好評につき~【口福探訪シリーズ;鮨職人②】 [2015年10月16日14:00更新]

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当然のことながら、その店では脱法ドラッグたるタバコは店内では決して吸わせない。冷蔵庫は氷式にて、ネタの旨みを閉じ込めている。先ずは赤酢の効いたそのシャリ。宮城県県央部の一部でしか獲れない至高のササニシキ。こいつは人肌温度が最も旨い。握った際に空気をまとい易いよう、通常であれば古米を配合させるところ、全粒新米でありながら粘りを押さえ、一粒一粒がハニカム模様に並ぶその姿は、シャリにも“踊り食い”があるのかと思えるほど口腔内で息を吹き返し、ネタ要らずの旨さ。更に、ネタによっては炙りで温度変化を喰らわせる。例えばそれは、皮の一部を切った上で軽くあぶり、身と皮との伸縮率を計算したうえで供される。前述のシャリと皮と身と三位一体の味わいに温度変化も楽しませる3D技法は、同業さえも唸らせるもの。極上の味と香りを漂わせるアナゴは瞬く間に口の中で蒸発。煮ツメに水あめ臭さが無かったことは驚き。鉄砲巻きの干ぴょうは栃木産の無漂白品。堅い食感は素晴らしい。ガリは生から作り、ワサビは静岡県御殿場山の真妻を使用。一般的には実生という品種のワサビで、一年で収穫可能だが、真妻は二年かかる。普通のワサビであれば夏場は特に、単なる緑色の大根おろし(笑)。水っぽくて風味も絡みも無いが、ここのワサビはネタのポテンシャルを顕在化させるもの。ネタ毎に仕事を施した純「江戸前寿司」は、巷の『江戸まね寿司』とは一線を画す。彼の技の前に、食した誰もが鮨の概念が根底から覆されるだろう。

それではお待ちかねの店名を以下に紹介しよう。

福岡市中央区高砂一丁目22-10 すし幸徳 531-2311(土鍋でシャリを炊くため、事前に要予約。夜の部は会員制) 店主、森下幸徳氏。まだ38歳であるが、キャリアは23年のベテラン。大野城市から満を持してこの2月に福岡進出。今の彼を超えるのは、もはや明日の彼しかいない。恐るべし力量。永年信じて通い詰めていた、貴方の行きつけへの評価が激変するであろうことには注意が必要である。

鳥貝|銚子産 生の鳥貝。殻むき。同時に紐も食した。

いわし|島根産_鰯の概念が根底から 覆った一貫。

こはだ|米酢ではなく、赤酢で〆た天草産。 塩は種子島産

アナゴ|対馬産_煮詰めがまた絶品! 因みに尻尾の方が運動量が多い為、肩の方よりも美味。

小アジ|金崎漁港産を軽く〆て。今が旬!

最後に、店構え|銀座の名店よりも確実に美味。その上、コスパは最高。