福岡市の方針決定に、全会派一致で請願に賛成していた議会をはじめ、井尻地区の関係者に衝撃が走った。
国庫補助採択の前提条件は、費用対効果(B/C「便益を費用で除した数値」)が「1」を超えることであるが、検証結果では井尻駅周辺については 「0.58」 と予想以上に低い数値だった。
その理由として、外環状線ができて以前ほど井尻駅周辺の交通渋滞がなくなったことや、労務単価や原材料費が高騰して建設コストが上昇したこと等が考えられる。
しかし、他の案件で B/Cの算出に携わってきたコンサル業者によると、同じ国交省のマニュアルを使っても条件設定次第でいかようにもなり、依頼者の意向を反映して数値を操作することは簡単というのだ。
それが 仮に事実なら、コロナ禍で税収が落ち込む中、工期が15年以上の長期に亘り 市の財政負担が大きいことから、恣意的に数値を低く抑えた可能性もあるのではなかろうか。
高島市長の政治的な思惑があったという声も一部では噂され、いずれにしても 高島市政の中で優先順位が低かったということだろう。
だが、西鉄にとっても 連続立体交差が実現すると、安全性の向上と列車速度のアップの他、新たなビジネスチャンスも生まれるなどメリットは多いはずだ。
一旦方針を決定した以上、短期間で覆すことは難しいと思われるが、前述のように建設コストが上昇したことで B/Cが「1」を超えることは難しくなっている中、国交省のマニュアルにはない事業効果を加味することで国庫補助の基準の見直しを図るなど、政治的な働きかけも 必要となるだろう。
高島市長の「やる気」に注目していきたい。
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井尻駅周辺・連続立体交差事業化を断念?(後)
井尻駅周辺・連続立体交差事業化を断念?(前)
現在福岡市は、福岡県と共に 令和4年度8月末の高架切り替えを目標に、西鉄天神大牟田線連続立体交差事業に取り組んでいる。
そのうち福岡市分は、雑餉隈駅周辺1.9km、事業費415億円となっている。
同事業には、踏切が無くなることによる道路交通の円滑化、沿線地域の環境改善など高い効果が見込まれており、雑餉隈駅周辺の次は 井尻駅周辺(大橋側から雑餉隈側まで)を 継続して事業化することで、更に利便性が向上すると考えられている。
井尻駅周辺の事業化については、慢性的な渋滞や踏み切り事故もあって 平成23年10月に井尻地区まちづくり期成会が高島市長宛に要望書を提出された。
また、同28年6月には3205名の署名と共に「早期実現を求める請願」が市議会に提出され、同年12月議会において全会派一致で採択され、関係者は高島市長の決断を待ち望んでいた。
井尻駅周辺1.6kmの区間の事業費は343億円と試算、そのうち西鉄が受益相当分として10%を負担し、国庫補助が採択されれば残りを国と福岡市で折半することとなっていた。
ところが、令和3年2月議会の中で 井尻駅周辺の事業化について、福岡市は国庫補助の採択基準を満たしていないことを理由に検討しない方針を示したのである。
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