特捜検事逮捕で思い出した白紙調書事件 [2010年9月29日12:13更新]

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ベスト電器が絡んだ郵便不正事件で、大阪地検特捜部主任検事が証拠をねつ造したとして、マスコミが報じ始めると同時に最高検によって逮捕された。さらには同地検前特捜部長まで逮捕される事態となり、世間に大きな衝撃を与えている。

この事件を聞いて頭をよぎったのは、16年前に起きた「南署白紙調書事件」である。



県警がある会社役員宅に突然家宅捜索に入り、覚せい剤と大麻が発見された。会社役員は当然ながら逮捕され、1年6カ月の実刑判決が下された。

その後、読売新聞のスクープで白紙調書の件が明らかとなり、捜査が進展した結果、当時南署のK署長逮捕が目前に迫った。だがK署長は官舎で所持していた拳銃で自ら命を絶ち(このようには報道されてはいないが)、事件は終結したように記憶している。

 

K署長は捜査4課時代、暴力団の取締りに辣腕を振るい、マスコミは「ドーベルマン刑事」と持てはやした。福岡と久留米の暴力団抗争に終止符を打った功績によって南署長に就任したとされていた。

一方でかなり強引な捜査を行なっていたのも事実。覚せい剤所持事件では部下が作成した白紙調書を信じ、家宅捜索を行って会社役員を逮捕したのであるが、当時福岡県警内部では派閥抗争が激しく、「K署長は巻き込まれた被害者」との声も聞かれた。だが死人に口なしで事件の真相は闇に葬られた。

 

今回の特捜部の事件についてコメントするつもりはないが、逮捕された検事らとK署長は、進む道は違っていてもともに司法の花道を歩き、将来を嘱望される身であったように思われる。

強い人ほど挫折感が強いもので、場合によっては検事もK署長と同じ道を選択したかもしれない。最高検の今回の逮捕は見方を変えれば、1人の人間の命を救ったとも言えるのではなかろうか。