伝統建築をめぐる冒険~古民家探訪シリーズ~エスアールエスタッケイ

うきは町の県道106号線を合所ダム、浮羽カントリークラブ方面へ5キロほど上ったところ、隈上川の川面を隔てて佇む大きな古民家「野上家」がある。
安政3年(1856年)に建てられた母屋はレストラン&カフェとして。また明治6年(1873年)に併設された立派な漆喰の蔵は、バラエティ豊かな作家の個展を開催する趣のあるアートスペースギャラリー「安政(あんせい)」として、毎週、土、日、月曜日と祝日に営業されている。


本来は茅葺の屋根だが、現在は保護の意味もあり、瓦型のトタン(鋼板)に覆われて見えない。しかし、これを外せば「杉皮葺き屋根」とよばれる、日田や天ヶ瀬地方独特の茅葺が現れるそうだ。

屋敷へと続く石積沿いのアプローチを通って母屋入ると、綺麗な土間の右手に現れるのは御前・ゴゼン、仏間・ブツマ、座敷・ザシキと呼ばれる広い空間。中でもゴゼンは15畳もあり、その上部にはしる、それはそれは立派な梁に誰しも目を奪われます。(残念ながら写真はアリマセン・・・)
つづくブツマの開口部からは川面が望め、夜には漆黒の県道から、川越しに観えるブツマの際に置かれたスタンドの明かりが美しく浮かぶそうだ。
 
野上家は江戸時代末期からつづく浮羽随一の山林地主で、その家格にふさわしく地域最大規模の屋敷とあって別棟・ハナレが2棟あり、奥のハナレからは庭園が広がっている。
 
 

オーナーの東野ふさ さんから色々お話を伺っていたところ、次々に学生とおぼしき方々が入って来られたため、旅行ですか?尋ねたところ九州大学の建築学科研究室の生徒さん方で、年に1度はこの地で泊り込みのフィールドワークをしているとのことだった。
今から「野上邸」をフィールドにされるとのことだったため、あつかましいとは思いつつ優秀な生徒さんたちに混じって、引率の方の解説を拝聴した。
また、この日はめったに開かれないブツマの仏壇もご開帳していただき、まるで日光東照宮をコンパクトにしたような、繊細で豪華な職人技には正直、感銘すら受けたものだ。

これだけの規模で当時の姿を残しながら現存していることもさることながら、実際に人が暮らす古民家で、こんな風に気軽に内覧までできる処はそうそうないだろう。
そんな幸せをしみじみ噛み締めながら、奥のハナレでお庭を眺めつつ美味しいケーキをいただいた。

【古民家探訪シリーズ~㈱エスアールエスタッケイ代表 住吉 英智】  

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