施主 及び建物を購入した区分所有者らを裏切る重大な事件と言えよう。
施工業者が施主に資格がないことを隠して請負契約を締結し、建物を完成させた場合、請負代金を請求する権利があるのだろうか。

JRJはエステート・ワンと請負契約を締結し、前渡金2億3888万円を受け取り着工、その後の中間金と完工金の合計 5億8000万円は未回収だが、請負代金請求訴訟(訴額 1億9000万円)で勝訴し 裁判所はエステート・ワンに支払うよう命じている。

松尾前社長を告訴したエステート・ワンの新原社長は語る。
「計画していた筑後市のタウンハウスのゼネコンがキャンセルになり、代わりにどこか請けるところがないか探してたとき、JR九州OBの松永氏から JRJの松尾社長を紹介されました。JRブランドで私たちにもメリットがあると考え契約することに。
その後、糸島市で別のタウンハウスの計画を進めていることを知った松尾社長から、そちらもやらせて欲しいとお願いされたので、決まっていたゼネコンに詫びを入れてJRJに変更しました。」

契約書を交わした際、新原社長はJRJが特定建設業の許可を持っていないとは夢にも思わなかったという。
「銀行から借り入れを起こして事業をする以上、法令を守らない企業と契約するはずがありません。分かっていたらもちろん契約していません。」

そして、JRJ松尾社長との信頼の中で、販売状況に応じて 中間金と完工金を3年以内に支払うという条件で請負契約を交わし、建物が完成した。
ところが、2018年(平成30年)6月に松尾社長が退任し、島野新社長に中間金・完工金を即時支払うように求められた。

「松尾社長との約束があることを訴えても 島野社長は聞く耳など持っていませんでした。そして12月、まだ協議の途中だったのに JRJがいきなり エステート・ワンの銀行口座を差し押えしてきました。社員給与の支払いや銀行への借入金の返済が全てストップし、40人いた社員を解雇、事務所も全て引き払い事実上の倒産となりました。」

新原社長は「差し押えがなければ事業が停止することもなく、松尾氏との約束通り残金を支払うことはできました。弊社が松尾氏にリベートを支払った話や不適切な会計を指摘していたので、5億8000万円が回収できないことを承知で弊社を潰すつもりで差し押えしてきたとしか思えません」と強調する。

現在、福岡地検は松尾前社長を詐欺罪で起訴できるか取り調べ中だが、ここまでの流れを整理すると、
・2019年(令和元年)9月、JRJはエステート・ワンに請負代金請求訴訟で勝訴
・2021年(令和3年)12月、JRJが資格なしで請け負っていたことが明らかになり 営業停止処分
・JRJは松尾前社長に5億8000万円の焦げ付きの責任があるとして損害賠償を求め提訴、裁判の中で 松尾氏は単独の判断ではなく社内で共有されていた、JR九州の田中常務にも報告していたと主張
・同裁判が 1月末に調停手続きで合意が成立、JRJが松尾氏の主張を一部認めた可能性あり(非公開)

この関係からすると、会社ぐるみで法令違反を認識しながらエステート・ワンと契約していたと考えられる。
しかも、特定建設業の資格がないことを 隠して請負契約を締結しており悪質だ。
新原社長はJRJに対し、一度敗訴している請負代金請求訴訟の再審を求めていく考えだ。


区分所有者が訴訟準備

特定建設業の資格なしで建築した同タウンハウスについて 気になる情報がある。
現在、区分所有者の1人が損害賠償を求める裁判を準備しているというのだ。

その区分所有者Aさんは建設業を生業としている方である。
入居後 職業柄様々な施工ミスが目についたそうで、管理組合を通じてJRJに問い合わせても 誠意ある回答がなかったため、欠陥住宅調査で著名な東京の会社に詳細な調査を依頼している。

読者の皆さんは、福岡市東区の傾いたマンションをご記憶だろうか。
1994年(平成6年)に建てられ当初から不具合を指摘されながら、販売したJR九州3社が施工不良を認めなかったが、2020年(令和2年)4月の調査で複数の基礎杭が支持層に達していないことが判明したことで一転して認め、26年目にして建て替えが決まった。



その決定的な調査を行ったのが 今回区分所有者のお宅を調査した東京の会社である。

2021年(令和3年)10月の調査で、壁や天井の裏側に防火被覆材の施工が不足し準耐火性能が欠如している箇所が多数見つかった。
準耐火性能住宅として販売されていたが、火災の際は隣に延焼する恐れがあるということだ。
その他にも複数の瑕疵が認められる箇所があり、Aさんは知ってしまった以上売るに売れないという。


これらが事実であれば施工会社として本来の設計通りに回復する必要が出てくるが、Aさんが回復費用をある業者に見積ってもらったところ約1000万円かかると言われたらしい。
仮にタウンハウス全戸に同じ瑕疵が認められたら 億単位の金額が必要になってくる。

特定建設業の資格なしで建築した建物だから施工不良があっても不思議ではなく、放置している感覚がおかしい。
施工した建物が法令の基準を満たしているか 今すぐ総点検を行う必要があるだろう。
ここで火災が発生しないことを祈るばかりだ。

ー 続 く ー

組織ぐるみで不祥事隠蔽 ② ~偶然?別の不祥事で第三者委員会~

JRJは社内の不祥事で混乱していたが、世間は同社で起きた別の事件を注目することになる。
10月11日、JRJの社員が「住宅ローン融資書類の改ざん」を行っていたことが内部調査で発覚したことを新聞が一斉に報じた。
JR九州は新聞報道と同時に第三者委員会を設置することを発表、素早いコンプライアンス違反対応をアピールし、2019年3月期第2四半期の決算発表を1ヵ月遅らせるということまで行った。

融資書類の改ざんが発覚したのが松尾前社長解任と同じ2018年(平成30年)9月、あまりにもタイミングが良過ぎるので、一連の不祥事が表に出るのを隠すため別の騒ぎを起こしたのではないかと見る関係者もいる。

その後、第三者委員会の調査が行われ、融資書類改ざんに関わった関係者全てのヒアリングが行われたのだが、前社長の松尾氏については退職しているという理由でその対象から外されており、そのことも疑問視されている。

12月18日に公表された決算資料(下図)において、第三者委員会の調査による不正行為の詳細と経営への影響、及び再発防止策を説明している。
また、JR九州の田中隆治取締役専務執行役員(JRJ取締役を兼務)の月額報酬を1ヵ月10%、JRJの取締役1人について同じく3ヵ月10%減額する処分を発表した。

JR九州としては、コンプライアンス違反には厳正に対処する姿勢を見せたと思われるが、不思議なのは 内部調査でJRJで起こった もっと大きな不祥事を把握していながら、その後一切公表もせず 処分も行っていないことだ。
こうした点からすると、融資書類改ざんの問題を 世間の目を逸らすために敢えて表に出したのではないかと疑わざるを得ない。

内部調査では、前社長主導で内規に従わない手続きが繰り返され、5億8000万円が未収になっていること、2018年3月期の決算で不適切な会計処理を行っていたことが判っていたはずである。



 

不適切な会計処理を公表せず

JRJの住宅ローン不正融資問題で第三者委員会を設置したJR九州が、なぜ 内部調査で把握しているもう一つの不祥事について公表していないのか。
それは、一連の不祥事の中に 2018年3月期決算の不適切な会計処理が含まれていたからだと見られている。
上場しているJR九州はグループの連結決算だが、その数値を修正するとなるとかなり面倒だ。

不適切な会計処理(私文書偽造による粉飾と呼ぶ関係者もいる)は次のように行われた。
JRJが施工した最後のタウンハウスが完成し、エステート・ワンに鍵が引き渡されたのは2018年(平成30年)5月31日だった。
それを、2018年3月期に 同建物の売上額 3億7200万円を計上し最終利益を黒字にするために、3月31日の日付で工事を終えたと虚偽の書類を作成し、決算書類を作った。
その決定的な証拠が下の書類(鍵受領書(仮)・工事経歴書)だ。





JR九州は6月27日付で松尾純一社長を退任させ、新社長として島野英明氏が就任している。
コンプライアンス違反の全容の内部調査は終わっており、この時点で不適切な会計処理による決算を把握していたと考えられるが、JRJは修正を行わず決算公告を行った。

JR九州の2018年3月期決算の連結売上は4133億円、そのうちJRJの不適切な処理をした金額は 3億7200万円、全体の売上からすると 0.1%程度と小さい。
同決算の発表日は 5月10日、その時点ではこのことに気づいていなかったか、内部調査の途中だった可能性があるので、2018年3月期を修正しろとまでは言わない。
だが 翌期の2019年3月期決算で修正するべきだ。

同年8月、JRJの会計処理に気づいたエステート・ワンの新原社長がJRJに「粉飾ではないか」と抗議をしている。
その際、「監査法人トーマツがJRJの監査を行っている」と回答があったのみ、その後再度抗議をしたところ、同年12月17日に島野社長から「粉飾ではなく不適切な会計処理だったので訂正した」との説明があったという。

ところが、実際は訂正されることなく、JR九州及びJRJは前期決算の数字を引き継ぎ、2019年3月期の決算を発表した。
つまり、JR九州がこの年の5月13日に公表した2019年3月期決算には、JRJの不適切な会計処理が含まれており、JR九州及びトーマツがそれに触れずに処理をしたことが考えられる。

わずか3億7200万円だが 無視したところを見ると、他にも同様の対応をしていることが想像され、JR九州が公表している数字が本当に正しいのか怪しくなってくる。
また、JRJが行ったように、他のグループでも黒字を装うために決算期に数字を動かしている疑いも出てくる。
もっと言えば、トーマツの名前を出した以上、監査法人としての信用問題に関わってくるのだ。

株主はどう考えるだろう。



 

建設業法違反で営業停止処分

2018年3月期に不適切な会計処理をしたJRJは2019年3月期もその数値を引き継ぎいだが、2020年3月期決算で過去2期分の決算を修正した。
税務調査で指摘され修正せざるを得なかったという噂もあるが、これできれいサッパリになって一件落着かに思われた。

ところが、思わぬところから 一連の不祥事が再びクローズアップされることになる。
2021年(令和3年)12月14日、福岡県はJRJに対し、受注した建築工事で建設業法違反が認められたとして 32日間の営業停止処分を科した。
営業停止32日間は決して軽い処分ではない。
JRJは処分当日、ホームページに処分の概要と再発防止に取り組む内容を掲載したが、親会社のJR九州はこの件についてコメントしていない。

さて、処分対象となった工事は、2017年(平成29年)5月に契約し翌年完成したタウンハウス、あの不祥事の舞台となった建築工事である。

まず、JRJは特定建設業の許可を有していなかったにも拘わらず、下請業者との間で総額が政令で定める額(6000万円)を超える下請負契約を締結していた。
建設業者なら基本中の基本、分かっていながら受注しており確信犯と言える。
他にも、建設業の許可を取得していない業者と政令で定める額(500万円)を超える額で下請契約、一時的に主任技術者を配置するなど 上場企業とは思えない違反のオンパレードだ。



ところで、係争中のJRJと松尾氏の裁判の中で、今回の建設業法違反の処分に関係する記述がある。
JRJは、注文者から元請として請け負った2つの建築工事において、特定建設業の許可なく下請業者との間で総額が政令で定める額(6000万円)を超える下請負契約を締結しているが、契約の前段階で社内で議論になっていた。

松尾氏の陳述によると、「2017年1 月17 日、タウンハウスの工事の依頼を受けたが 2月1日頃、発注金額(2件とも3億円以上)を考慮すると特定建設業許可を得ていないため、受けられないと回答。その後、川述祐一所長から分割して建築確認を受け受注すればよいのではないかという提案を受けたが、一体工事として(監督官庁に)認定されるのではないかと考え調査を指示した。1 週間後、川述所長から弁護士や役所で問題ないことを確認したという回答があったので受注することにした。」という。

川述所長が役所に確認したのが事実であれば、なぜ 今回建設業法違反で処分されたのだろう。
当時の監督官庁は国交省、川述所長が九州地方整備局に足を運んだのは事実の様だが、文書で質問した訳ではない。
また、法令違反を嫌う役所がこういうケースで「問題ない」と明確に答えるというのは考えられない。
恐らく 曖昧な質問をして都合のいい解釈をしたというのが 本当のところだろう。

松尾氏の陳述内容が事実であれば、川述所長の提案と確認があって契約が前に進んだということになる。
現在、川述所長はJRJの取締役に就いているが、過去を知る関係者からは裁判そのものに疑問の声が出ている様だ。



ー 続 く ー

組織ぐるみで不祥事隠蔽 ① ~検察が告訴状受理~

JR九州におかれては古宮洋二社長の下、九州の経済界を牽引する企業として 活躍してもらうことを心から願っている。

さて、JR九州グループ倫理行動憲章には、「すべてのすべてのお客さま・株主・取引先などに対し、誠実かつ公正で透明性のある事業活動を行なう」、「企業情報を積極的かつ適正に開示し、株主はもとより広く社会とのコミュニケーションにつとめます」とある。

しかし、青柳俊彦前社長の時代まではお役所体質が残っていたのか、憲章に反する判断をしてしまった様だ。
2018年(平成30年)、JR九州の子会社が 5億8000万円もの不良債権を抱えると同時に不適切な会計処理を行った。
社内の不祥事に止まらない 上場企業としての信用を揺るがす重大事案だったが、JR九州の幹部は最後まで公表することはなかった。

 

検察が告訴状受理

ところが昨年8月、当時のコンプライアンス違反に関連して子会社の前社長に詐欺罪による告訴状が出され、12月に福岡地検が受理し取り調べが始まっていることが判った。
これまで相手がJR九州だけに マスコミも及び腰だったが、受理されたことで一部の週刊誌が取材を始めた模様だ。

弊社ではこれまで、この問題について逐一報じてきたがJR九州は一切無視を続けてきた。
本稿では9回にわたり、子会社で5億8000万円が焦げ付いた経緯、2018年3月期の不適切な会計処理、法令違反、そして今後気になることなどを解説するとともに、客観的な第三者による検証の必要性について述べていく。



 

5億8千万円が回収不能に

5億8000万円が焦げ付いた子会社とは、JR九州住宅㈱(福岡市博多区吉塚本町13番109号 代表者 島野英明氏、以下JRJ)である。
民営化後の2000年(平成12年)にJR九州から分社独立し設立され、戸建て住宅の建築やリフォームを柱に業歴を重ね、福岡と鹿児島で基盤を形成した。

JRブランドで 年商20億円程度で推移するも、競合が激しく利益捻出までには至らず、現在も債務超過から脱却できずにいる。
しかし、親会社JR九州の取締役専務執行役員と執行役員の2名が非常勤取締役として経営に携わり、ブランド力で営業や下請との取り引きに大きな支障が出ていない。
それはこれからもそうだろう。

JRJは、2018年(平成30年)6月まで同社代表取締役だった松尾氏を相手取り、損害賠償(訴額 5000万円)を求める裁判を起こし 争ってきたが、今月調停手続きで合意が成立したばかりだ。
その裁判記録から5億8000万円が回収不能になった経緯を知ることができる。
訴状の内容を要約すると次の通り。




2017年(平成29年)5月、JRJは筑後市と糸島市のタウンハウスの建築業務を 施主であるエステート・ワン㈱(代表者 新原健造氏)と契約、請負額合計 7億9628万4000円(税込)で、着工金30%、中間金20%、完工金50%の割合で支払いを受けることになっていた。

エステート・ワンからJRJに着工金が支払われ 工事は始まったが、その後約束の期限までに 中間金が支払われなかった。
しかし、工事は続けられ2018年(平成30年)3月の完成間際になって、エステート・ワンから6月末に中間金と完工金を合わせて支払う旨が伝えられた。
筑後市のタウンハウスは 同年3月までに、糸島市の物件は同年5月までに完成し エステート・ワンに引き渡されたが、その際 JRJは 保全措置を取っていない。

その後、6月末になっても中間金と完工金が支払われることはなかった。
同月JRJは松尾社長を退任させ現社長が就任、エステート・ワンと支払の協議を打ち切り12月に銀行口座を差し押さえたが殆ど回収できず、翌年未払金支払いを求め同社を提訴、勝訴するも回収できず、結局 5億8000万円が焦げ付いた。

この契約は松尾社長が持ち込んだ案件で、エステートワンの与信調査を十分に行わないまま 取締役会にも付議せず社長の独断で進められた。
また、松尾社長の指示で 紹介した松永氏の会社に400万円を報償金として支払ったが、これとは別にエステート・ワンから松永氏経由で松尾社長の知人女性の口座に440万円がリベートとして振り込まれている。

松尾社長の独断による契約締結で、結果的に5億8000万円が回収できなくなり会社に損害を与えたので、損害金額のうち 5000万円をJRJに支払うよう求める。




これに対し松尾氏は、「契約締結については取締役会に報告し、取締役の総務部長や経営企画部長も 契約書と覚書についての稟議書に押印しており、工事の受注・契約を専断したとの事実はない」と反論。
また、取締役会議では、JRJ の非常勤取締役を兼務(当時)する JR九州の田中龍治取締役専務にも契約の報告は行ったとしている。

確かに、松尾氏はリベートを要求するなど 業界の悪習に染まっていたかもしれない。
そして、社内で圧倒的なワンマン経営を行っていたのも事実だろう。
しかし、松尾氏の証言が正しいならば、社長単独で進めたと断定することは難しく、法人としての責任になり、JR九州の田中常務も全く知らないでは済まないだろう。

5億8000万円の焦げ付きには JR九州も責任の一端があり、前社長を訴える裁判は 天に向かって唾を吐くようなものだ。



 

内部調査でコンプライアンス違反発覚

JRJ内では、エステート・ワンから契約書に書かれた期日までに中間金が支払われなかったことで、社員の間で工事を続けるべきか議論があったという。
しかし、社長の指示で工事は続けられ建物は完成、中間金に加え 完工金の合計5億8000万円が支払れなかったが、2018年(平成30年)5月までに 全物件を 保全措置を取らないで引き渡している。

保全措置を取らなかったことから、JRJとエステート・ワンとの間に信頼関係があった、或いは何らかの裏事情があったと解される。
実際のところは 請負契約を交わす際、JRJの松尾社長とエステート・ワンの新原社長の間で「タウンハウスの販売状況に応じて残金(中間金と完工金)を最長3年以内に支払う」ことが 口頭で約束されていた。
その代わりとして、松尾社長側からリベートの支払いを要求され、エステート・ワンの新原社長は止む無く従ったという。

引き渡し後、JRJ内の一連のコンプライアンス違反が漏れ伝わったのか親会社のJR九州がJRJの調査に入り、松尾社長は 同年6月に退任を命じられ、グループの JR九州コンサルタンツ会社に平の取締役として降格異動となった。



エステート・ワンにとって松尾社長の退任は想定外、その後任としてJR九州から肝煎りで来た島野新社長は厳しい態度で臨んだ。
未払いの中間金と完工金 5億8000万円の即時支払いを求めるも、販売が進んでいないエステート・ワンは現金が不足しており、松尾前社長との約束を説明し支払の延期を要求、協議は平行線のままだった。

同年9月、松尾前社長(JR九州コンサルタンツ取締役)は「解任」された。
上場企業の子会社の元社長がコンプライアンス違反で解任というだけでニュースになりそうだが、JR九州は JRJからJR九州コンサルタンツにいったん異動させ、3ヵ月後の解任を決定、JRJの不祥事との直接的な関連がないように操作したと見られている。

弊社はJR九州コンサルタンツに松尾氏の解任理由を尋ねる文書を送付したが、下図のように回答を拒否されてしまった。
同社内で正当な理由があったのではなく、JRJでの一連の不祥事が原因だったのは明らかで、その証拠に 前回報じた様に JRJが松尾氏に対して損害賠償を求める裁判を起こしている。

JR九州はこの件について一切公表していないが、公表するに足らないと判断したのか、公表したら大変なことになると判断したのか。
この後判ることを考えると、後者だと思われる。



ー 続 く ー

JR子会社に営業停止処分

福岡県は14日、建設業法に基づき、JR九州の子会社、JR九州住宅㈱(福岡市博多区吉塚本町13番109号 代表者 島野英明氏)を 12月28日から2022年1月28日までの32日間、営業停止処分にすると発表した。

今回 違反とされた契約の時期は、平成30年11月30日にJR九州が公表した 第三者調査委員会報告書で調査された対象時期と重複しており、JR九州も含め 社内では業法違反を認識していたはずだが、報告書では一切触れられていなかった。
JR九州のコンプライアンスに対する姿勢を根本から問われそうだ。

違反内容は以下の通り。

・ 注文者から元請として請け負った2つの建築工事において、特定建設業の許可なく下請業者との間で総額が政令で定める額(6,000万円)を超える下請負契約を締結した。 (建設業法第16条第1項違反)

・ 注文者から元請として請け負った建築工事において、建設業の許可を取得していない者と政令で定める額(500万円)を超える額の建設業の下請負契約を締 結した。 (建設業法第28条第1項第6号該当)

・ 注文者から元請として請け負った建築工事において、直接的かつ恒常的な雇用関係にない者を主任技術者として配置した。 (建設業法第26条第1項違反)

JR九州住宅・まとめ

2018年10月に発覚した JR九州住宅㈱の住宅ローンの不正融資、事態を重く見たJR九州は、決算発表を1ヵ月伸ばし第三者調査委員会を設置し、原因究明と再発防止に取り組んだことをアピールした。
しかし、その後同社が約6億円の不良債権が発生していたほか、法令違反の疑いがあることがわかった。

2018年から2020年まで、これまで弊社が報じた記事を 以下に再掲する。

根が深いJR九州の不祥事 [2018年11月10日]

10月10日に行ったJR九州の記者会見では、子会社であるJR九州住宅の社員が、住宅ローンに関して700万円を水増し改ざんした事を、金融機関から指摘を受けたと発表していた。
それによってJR九州本体の、11月5日に発表予定の決算発表を延期し、通常では考えられない事態が起こっている。

JR九州住宅㈱の前社長、M氏は平成30年6月27日に辞任し、翌日の28日にはJR九州コンサルタンツ㈱の役員に降格し、一見何事も無かったような人事異動だが、3ヵ月後の 9月27日には 解任されている。
ワンクッションを置いた実に手際の良いシナリオを書いたもので、JR九州の子会社における目立たない人事は、記者会見もされずに処理されている。
M氏の日常における派手な生活は、関係者から次から次に情報が寄せられ、次第に全容が浮き彫りになってきた。

 

6億円焦げ付き? [2018年11月12日]

子会社の住宅ローン不正融資問題に揺れて、四半期の決算発表が遅れているJR九州は、外部の専門家による第三者委員会を設置し、調査を行っているが手間取っているようだ。

当初の発表では営業社員による、700万円程度の不正融資を金融機関から指摘されたと公表するも、実体はJR九州住宅の前代表による余りにも大きい不良債権の発生に、戸惑っているのではなかろうか。
6億円前後の金額を巡って、裁判に発展する可能性もあり、今後は社内の管理問題も表面化すれば、問題は更にJR九州本体に拡大する恐れが出て来た。

 

JR九州住宅㈱ [2019年6月5日]

福岡経済界を代表する企業集団「七社会」のJR九州、その子会社であるJR九州住宅㈱の前代表取締役 M氏が、積極的に事業の拡大を目的に取り組んだ開発事業で、かなりの無理が相次いで表面化し、裁判に発展している。

開発には事前に大きな資金が必要で、その調達過程で不明瞭な資金の支出に便乗し、私的に流用したのがM氏のようだ。
土地開発を巡る不動産や住宅事業では、領収書を必要としない裏金も求められ、それが悪の温床になっている様だ。

JR九州は、外部の第三者委員会を創設して調査を行なうも、短期間で形式的に済ませており、核心に迫っているとは言えない。
今後も次々に問題が浮上してくることが想定される。

 

JR東海とJR九州の違い [2019年6月10日]

JR東海の子会社の不動産管理業「JR東海不動産」の元課長が、取引業者と共謀し工事費を水増しするなどして、同社から金を騙し取ったとして逮捕されたというニュースが飛び込んできた。
一部の不動産取引では、今でも裏金が横行しており、また被害金額が大きくなることは珍しくない。

JR九州は子会社のJR九州住宅㈱の不祥事について、お茶を濁したような対応で 事なきを得ようとしているが、JR東海は内部で不正が発覚して 元身内に対して厳しい対応をした。
元を辿れば、旧国鉄の同族企業、同じ事が発生してもその対応に大きな違いが出るのは年月が経ったことによる企業風土の違いだろうか。
だとしたら、JR九州は危機感が育まれていない証と言えるだろう。

 

JR九州、株主総会前夜 [2019年6月13日]

株主総会を前にして、JR九州には緊張感が走っていることだろう。
話題の中心は、外資系ファンドによる株価引き上げ効果のある自社株買い提案をどうかわすかであるが、別件で株主側から質問が出るのではないかと、関係者の間で噂になっている。

昨年9月に発覚したグループ会社のJR九州住宅㈱が金融機関から融資額を増額するために書類を偽装した事件は、JR九州が素早く第三者調査委員会を設置、11月には再発防止に向けた取り組みを公表するなど、一見優等生的な収め方をした。
ところがその調査委員会、退職者を含め取締役以下40名の関係者からヒアリングを行なっているものの、事件発覚の3ヶ月前まで代表取締役だったM氏からはヒアリングを行なっていない。
M氏は事件が発覚した昨年9月末の同時期に関連会社の取締役を解任されているので、事件の鍵を握る最大のキーパーソンとして調査委員会の対象にするのが当然だろう。
形式だけの調査委員会を設置して、臭いものに蓋をしているのではないかと関係者は見ている。

この件以外にも、M氏が代表だった時代のトラブルが、最近いくつも明るみに出てきている。
JR九州住宅は現在も裁判中で、今後の成り行き次第では、住宅建設にかかる約6億円の請負額を回収できない可能性がある。

 

JR九州住宅・債務超過 [2019年7月25日]

JR九州が100%出資するJR九州住宅㈱の決算が公表され、財務状況が悪化していることがわかった。
平成30年3月期に既に3122万円の債務超過に陥っていたが、同31年3月期には8億4500万円と拡大しており、関係者の注目が集まっている。

 

JR九州住宅・決算書再提出 [2019年8月23日]

JR九州住宅が、監督官庁に提出した平成31年3月期の決算書類に空欄箇所や計算が合わない等の不備があり、再提出を命じられている。
JR九州グループは連結決算で、内部監査に加え監査法人が子会社の書類をチェックしており、官庁に提出する書類にはその内容を転記するだけで済むはずだ。
このような初歩的なミスを犯すことは通常考えられないのだが。

 

JR九州住宅・裁判で提出された裏金の新証拠 [2019年9月5日]

開業間もないデベロッパーが、上場企業の関連会社に施工してもらえる話があれば、多少の無理をしてでも実現させたいと考えるのは当然で、帳簿に出ない裏金が動いたとしても不思議ではない。
JR九州住宅㈱がエステート・ワンを相手取り、建築請負代金の支払を求めた裁判で、被告はこれまで、「JR九州住宅が施工する条件として、JR九州のOBだったA氏から『A氏へのリベート及びJR九州住宅のM社長への裏金』を要求され、A氏の口座に送金した途端、施工の話が前進した」と主張していた。

この裁判は、原告が未払金を支払うように求めていることに対して、被告は元社長のM氏との間で、「3年以内に支払う約束をしていたので弁済期は未だ来ていない」としている。
M氏の裏金授受が証明されれば JR九州を巻き込んだ大事件になりかねず、傍聴席はいつも満員で、関係者は神経を尖らせていることが伺える。

これまで、原告側はM氏に裏金が渡ったかどうかは関知していないとしてきたが、8月30日に行なわれた裁判で、被告側から、A氏の通帳の写しが新証拠として提出され、K・Mという女性の口座にM氏と約束した裏金と一致する金額が、A氏から4回に分けて振り込まれており、K・MはM氏と関係が深い人物ということが添えられていた。
裁判は結審し、判決は9月27日(金)に言い渡される予定であるが、裁判の行方に注目が集まっている。

 

JR九州住宅・またトラブル? [2019年9月20日]

既報の通り、JR九州住宅は監督官庁に提出する決算書類の不備を指摘され再提出していたが、現在、何か問題があったのか、九州地方整備局による聴取が行われている様だ。
仮に建設業法に問題があるなど、結果次第では行政処分が下される可能性もあり、また、決算書類に訂正があれば連結決算のJR九州の決算書にも影響が出る恐れがあるため、関係者は注目している。

 

JR九州住宅・短期貸付金 [2019年10月10日]

JR九州住宅㈱の平成31年3月期決算、貸借対照表の流動資産の中に「短期貸付金」約4億1千万円が計上されている。
短期貸付金とは、通常は子会社や社員に貸し出す性格のもので、売上が16億円程度、最終赤字8億1千万円、債務超過額8億4千万円に陥っている企業に、これだけの貸付余力があるとは到底考えられない。

銀行関係者によると、銀行が行う企業融資の際、「短期貸付金」が多いのは粉飾の疑いが濃厚なため、貸付内容の詳細までチェックするそうだ。
親会社であるJR九州の連結決算書を見たところ、貸借対照表の流動資産に「短期貸付金」の勘定科目は見当たらず、「その他」にひと括りにされている。

JR九州に電話で、「JR九州住宅の『短期貸付金』がJR九州の連結決算の、『その他』に含まれているか」と尋ねたてみたが、「適正に処理をしている」「詳細については公表していない」の一点張り、何もやましいことがなければ、答えがあってもよさそうなものだが。

 

JR九州住宅・公開続く決算変更届の誤記載 [2019年10月21日]

JR九州住宅㈱が監督官庁である九州地方整備局に提出した決算変更届であるが、7月末に提出されてから3ヶ月経った今でも、誤記載のまま公開され続けている。
決算変更届は、建設業法で提出が定められており、施主が施工業者を選定する際の判断材料にすることもあるため、誤記載のまま公開を続けているのは「国民を騙している」と指摘する声もある。

今回、1年前の平成30年3月期の決算変更届から誤記載があったことも判明しており、JR九州グループにあるまじきお粗末さである。
JR九州は子会社の監査を担っているが、その責任において、子会社の決算変更届の修正を急ぐべきではなかろうか。

 

エステート・ワンが敗訴 [2019年11月19日]

JR九州住宅㈱がエステート・ワン㈱に対し、工事請負金額の支払を求めていた裁判で、福岡地方裁判所は9月27日、エステート・ワンに1億9000万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
「JR九州住宅の前社長、M氏にリベートを渡すことで、弁済時期を3年以内とする約束をした」と主張するエステート・ワンに対し、「契約書面通り建物引渡し後、速やかに支払うべき」というJR側の主張が全面的に認められた格好だ。

裁判では、エステート・ワンが参考人として出廷を要請するもM氏は拒否、リベートが渡ったと推測される電話の録音内容なども証拠として提出されたが、直接の争点にはならなかった。

 

JR九州住宅・前代未聞の決算書修正 [2019年12月10日]

JR九州住宅の平成31年3月期の決算書類等の事業報告書に、数字の不整合が随所に見受けられていたため、監督官庁から建設業法に基づく聴取が行なわれ、再三に亘り修正を求められていたが、5回目の提出でようやく受け付けられた。

驚いたのが、同31年3月期だけでなく、1年半前に提出された同30年3月期の決算書の数字までが書き換えられたことだ。
売上高と売上原価の項目で、建設工事の金額と兼業事業の金額をそれぞれ増減させ調整を図った。

これに付随して、工事原価のうち外注費を平成30年3月期で約1億円増額、同31年3月期で約3億円減額修正しており、通常考えられない相手先がある外注費の増減がなされている。

 

JR九州住宅(前)社長への裏金 [2020年2月21日]

JR九州住宅㈱がエステート・ワンに対し、建築請負代金の支払を求めた裁判の中で、被告が「JR九州住宅が施工する条件として、JR九州のOBだったA氏から、販売1戸につき40万円、A氏とJR九州住宅のM社長へリベートを支払うよう要求され、仕方なく支払った」と証言していた。
リベート40万円のうち、6対4の割合でA氏とM氏に分配されるという約束だったという。

施工した住宅は55戸でリベート合計2200万円、エステート・ワンは中間金として半分の1100万円を、平成29年6月から翌年3月の間に9回に分けて A氏の口座宛に振り込んでいる。
そして、その4割に当たる440万円について、平成29年7月から翌年3月の間に4回に分けて、A氏宛に K企画という博多区の事業者から請求書が届いており、A氏が 代表者と思しきKという女性名義の口座宛に同額が振り込まれていたことが判った。
K企画は法人登記をしておらず、KとM氏との関係は現在のところ不明だが、振り込まれた時期と金額が一致していることから、M氏と関係のある女性という可能性が高い。
この他にも、JR九州住宅からA氏に対して、エステート・ワンの紹介料として400万円が振り込まれ、A氏からM氏に200万円がバックされたという情報もある。

JR九州は、平成30年に発覚したJR九州住宅の不正融資書類事件の際、自前で第三者調査委員会を設置するも、前社長のM氏に対しては何故かヒアリングは実施していない。
裏金が渡った可能性が高いM氏こそヒアリングを実施すべきだったと思われるが、JR九州の腰は重いようだ。

 

JR九州住宅が支払った紹介料 [2020年2月26日]

平成28年6月、JR九州OBのA氏は、エステート・ワンの顧問に就任、当時施工会社を探していたエステート・ワンにJR九州住宅のM社長を引き合わせ、羽犬塚と伊都の物件の施工を請け負うことで合意した。
その後、エステート・ワンがA氏とM社長からリベートの支払を要求され、1100万円を振り込むことになったのは既報の通りであるが、驚いたのはこれだけではない。

JR九州住宅がA氏の会社に対して、エステート・ワンの紹介料という名目で400万円を振り込んだというのだ。
A氏は施主であるエステート・ワンの顧問であり施主の身内である。
JR九州住宅内では、何故施主に紹介料を支払う必要があるのか議論があったようだが、最後はM社長に押し切られたという。
債務超過が続く会社に紹介料を支払う余裕があったとは思えないが、M氏が社長の時代には、その様な無理筋が幾つも罷り通っていたようだ。

 

JR九州住宅・過去の決算書を修正(前編) [2020年5月20日]

JR九州は2020年3月期の決算短信を公表し、6月には株主総会を控えているが、連結子会社が過去の決算書を修正したことが関係者の間で話題になっている。
JR九州の子会社、JR九州住宅㈱が、2018年3月期の損益計算書及び貸借対照表、2019年3月期の損益計算書の数値を変更したことが判った。

JR九州住宅は、建設業の監督官庁に今年3月12日付で過去の決算書を含む法定書類を修正して提出したが、2018年6月に退任した前社長の時代に行った粉飾決算を本来の形に戻したものである。
対象となった物件は2018年5月末に完成引渡しされたタウンハウス、修正前の「工事経歴書」には2018年3月期決算の締日である2018年3月31日完成、建築代金の合計は3億7200万円とされていた。
それに合わせて決算書も作成され、本来であれば2019年3月期に計上すべき売上3億7200万円が、2019年3月期に前倒しされていた。

施工会社から施主への物件の引き渡しは工程上重要な節目であるため、本来は受領した日に施主の社印が押されるところだが、この物件の鍵受領書は「仮」とされ、日付が 平成30年(2018年)3月31日、受領者の欄には施主の社員の個人名と認印が押されている)。

この書類を 3億7200万円前倒しの根拠にしたと思われるが、この操作により2018年3月期の営業利益・経常利益・純利益は赤字を免れている。
粉飾されたままJR九州住宅の決算書は公告され、JR九州の2018年3月期連結決算の一部となった。
これは前社長のM氏の指示だったかもしれないが、社長一人でできるものではなく、他の役員や監査、更にはJR九州の幹部も同意していた可能性も否定できない。

 

JR九州住宅・過去の決算書を修正(後編) [2020年5月20日]

JR九州住宅が、2018年3月期に前倒ししていた売上 3億7200万円を、2019年3月期に計上し直し、工事経歴書も正確な日付に修正し正常に戻したことは評価できる。
ちなみに、JR九州の2020年3月期の決算において、2019年3月期の連結決算の数値は一切変更されておらず、過去の決算の修正再表示も無かった。

JR九州グループ全体で 4400億円規模の売上の中にあって、3億7200万円は微々たるもので修正再表示は必要ないと判断したと思われる。
2018年に発覚した、住宅ローン書類偽造による水増し申請問題の第三者委員会の調査報告を受け、JR九州は同年 12月10日付でコンプライアンス教育の徹底など再発防止策を発表した。
しかし、2019年12月に監督官庁に提出した法定書類には、2018年3月期の粉飾を隠蔽したとの情報もあり、組織ぐるみでコンプライアンス違反を続けていたようだ。

また、前社長の不正については未だ謎が多い。
M氏は2018年6月に社長退任後、JR九州コンサルタンツの取締役に移動し僅か3ヵ月で解任されているが、解任理由は伏せられたままである。

更に、JR九州住宅の 2019年3月期決算の貸借対照表、資産の部、短期貸付金に 4億1047万円が計上されているが、債務超過額が 8億4500万円の企業が 4億円超を貸し付けるということが考えにくい。
こうした不都合な真実についても、株主や投資家に対して情報公開をするべきではなかろうか。
私たちは交通インフラとしてJR九州に特別な親近感を持ち、信頼してきた。
JR九州におかれては、今後更に信頼が積み重なっていくよう、コンプライアンスの徹底と積極的な情報公開に努めていかれることを期待したい。

 

JR九州住宅・令和2年3月期決算(前) [2020年8月13日]

福岡県警が7月28日、久留米市の建設業者の経営者ら3名を、決算書の虚偽記載による建設業法違反容疑で逮捕した。
それなら、同様に決算書に虚偽記載をして国に届出をしていたJR九州住宅㈱(福岡市博多区 代表者島野英明社長)も逮捕されて然りでは、という声が弊社に寄せられている。

同社は平成30年3月期決算において、同年5月末日に完成予定だったタウンハウスの建設工事(施工費約3億7200万円)が3月末日に終了したように鍵引渡書を巧妙に作成し、売上を前倒しして最終利益が赤字を免れるよう粉飾し、決算報告書を監督官庁に提出していた。

現社長が就任後の同31年3月期においても、前期の粉飾決算の事実を把握しながらも修正しないまま国に提出していたが、一部マスコミからの指摘もあって、2期分の粉飾をやっと修正したのが今年3月、約2年間に亘り同社は粉飾のまま虚偽記載を放置したことになる。

2期分のJR九州グループの連結決算も、粉飾の数値で合算されている可能性が高く、事実なら株主に対して不正確な売上を提示していたことになる。
決算時には、同社の取締役にはJR九州の取締役専務(今年6月に辞任)と執行役員が名を連ねていたことから、組織ぐるみの背任行為として批判を浴びても仕方がないだろう。

 

JR九州住宅・令和2年3月期決算(後) [2020年8月14日]

そのJR九州住宅の令和2年3月期決算であるが、売上は24億6250万円と過去5年で最低、営業利益段階で1億4853万円の赤字を露呈し、最終利益も同様に9265万円の赤字、債務超過額は前期より約9200万円増えて9億3765万円にまで膨らんだ。
6期連続で債務超過、普通の会社なら倒産してもおかしくない。
それでも営業を続けられるのは、グループ会社からの借り入れを繰り返すことで延命するよう、親会社であるJR九州の執行部が判断しているからだ。

現在、北九州市の下請け会社から施工代金の未払いで訴えられているほか、施工した物件の1年点検を拒んでいるとの情報もある。
「無い袖は振れない」かもしれないが、下請け会社や施工物件の入居者に罪はなく、グループの責任で速やかに支払うべきだ。

これも前社長時代(平成25年6月~同30年6月)のコンプライアンス違反に遠因があると思われる。
平成30年10月に発覚した同社の住宅ローン融資書類の不正の際、JR九州は第三者委員会を設置し素早い対応を取り、再発防止をアピールした。
粉飾決算は、その年の3月に行われていたわけで、本当なら内部の不正にメスを入れるべきだったと言える。
ところが、第三者委員会のヒアリングに肝心要の前社長を召集しないまま委員会は終了、早期の幕引きを図った。

今こそJR九州は第三者委員会を再度設置して、粉飾に至った経緯、5億円以上が回収不能となった不良債権の原因を調査し、株主に説明をするべき時ではないだろうか。