伝統建築をめぐる冒険~古民家探訪シリーズ~横大路家 ② [2015年6月8日10:08更新]

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マッシブである。実にマッシブである。
横大路家の屋根が、である。
マッシブ(massive)とは、どっしりとした感じ、重量感のある様子、または塊り(かたまり)をさす外来語だ。
農家古民家や竪穴式住居に使われる茅葺屋根を表現するのにこれほど相応しい言葉はあるまい。
石場建ての基礎に刺さった柱と土壁の上にドッシリと乗っかったその姿は、観るものを魅了するとともに一種奇妙な満足感を与えもする。

そのマッシブな横大路家の茅葺の一部が今、少々ピンチを迎えている。
ピンチの原因は『鳥』だ。
鳥たちが茅葺屋根で羽根を休める様子は風情があるものだが、飛び去る際に萱を抜き取っていく輩が多いから始末が悪い。
当主によれば、カラスや鳩が自分たちの巣作りに使うためであろう、嬉々として萱を抜き去っていくのを何度も目撃したとの話で、憎らしい現行犯なのだが相手は鳥、たやすく捕まる訳もなく、こんもりとした茅葺は次第にやせていった。

このままでは雨漏りの心配さえある、ということでこの度部分補修工事を行う運びとなった。
国の重要文化財である横大路家住宅なれば、その費用は全額公費でまかなわれるかと思いきや、ご当主も一部負担を強いられるらしい。
なんともやるせない出費だが、鳥害ばかりでなく風雨等の経年劣化によるところもあり、「仕方ない」とのことだった。

ひじょうに無責任なことながら、個人的にはこの茅葺修復工事で往時のマッシブさを取り戻せるのならば嬉しい限りである。

 【古民家探訪シリーズ~エスアールエスタッケイ代表 住吉 英智】

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