組織ぐるみで隠ぺい(最終回)~改めるべきところは改めて~ [2023年1月29日08:00更新]

前述の通り、JRJの「住宅ローン融資書類の不正」では、JR九州は第三者委員会を素早く設置し、決算報告も約1ヵ月遅らせるほどのアピールぶりだった。

公表された再発防止策の中で、「JRJのコンプライアンス教育の徹底」、「プロパー社員の人事制度の見直し」、「グループ会社へのコンプライアンスへの取り組みを評価する仕組みづくり」などを掲げ、まるで他人事の様だが、JR九州幹部のコンプライアンスこそ見直すべきだろう。

JRJの不祥事は前社長に原因があったかもしれないが、そうさせてしまったJR九州の責任には触れていない。
JR九州の田中常務や澤亀執行役員がJRJの取締役を兼務しており、未然に防ぐことができなかった。
幹部はその点を分かっているから沈黙を守っているとしか考えられない。



繰り返すが、「住宅ローン融資書類の不正」問題においては第三者委員会を設置、株主に向けての説明と合わせて役員の処分を行った。
タウンハウス建築に係る不祥事はそれと比較して、もっと重大なコンプライアンス違反であることは明白なのに、検証も処分もされていない。
今後不法に建てた建築物で区分所有者に生命危険が及ぶ可能性も排除できないのに、正面から向き合おうとしないJR九州の姿勢は不誠実と言える。

まず 最初にやるべきことは、特定建設業の資格がないまま建築した 筑後市と糸島市の物件の総点検だ。
準耐火性能が欠如しているという東京の調査会社の報告があり、その情報はJRJも把握しているはずだが 何ら対策を打っていない。

一区分所有者が損害賠償を求める訴訟の準備を進めていると聞いているが、裁判で負けたら点検するというレベルの話ではない。
不法に建てた建築物ということが判明した以上、早急に点検・調査に入るのが企業としての責任の取り方だろう。



そして、次にやるべきは 不祥事発覚後のJR九州幹部の判断の検証だ。
真の第三者委員会を設置し、JR九州の内部調査でJRJの不祥事を把握した後、誰が何のため、どういう判断が行われたかその全容を解明することである。

2018年6月までに行われた内部調査では、紹介者に高額な紹介料が支払われたこと、2018年3月期に黒字化をするために書類を偽造し売上を前倒しするなど不適切な会計処理、保全措置を取らない建物を引き渡し、建設業法違反の施工が行われたこと、更には住宅ローン融資書類の不正まで明らかになっていたと思われる。

調査後すぐ、松尾社長をいったんJR九州コンサルタンツの取締役に降格異動させ、9月に解任しているが、解任理由は公表されていない。
この「異動させて解任」という小細工は誰が考えたのか。

また、同じ月に JRJの「住宅ローン融資書類の不正」が発覚したことになっている。
10月には新聞社が一斉に報じ JR九州が第三者委員会設置を公表、これが本丸から目を逸らすためという指摘もあるが、タイミングといい事件の規模といい、的を得ている気がしてならない。
本当は6月までに分かっており、9月になって発覚したようにしたのではないか。

そして、12月にはエステート・ワンの銀行預金を差し押さえしている。
エステート・ワンは松尾氏との約束で販売しながら支払っていく予定だったが、差し押さえをすれば資金繰りに窮し倒産状態に陥り 5億8000万円を回収できなくなることは容易に想像できるはずだ。
その翌年、JRJは密かに欠損処理を行っているが、誰がどういう理由で 5億8000万円をドブに捨てる判断をしたのか。

最後に、JRJが2018年3月期に不適切な会計処理をした時点では JR九州は知らなかった可能性があるが、なぜ翌年の2019年3月期の連結決算において前期の数値を引き継ぎ発表したのか。
2020年3月期で正常に戻したが、これにはJR九州の監査だけでなく 監査法人トーマツも関わっているかもしれない。



以上、JR九州による組織ぐるみの隠蔽が行われた事績が残っており、疑問が多い。

2年前、傾いたマンションの記者会見に出席していた澤亀執行役員に挨拶しようとしたことがある。
見るからに性格の良さそうな人だ。
「福岡県民新聞の…」と名刺を渡そうとした瞬間、「あっ」と何かを思い出したフリをして 走り去って行かれたので挨拶できなかった。

九州の発展はJR九州なくしては有り得ない。
だからこそ、この問題に真摯に向き合い 改めるべきところは改めて頂くことを切に願っている。

(了)