(11年7月号掲載)
だが東海道新幹線が福岡まで延びた頃から「辛子明太子」が郷土の名産品として認知され始め、今では大手だけでなく老舗料亭や飲食店なども参戦、大小のメーカーがその味と品質を競い合っている。
辛子明太子は、主に北太平洋海域に生息するスケトウダラの卵巣を、唐辛子などを使った調味液で味付けしたもの。全国的に知名度が上がり生産量が増えたため、現在では国内産原料だけでは賄いきれず、海外から大量に輸入しているという。
原料は季節ものだけに値動きが激しく、買い付けには資金を要する。また倉庫に保管する期間が長ければ多額の資金が眠ってしまうことになる。こうしたことから辛子明太子の原料の輸入元は一般的に苦しい資金繰りを強いられているようだ。そのためか、辛子明太子業界では「独特」の商慣習が暗黙の了解の元、生きている。資金不足の時にはお互いで原材料を売買して必要資金を調達する、いわゆる循環取引である。
最近は金融機関の監視の目も厳しく、こうした「キャッチボール」や循環取引は不正行為とみなされ、融資金が回収されるケースさえある。そんな時期に、明太子の原材料を扱う「海商」(福岡市東区)と、冷凍保管倉庫の「辻野」(東京都)との間で、循環取引をめぐり裁判沙汰になっているとの情報が飛び込んできた。
まず、海商がブローカーのような商社に原材料を売り、商社はそれを「双日九州」(福岡市中央区)に売却。双日九州はこれを海商に売る予定になっていたという。だが現物は辻野の倉庫に保管されたまま動かず、辻野側から何らかの「警告」が発せられた模様。そのため双日九州は不正行為に関与することを恐れ取引から撤退したらしい。
同社は数年前、「博多まるきた」(福岡市西区)の倒産で手痛い目にあっているだけに、今回は早めに決断したようだ─と、関係者は語る。
海商は、伝票の流れなどが判明し双日九州との取引が破綻した原因は辻野にあると主張。取引とは直接関係ない冷凍庫会社に損害賠償を求めるという、実に変わった訴訟である。海商の請求金額は数億円と言われており、間もなく双方の主張が出そろうだろう。同社の取引先など、関係者は固唾を飲んで裁判の行方に注目している。
それにしても、循環・架空取引は誰もが認める不正な商取引。福岡中央魚市場の例といい、海産物を扱う業界ではなぜこのような安易な行為がまかり通っているのだろうか。
辛子明太子業界 [2011年8月3日11:51更新]
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