福岡市東区舞松原の傾斜マンション「ベルヴィ香椎六番館」であるが、8日、販売したJV3社の担当者が同管理組合を訪れ、杭が支持層に到達していないことを認めた上で謝罪した。
JR九州から執行役員の事業開発本部マンション事業部長が出席したが、これまでの対応について問われた際、「施工会社の報告を信じていた」と責任回避とも受け取れる発言があり、住民の一人は耳を疑ったという。
JR九州とゼネコンとの力関係を象徴する言葉だが、既報のように、「建築工事中に初期沈下を起こしており、造作工事で調整している跡があることから、傾斜を承知しながら販売していた」と日本建築検査研究所㈱が断定している。
また、施工にはJR九州が筆頭株主である九鉄工業㈱がJVとして参加していることも忘れてはならない。
住民にとって施工会社は間接的なものでしかなく、JR九州のブランドを信じて購入しているのである。
苦しいかもしれないが、今後のために矢面に立って真摯に対応することが信頼回復に繋がるのは言うまでもない。
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JR九州、「施工会社の報告を信じた?」
傾斜マンション、JR九州社長自ら住民と対話を
JR九州は、平成31年3月期連結決算で売上高4403億円と過去最高を更新、今や首都圏などでもホテルやマンション、オフィスビル、飲食店、ドラッグストアを手掛け、九州経済を牽引するトップ企業に成長している。
令和元7月2日の大手新聞に同社社長の青柳俊彦氏のインタビュー記事が掲載され、現在売上の6割を超えるようになった鉄道以外のビジネスを始めてきた頃の苦労について語っていた。
1987年(昭和62年)に分割民営化され3000人の余剰人員の給料をどう稼ぐかが当時の経営課題で、つい先日まで駅員や運転士、車掌をしていた社員が、焼鳥屋やうどん屋、釣り堀などを始めたが簡単にいくはずがなかった。
自動車ディーラー事業は止めるに止められず、撤退するときは相当な損失を出し、熊本の住宅開発も投資額をほぼ全て損失計上するなど「失敗」の連続だった。
現在MJRシリーズで一定の評価を得ているが、JR九州がマンション事業に乗り出したのは、福岡市東区のJR新駅開業に合わせて8棟のマンションを企画した頃だと思われる。
JRブランドと駅前という好立地が功を奏し忽ち完売、幸先良いスタートとなったが、8棟のうち1棟でドアが開かなくなったり雨漏りがしたりするなど、当初から構造的な瑕疵が疑われていた。
対応策として、ドアの交換や補修などで対応しその場を凌いできたが、竣工後25年目となる今年4月、民間検査会社の調査により基礎杭が支持層に最大7m到達していないことが判明、その上、建築当時マンションが傾斜していることを認識しながら造作工事で誤魔化し販売、他にも耐震関連や内装での手抜き工事などが明らかになった。
販売は3社のJVであるが、住民からしてみればJR九州ブランドで購入しており、マンションの不具合についてもJR九州なら期待を裏切らず真摯に対応してくれると信じてきたのである。
しかし、平成29年12月、JR九州は傾斜の事実は認めたものの、「原因は不明で今後調査は行わない」という報告書を送ったのを最後に、一切顔を出さなくなった。
昨年6月のJR九州の株主総会では、同マンションの対応について株主から問われた際、役員が「適切に対応していく」と回答したが、この1年間何の動きもなかった。
瑕疵が明らかになった以上、青柳社長はこれも鉄道以外のビジネスを始めた頃の「失敗」の一つと認め、今年6月の株主総会までに、自ら住民と今後について協議し道筋をつけるべきではなかろうか。