昔話・T工務店

先日、東京の友人のお母さんが96才で亡くなられた。
ご主人は20数年前に亡くなられており、お母さんは高齢ということもあって友人も少なく、葬儀は親族だけで済ませ、弔電や花なども断ったという。
だが葬儀の度にどういうわけか、10数年前に民事再生法を申請し、倒産したT工務店のことを思い出すから不思議だ。
同社は代表取締役社長に長男が、また二男が副社長に、そして三男が常務に就任、その後小さな建設会社が福岡市の発展に歩調を合わせて公共工事を受注、地場トップクラスのゼネコンに成長していったのは言うまでもない。
そして社長の長男である実子が成長したことから経営権を譲り、自らは会長に就任して運営していたが、数年後に亡くなられた際、葬儀の問題が発生した。
本葬だけで良しとする新社長と、社葬を行うべきだとする叔父の副社長との間で意見が対立した。
結局、社葬は行われず、叔父は副社長でありながら、その後は会社運営の第一線から遠ざかることになった。
結果、若い社長を補佐する人材が見当たらず、銀行出身役員の主導で方向性を見失い、最後は法的手続き申請となった。
返す返すも残念で仕方がない。


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変化する葬儀

 昔は相互扶助の精神から、葬儀などは隣近所の義務とされ、村八分と言う言葉の残りの二分の中には、火事と葬儀だけは別という意識が生きていた。
また葬儀の中には、密葬を済ませた後に、社葬や本葬などを盛大に行っていた時代もあったが、寿命が延び高齢化が進むと現役を退いて久しくなり、亡くなった本人を知らない人も増えて、義理での参列が先行する葬儀になりがちで、家族葬と言われる葬儀が増える。
そうした世相を反映して近年は通夜や葬儀を簡略化し、病院で亡くなった故人の遺体は直葬センターの冷蔵庫に運ばれ、24時間経過してから火葬する方式も現れた。
また火葬した遺骨を埋葬する場所がないとの理由で、遺骨を受け取らない遺族も現れ、火葬場で処分している話も聞く。
一方で葬儀に関しては、料金体系が不明瞭で分かりにくいと言う声が多かったが、最近は事前に料金を明示する葬儀社が増え、お寺に対する謝礼も具体的な金額を提示するところも現れたから驚きだ。
また地方では過疎化の波が押し寄せ、檀家の子供たちが都会に移り住み、両親の遺骨なども都会の寺に移す傾向にある。
当然地方の葬儀社も売上減少に歯止めが掛からず、中には本社機能だけを国内に置いて、日本特有の「おもてなし」精神をビジネスに生かし、中国などへの海外進出を目論んでいる葬儀社も現れ、時代の移り変わりとともに葬儀方法も更に変化していく事だろう。 続きを読む