矢野建具製作所~破産~1年前取材した時には・・・

大正15年11月設立、業歴90年を超える木製建具製作業界では老舗の、合資会社矢野建具製作所(久留米市宮ノ陣4-43-35 池尻重喜代表)は、10月28日に福岡地裁久留米支部で破産手続き開始決定を受けていたことが判明した。
破産管財人は、仲家淳彦弁護士(あゆみ法律事務所、TEL0942-65-9277)で、財産状況報告集会・廃止意見聴取・計算報告の期日は平成28年1月28日午前10時30分。
事件番号は、平成27年・フ・199号。

同社は、近年特定の建築業者への依存度が高過ぎたことが影響して、よその建具工事業者が施工した物件でも、現場監督から頼まれれば、無償で不具合を調整するなど、いわゆるサービス仕事が多く、赤字幅が膨らんだようで、平成26年8月末に第1回目の不渡りとなった。

この時取材した際には、年明け、つまり平成27年1月からの仕事はあるが、年内9月から12月までの仕事が無い、との説明だった。
前述のような言葉に続いたのは、「わたしらは精一杯ゼネコンさんに尽くしたけれど、先方は気にもかけてなかったんですかね」という悔みごとだった。
得意先の建築業者が地場でも大手だっただけに、あきらめがつかないような印象を受けた。

大昔、屋根工事業者さんを取材した時、仕事があっても利益の取れない仕事ばっかりが増え、つなぎ資金を銀行からの借り入れで調達せざる得を得なかった経営者は、そうした事態を、「いつの間にか、資産が借金に変わっとるとですよ」と、いみじくも評していた。
銀行は担保を入れないとお金を貸してくれないからだ。

ひょっとしたら池尻代表は、「これまで頼まれたことは無償で、自分ところの建具だけではなく、よその工事の不具合まで、サービスでしてきたんだから、矢野建具がおかしくなったら、なんとか面倒見てくれるんじゃないやろか」と、甘い考えを、おそらく抱いていたのではないだろうか。
そういうことは、あり得ません。
昨年、軽天工事の佐藤商店が破産しました。
中央区港の本社、東区箱崎ふ頭の倉庫を売却してまで、スーパーゼネコンに尽くしたものの、破産しました。
横浜の傾きマンションの影響で、杭工事のチェックは今後しばらく厳正を極めるでしょう。
そのほかの専門工事でもチェック工程が増えるはずですが、工事単価は上がりません。
今と一緒です。
下請協力業者にとって、増えた工程は手出しでしかないということを肝に銘ずるべきです。

 


 

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