高まる債権者の怒り 丸美 不当な手法で管理費から出資!?  [2008年9月11日10:58更新]

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(08年8月号掲載) 

福岡市中央区大名の「丸美ビル」8月5日に民事再生法適用の申請を行ったマンション総合管理会社「丸美」(宮崎隆社長、福岡市)。負債総額は210億円を超えるとされ、九州では今年最大級の経営破綻となった。

同日開催の説明会では、投資した金が返還されるかどうか説明がなく、5600人に上る債権者からは怒りと不安の声が上がっており、混乱が拡大する様相を呈している。

一方、「不当な方法でマンション管理組合から金を集めていた」との内部関係者の証言もあり、今後の展開をめぐって予断を許さない状況となっている。
(写真=福岡市中央区大名の「丸美ビル」)

 



「丸美がおかしい」

「年明けから社員が続々と退社している」「同社の不動産ファンド『オネストワン』の利回りは 異常に高い、大丈夫か」。こんな情報を本紙が得たのは今年初め。「丸美がおかしなことになっている」。こうした証言を元に、本紙は3月、同社の法的手続きの可能性についてHPで報じた。その後リゾートホテル会員権の解約が相次ぐなど状況の悪化が加速、ついに今月、経営破綻した。

同社側の説明によると、事業多角化で借入金が膨らみ、米サブプライム住宅ローン問題に伴う不動産市況の悪化で、金融機関の融資姿勢が厳しくなった。またホテル会員権の解約が殺到し、返還の資金繰りに行き詰まった、という。 

 一気に事業を拡大

1984年に清掃会社として出発した同社は次第に業容を拡大。マンション総合管理事業をはじめ、湯布院(大分)、菊南(熊本)、霧島(鹿児島)にホテルを所有しリゾート事業や不動産売買事業などを行っていた。

10年ほど前、倒産したデベロッパーの管理物件を安い価格で買い取って信用力を増したことが飛躍のきっかけに。ある地方銀行と親密な関係を築き、二人三脚で業績を伸ばした。

一時は、その地方銀行が支援する地元デベロッパーが分譲するマンションはすべて丸美が管理すると言っても過言ではない状態に。「その原動力となったのは、創業者でもある金丸近会長です」。同社をよく知る関係者はこう口をそろえる。

まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだった丸美。「社が所有するホテルでイベントを開催した際、5000万円の現金を積み上げて誇示し、社員の意欲を煽ったこともあった」(関係者)。 

マンション管理組合積立金の出資は「事後承諾」

だが、事業拡大の裏で資金繰りが問題となっていた。

同社が所有するホテルを使って「預託金制リゾートクラブ」と称する会員権を販売。1口200万円で約90億円を集めた、との情報もある。「さらに幹部が目を付けたのが、マンションの管理組合が入居者から集めて保管している管理費だったのです」(同社関係者)。

マンションは年月が経過すれば外装や給排水の補修が必要。事前に毎月積み立てて、資金を蓄えておくのが通例だ。「1回の金額は微々たる物でも、長期に渡ると相当な額になる。これを何とか利用できないかと。そして、この資金の集め方が問題でした」(同)。

本紙が入手した資料によると、昨年5月上旬、あるマンション管理組合(福岡市)の総会が開催され、オネストワンへの出資が了承された。だが実際に管理費数百万円が丸美側に振り込まれたのは総会前の4月末。つまり「事後承諾」だったわけだ。

この経緯の詳細については不明だが、本紙は同様の資料を複数入手している。「こうした犯罪的な行為に後で気付き、嫌気が差して辞めた社員は多い」(同)。 

債権者はどうなる?

さて、多くの債権者にとっての心配の種は、預託金や組合の積立金が戻ってくるのかどうか、だ。

丸美の経営危機が囁かれ始めてから「今回の資金繰り悪化の裏には、いわゆる『ライブドアショック』による巨額の損失がある」との情報が伝わって来た。

また同社の「金庫番」とされていた社員ら一部の幹部はすでに退社。ある内部関係者は「幹部が資金を隠している。それらの金があれば債権者に返せるし、こんな事態にもならなかったはずだ」と話す。

5日の説明会では金丸会長、宮崎社長ら経営陣の姿はなく、会場の債権者からは「どうして何の説明もないのか」「金は返ってくるのか」との声が。いら立ちと不安が高まる一方「どうせ出資した管理費は返って来ないだろう」とあきらめの表情を見せる管理組合関係者も。

すでに一部の債権者らが「被害者の会」を発足させ、他の債権者に参加を呼びかけている。丸美側の対応次第では、混乱はいっそう広がりそうだ。