日本トレイドが宗像に土地確保!? 怪情報の真相は‥ [2008年2月22日15:14更新]

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(08年2月号掲載) 

現在日本トレイドのある「ビッグエア福岡」(博多区)「宗像市内に土地を確保した」。久山町でのテーマパーク計画が事実上頓挫した日本トレイド社(山崎和則社長)に関する怪情報"が、関係者の間を駆けめぐっている。「もし事実なら、今度はそちらへ計画を移すつもりか?」―。

過去には移転先候補地として人工島(福岡市)が話題となったこともあったが、突然浮上した宗像市の名は関係者にとっても「寝耳に水」だった。

だが本紙の取材によると、事実は情報とはまったく違うことが明らかに。さらに、将来仮に土地を確保したとしても、それでスムーズに計画が運ぶとは言い難い現状が浮かび上がった。計画を取り巻く厳しい現実に「最後の悪あがきではないか」と冷ややかな声が上がっている。



突然の「怪情報」

「日トレ社が宗像市に土地を確保か?」

この情報がもたらされたのは1月下旬。 30万坪の土地を12億円で購入」というもので、しかも売主は北九州市に本社を置く有名企業とのことだった(HP既報)

そこで本紙は真偽を確かめるため、現地関係者や不動産業者などに取材した。 

土地はどこに?

「テーマパークを造るとなると、相当広い土地が必要。しかも坪単価が4000円でしょう?そんな所はこの周辺くらいしか思い当たらない。平野部では規制などの関係でまず無理」

宗像市の南端にある福岡国際カントリークラブ。この周辺の山道を車でめぐりながら首を傾げるのは、あるベテラン不動産業者だ。

周囲には思いのほか険しい山が続く。「造成するのは簡単じゃない。まず問題なのはその時に出る土砂。それをどこに持って行くのか。さらに、多くのダンプカーが出入りするのにも、道が細くアクセスが悪い。現実的とは思えませんね」

また、最近宗像市で大きな土地取引があったとの情報もない、という。

「そうであれば私の耳に入るはずですが。とにかく、テーマパークなんて代物を造るには土地代のほかに莫大な費用と時間が必要なのは間違いないですね」 

「慎重」が基本姿勢の宗像市

福岡市と北九州市の間に位置し、現在約9万5000の人口を抱える宗像市。両政令市のベッドタウンとして発展を続ける、北筑前地区の中心都市だ。

同市ではこれまでも、企業や商業施設が進出するという話が浮かんでは消えてきた。最近では、世界最大手のスーパー「ウォルマート」の小売施設が進出する―との計画が浮上、新聞紙上をにぎわせた(06年)。

だが「都市計画上の展望としては、大型店とか、街の構造・環境を大きく変えてしまうようなものはふさわしくない」(07年、都市計画審議会議事録より)と、「慎重」なのが市の基本姿勢のようだ。そのためか、この計画も進展を見せていない。 

宗像市は「今のところ日本トレイドが土地を購入したとか、そのような話は何も聞いていない。もし福岡国際CC周辺に土地を購入しても、現状では調整区域なので、テーマパークの建設はありえない。規制をはずすようなことがあれば別ですが・・」と話している。 

「久山で継続」との、株主への説明は?

「宗像市で土地確保」の情報は、もともと、日トレ社関係者が周囲に吹聴していたもの。「『だから計画は続行する。大丈夫』と話していた」(ある関係者)。

日トレ社は、昨年末に株主へ送った文書の中で「久山町の地権者側と引き続き交渉を行う予定」「来年早々には本プロジェクトのさらなる飛躍としたいと考えております」と説明している(本紙1月号既報)

その舌の根も乾かぬうちに、別の場所に土地を購入したという情報を流すこと自体、あってはならないのではないか。 

「現在まだ交渉中」

「実は、まだ購入したわけではない。詳細は言えないが、現在は交渉段階にある、というのが正直なところ」。日トレ社に近いある関係者が重い口を開いた。この証言が事実であれば、土地を確保したという「嘘の情報」を自らが流し、事業の継続を装っていると言わざるをえない。

仮に交渉が成功し土地を確保しても、先述の点を総合すると、宗像市で計画が順調に進むとは考え難い。

日トレ社の存続そのものが危ぶまれる状況にあることは本紙がすでに報じた通り。また、同社の未公開株を売りさばいた「人間と産業開発研究所」(H&M研究所、大阪市)に対する民事訴訟も始まっている。

「最後の悪あがきですよ」(関係者)。宗像市を舞台とした怪情報騒動は、壮大なプロジェクトの「断末魔の叫び」なのかもしれない。