トップが責任を取らない組織

昨夜エイプリルフールに悪乗りして 冗談みたいなニュースが配信されたと思ったら、今日の朝刊も同じ内容だった。
自民党の茂木敏充幹事長が、派閥による政治資金規正法違反を巡り、清和研と志帥会の議員、39人の処分を行う党紀委員会の開催を要請したという。

対象を「収支報告書に不記載がある議員」としたことから 処分の範囲が限定された。
そのため、
① 逮捕者を出した宏池会の領袖で、大臣規範に反し大規模パーティを開いた上、総理就任祝賀の脱法パーティを開催した岸田総裁
② 同じく、大臣規範に反し大規模パーティを開いた林官房長官
③ 逮捕者を出した志帥会の領袖で、50億円の政策活動費の使途が不明の二階元幹事長
④ 政治資金を資金管理団体からその他団体に移し、億単位の使途が不明となっている茂木幹事長
は不問となる。

収支報告書の不記載は、修正すれば法的に問題はないと強弁してきたのに なぜ処分するのか。
その答えは、国民の批判を真摯に受け止めるため 政治的責任、道義的責任を取ってもらうということだろう。

ならば、上記の4人はどうなる。

対象を決めたのはツートップの岸田総裁と茂木幹事長、普通の組織なら部下の不祥事の責任はトップが取るところ、この組織のツートップは自らの処分は検討しない意向を示した。
日々有権者と向き合っている地方議員からは、組織のガバナンスの在り方について説明がつかないと不満が聞こえてくる。

他派閥5年、宏池会だけ3年のなぜ

岸田総理は唐突に宏池会解散を決定し、座長の林芳正官房長官は「すべては政治の信頼回復のため」ともっともらしいコメントを発信、「英断」として評価する論調があるが額面通り受け取る訳にはいかない。

宏池会は、1957年創設以降5人の総理大臣を輩出してきた名門派閥、優柔不断の代名詞である岸田総理が自分の代でその歴史に幕を下ろすことができるはずもなく、何か裏事情があると見て間違いないだろう。


首相官邸ホームページより

特捜部の捜査は、清和会(安倍派)と志帥会(二階派)については2018~2022年の「5年間」を対象とし、清和会は6億7503万円、志帥会は2億6460万円のパーティー収入等を派閥の政治資金収支報告書に不記載だったとして、虚偽記載の罪で両派の会計責任者を在宅起訴した。
一方、宏池会については、2018~2020年までの「3年間」で 3059万円の不記載で元会計責任者を略式起訴としている。

ここで疑問が。
なぜ宏池会だけ3年なのか。

2021~2022年については何ら問題がなかったかもしれない。
だが、逆に捜査の過程で、宏池会、或いは岸田総理自身の2年分の収支の中に重大な法令違反が見つかり、何らかの裏取引があった可能性も。
特捜部から流れる情報だけで世の中が動いており、想像に任せるしかないが。


さて、通常国会が始まった。
バイデン大統領がウクライナ支援の7.5兆円を日本に負担させようとしており、その予算を通すために一番反対しそうな安倍派を潰したと指摘する識者もいる。

内憂外患のこの時期、国会が「政治とカネ」の問題に終始して、真に議論すべきことを見失わないようにして頂きたい。

主流3派切り捨て、その先は?

昨秋「政治とカネ」の問題が出て以降の、岸田総理の行動や判断は理解に苦しむ。
総理になる際、安倍元総理の応援を貰っておきながら、凶弾に倒れた後は LGBT法を通したかと思うと、派閥の裏金問題が出るや否や、清和政策研究会(安倍派)の官房長官や閣僚、党役員を一斉に交代させた。

その後、歴代総理の慣例を破り就任後も宏池会会長に固執してきたが、方針を転換し、「総理・総裁の任にあるうちは派閥を離れるのが適切と考えた」とあっさり退任した。

安倍派と二階派の問題で終わるかと思ったら、先週宏池会の元会計責任者が立件される想定外の事態に。
すると今度は、派閥の領袖の麻生氏と茂木氏に相談もせず、いきなり宏池会を解散すると言い出す始末、先が見えてもうやけくそにになったか。
安倍派に続き、これまで政権を支えてきた麻生派・茂木派を切り捨てる覚悟の表れか、これで主流3派からの信頼は完全に失った。

岸田総理は現在派閥を離れているのに、なぜ宏池会の解散が言えるのか。
また、捜査が始まった段階で安倍派の閣僚らを更迭したのであれば、会計責任者が立件される宏池会の閣僚も全員更迭されるべきだ。
もちろん自分自身も。

思いつきの行動でハチャメチャに見えるが、派閥政治やしがらみからの脱却を目指した計算づくの行動だったら違う見方も。
総理にしかできないことがある。
財務省と決別して消費税減税、子ども教育費大学まで完全無償化、それくらいのことをやれば支持率が回復するかもしれない。



 

安倍派更迭、二階派続投、総理はOKの基準は?

誰の入れ知恵か、早めに清和会の5人衆を切れば支持率が上がると踏んだ岸田総理だが、その後 次々と他派閥、そして自分自身にも疑惑が出てきた。
総理の人事の基準が不明確と批判が高まっている。

総理は、東京地検特捜部が強制捜査に入る前の段階で、清和政策研究会(安倍派)所属の大臣・副大臣を事実上更迭したが、志帥会(二階派)が家宅捜索を受けても 小泉龍司法相には「職責を果たしてもらいたい」と続投させた。
小泉法相と自見英子地方創生相が慌てて二階派を離脱したが、全く筋が通る話ではない。

また、しんぶん赤旗が、新しく官房長官に就いた林芳正氏が、昨年1年間で8回の政治資金パーティを開催し 8468万円の収入を得ていたことを報じた。
林氏が外相就任中だったことから、「閣僚は大規模パーティを開かないとする『大臣規範』に抵触している」と指摘している。

総理自身も11月29日の参議院予算委員会で、昨年1年間で政治資金パーティを6回開催、計1億4730万円を集めていたことが明らかにされた。
「大臣規範」で大規模パーティを開かないとされている理由は、省庁トップの大臣からの呼び掛けを利害関係者は断ることができないからだ。
総理は「パーティーに分類されるが、勉強会だ」と訳の分からぬ屁理屈をこねていたが、大臣規範の趣旨からするとパーティも勉強会も同じである。

更に、総理が会長を務めていた 宏池会(岸田派)も政治資金パーティの収入のうち、2018~20年の3年間で2千万円余りを収支報告書に記載していなかったことをマスコミ各社が報じた。
そして、総理個人に、政党交付金が含まれる選挙資金 192万円を着服した疑惑があることを 週刊ポストが報じている。

繰り返すが、清和会の大臣・副大臣は 強制捜査前に更迭された。
岸田総理には、自身や林官房長官が居座ることができる理由を、分かるように説明してほしい。