被害者を訴えた逆切れ裁判 ⑦ ■ みんなで被害者虐め

美風交通が年間1億円の新しい仕事を始めた途端、1ヵ月の間に同じ場所・同じ時刻に2度のもらい事故に遭い、仕事を失い、別の会社がそれを受注したのは事実である。

タクシー会社や九州産交バスが 「会社」として 故意に事故を起こすことは考えられない。
あるとすれば、運転手個人か。
事故から3年半過つが、今となっては真相は闇の中である。

最後に、被害に遭った美風交通について。

これまで報じてきたように、2回目の事故について 加害者の九州産交バスと三井住友海上から損害賠償を求めて民事訴訟を起こされ、約3年もかかって1審判決が出た。
完全に停車していたにも拘わらず 美風側に 過失割合30%があるという到底納得のいかないもので、美風は控訴している。

これまでの記事はこちら

他にも 美風にラッピングバス運行を要請してきた旅行会社S社が、契約金の一部 1775万円の返還を求めて提訴してきている。
S社は 美風が2度の事故を起こし 顧客の安全を確保できないという理由で契約を解除してきたものだ。

また、今年になって 2回目の事故の修理費用 317万3310円の支払いを求める裁判が 三菱ふそうトラック・バス㈱(神奈川県)より提訴されている。
通常、修理費用は過失割合に応じて双方の保険会社が直接支払いを行うが、ぶつけた九州産交バスの保険会社「三井住友海上」が 過失はないとして提訴したことで、3年間修理費用が支払われていない状況だ。
三菱ふそうが請求するのは当然であるものの、事故の被害者である美風に 立て替えてでも支払うように 主張している。

裁判が終われば いずれは入る金、三菱ふそうほどの大企業がわずか300万円程度の額で 裁判まで起こすのも疑問だが、同社の広報担当によると 裁判の内容については個別に答えられないという。

美風は事故で仕事を失った後に裁判で訴えられ、現在も 大企業相手に係争中である。
あまりにも理不尽で、みんな寄ってたかって弱い者虐めをしているように見えても仕方がない。

今回で連載は終わるが、新しい情報が入れば 引き続き報じていきたい。

ー 了 ー

被害者を訴えた逆切れ裁判 ⑥ ■ 一番得したのはJ社?

平成29年10月、美風交通は 運輸局より大型バスの保有が許可され運行開始した。
そのわずか6日後に1回目の事故、そしてその1ヵ月後に同じ場所、同じ時刻に2回目の事故、2度続けて「もらい事故」という不運が続いた。

そして同年12月、旅行会社S社から 検討していた新規契約(5年でラッピングバス3台)の契約を解除したいとの申し入れがなされた。
「運行状況において2度の事故を起こしており、顧客に怪我を負わせては遅いから」という理由である。

その後、5年でラッピングバス3台の仕事は、韓国系の免税店の子会社J社が受注することになった。

棚ぼたで 一番得をしたのは J社だ。

実は、平成29年8月に、S社が美風交通とラッピングバス2台の契約を締結したが、それまでS社の仕事を請け負っていたのがそのJ社だったという。
S社のラッピングをするということは、他社の仕事はしないことを意味する。
S社は 他の旅行会社の仕事もするJ社より、ラッピングして自社専用のバスを走らせてくれる美風交通に乗り換えた。

また、J社は日帰り観光の最後に J社の親会社の免税店に ツアー客を連れて行っていたが、美風交通はツアー客を 国内の免税品を扱うドラッグストアに案内し 売り上げの10%をS社に戻すことにしており、S社にとってメリットが大きかったのである。

S社は こうしたビジネス上のメリットがあって美風交通に乗り換えたのだが、顧客を奪われたJ社にとっては 年間換算で1億円の売上が無くなったことになり、死活問題だったと思われる。

2度の連続もらい事故が、ただの偶然なのか、それとも何か大きな力が働いたのか。

ー 続 く ー



 

被害者を訴えた逆切れ裁判 ⑤ ■ 1ヶ月で2度のもらい事故

この話はまだ奥が深い。

今回の事故の判決が出るまで提訴から3年を要したが、実は美風交通のバスは、この事故の1ヵ月前に、別のもらい事故を受けている。
美風交通が ラッピングバスの契約を締結した時から時系列に並べると、不可解な流れになっているのが分かる。

平成29年7月14日、 美風交通は 韓国資本の旅行会社S社(福岡市博多区)からの要請で、ラッピングバス2台 、2年5200万円の契約を締結する。
折しもインバウンド真っ盛り、アジアからの観光客が押し寄せ、観光バス業界は運転手不足に嘆いている時期だ。

美風交通は当初、大型バス保有の許可を持っておらず、九州運輸局から許可が下り次第 営業を始めることにした。
同年8月には、新世界とさらに3台追加して 5年約5億円相当の契約を結ぶことで協議を始めていた。

そして、同年10月19日、ようやく大型バス保有の許可が下り、10月23日からラッピングバスの運行を開始した。

ところが、開始から わずか6日後の 10月29日午前9時、博多駅筑紫口貸切バス有料駐車場で、信号待ちで停車していたところ、後方からタクシー(福岡市内)に追突され、マフラー付近が破損するという事故が起こった。
タクシーはバスにぶつかった後、バックギアに入れ、約20mほど後方にいたタクシーに更に追突するという奇妙な動きをしている。

バス運転手の話では、タクシーの後部座席には いかついの男が乗車していて、バス運転手に向かって暴言を吐き、タクシーは大破して廃車になるほどだったが、その男は連絡先も残さず 行方がわからなくなったという。

そして、その事故からわずか31日後、これまで報じてきた九州産交バスとの接触事故が起こった。

運行開始からわずか6日目に1回目の事故、そして そのわずか 31日後に2回目の事故、いずれも停車中のもらい事故、しかも 同じ時刻、同じ場所、これを偶然と言うのだろうか。

ー 続 く ー

被害者を訴えた逆切れ裁判 ④ ■ 停車中のもらい事故で30%の過失?

令和3年5月13日、熊本地方裁判所(佐藤道恵裁判官)が判決を出した。

予想に反し、過失割合を 被告(美風交通) 30%、原告(九州産交バス・三井住友海上保険) 70%とし、
1)九州産交バスが支払った修理代 免責分10万円のうち、被告は原告に3万3000円支払う
2)三井住友海上保険が支払った102万4000円のうち、被告は原告に 30万7200円支払う
3)美風交通の修理代金 190万円のうち、原告は被告に 146万3000円支払う
とした。

停車していたにも拘わらず 過失割合が30%という判決に首を傾げざるを得ないが、過失理由は 原告の主張をそのまま認めた格好だ。

また、美風交通が反訴の中で求めた修理中の営業補償 ほか 修理後の不具合に関する請求は一切認めなかった。

美風交通は、判決文の中に事実誤認が随所に見受けられることもあり、控訴を予定している。

裁判の判決もそうだが、この事故は最初からおかしなことの連続だったという。

ー 続 く ー



 

被害者を訴えた逆切れ裁判 ③ ■ 子どもの屁理屈のような主張

この事故を裁判所で使われた資料を基に図解する。

美風交通バス(以下美風バス)と九州産交バス(以下九産バス)は当初、2台とも停車場の枠の中にいた。・・・(A)(ア)
その後、2台とも同時に並走する形でロータリーに進入したところで、美風バスが九産バスの動きを見て停車(C)、九産バスは一旦停車する(ウ)も、右側の確認だけして左側の安全確認をしないまま左折進行し、接触したものである。・・・(C)(エ)

裁判の判決文に記載されている 原告(九州産交バス・三井住友海上火災保険)の主張は、
「九産バスが、駐車場からロータリーに先行して進入して、左後方の安全確認不十分なまま左折進行したところ、美風バスが、右前方の九産バスの動静に注意し、九産バスの走行経路内に美風バスを進入させない義務があるにもかかわらず、その確認が不十分のままロータリーの左折経路まで前進して停止した結果、事故が発生した」
というものだ。

まるで 子どもの屁理屈のような主張で 目を疑った。
例えば2台同時に発車することはある。
片方が気づいて停車して、もう片方が気づかずにそのまま進行を続けたことで接触した場合、停車した方にも過失責任があるということになる。

停車していても バスにぶつけられたら、こんな結果もあることを肝に銘じておかねばならない。



ー 続 く ー

 

被害者を訴えた逆切れ裁判 ② ■ ぶつけた側が修理費を請求

九州産交バスの修理費用は112万4000円、そのうち 免責分10万円を九州産交バスが支払い、残り102万4000円を三井住友海上保険が負担している。
そして、平成30年6月、九州産交バスと三井住友海上は 連名で、美風交通を相手取って それぞれ10万円と102万4000円の支払いを求める裁判を起こした。

停車中の車に接触した側が、自車の修理費用 全額を請求する裁判というのは あまり聞いたことがない。
合計金額が わずか112万4000円、提訴したのが 九州のバス業界の雄、九州産交バスと 天下の三井住友海上保険だ。

九州産交バスの担当者は 全て保険会社に任せてあるということで、取材に応じなかった。
三井住友海上保険は本社広報を通じ、係争事案については主張は法廷にて行うべきであり、当社の主張は訴訟において明らかにした通りという回答があった。
三井住友が法定で訴えた主張は、
美風交通のバスの停車位置が悪かったということである。

停車中にぶつけられた上に 修理費用まで請求された美風交通だったが、当然過失はないものとして112万4000円は支払う意思はなく、反対に 平成31年2月、破損した美風バスの修理費用約190万円と修理中の営業補償を求めて反訴した。

ー 続 く ー



 

被害者を訴えた逆切れ裁判 ① ■ 停車中のバスに接触

大型観光バスの接触事故の修理費用を巡り、事故を起こした側のバス会社と保険会社が連名で、被害にあったバス会社を熊本地裁に訴えた裁判の判決が 5月13日に出たが、実に不可解なものだ。

原告は H.I.S傘下の九州産交バス㈱(熊本市)と 三井住友海上保険㈱、被告は須恵町に本社を置く観光バス会社 ㈲美風交通だ。

事故が起こったのは平成29年12月1日午前9時頃、JR博多駅筑紫口の貸切バス有料駐車場内において、停車中だった 美風バスの右隣にいた 九州産交バスが発進し、左折する際に美風バスのフロント右側に接触した。

美風バスのドライブレコーダーに事故発生時の動画も残っており、美風交通のバスは完全に停車している。

また、事故直後の警察の調書には、九州産交バスの運転手が「左側を確認していなかった」と証言していることが明記されている。

この接触で双方に修理費用がかかったが、当然のことながら、美風交通の保険会社である 東京海上日動火災保険㈱は、停車中のもらい事故、過失割合がゼロということで 当初から介入しないものとした。

ところが、九州産交バスと三井住友海上保険が 事故から半年経った平成30年6月、思いがけない行動に出たという。

ー 続 く ー