巧妙な「パクリ」の手口 [2008年5月13日11:51更新]

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数十年前には「パクリ」を生業とする、怪しげな商売人が福岡にも多くいた。この商売には相手を信用させるために使う「舞台装置」=事務所の開設に伴う什器備品や当座の運転資金など、時間と費用を要する。その割には儲けが少なかったのか、いつしか姿を消していた。



数年前のことになるが、ある運送会社が品物を運んだ後の帰りの便を利用し、産地から農産物を運ぶ商売を計画した。これを知ったある年老いたパクリ屋が、昔の経験を活かしてフットワークも軽く商品を騙し取った。これが、私の記憶するところの最後の「パクリ事件」だったと思う。

その時私は、運送会社の担当者に騙されていることを教えたのだが、パクリ屋という商売を知らない若者は、騙されたとは露ほども疑わず、集金が出来るものと最後まで信じていたのを思い出した。

 

何度か報じている中小企業倒産防止開発機構は、豪華な事務所や女子社員の教育など、かなりの資金を投入して「立派な舞台装置」を作り上げているようだ。

弁護士会が非弁活動だと訴えても、それに対抗する法的な理論武装もかなりしっかりしており、法律に詳しい人物がバックにいることをうかがわせる。

甘い文章を並べたダイレクトメールを資金繰りに苦しんでいる零細中小企業へ送付し、豪華な事務所で相談に来た経営者を信用させる。言葉巧みに手形用紙、通帳、銀行印まで「貸金庫」に預けさせ、マスターキーで金庫を開けては手形を勝手に振り出し、融通手形取り組みの仲介を行う。中の数枚を裏金融で割り引いては、自社の資金繰りに使っていた模様だ。

不渡りを起こし被害を被った経営者が抗議の電話をすれば、逃げずに堂々と電話に出て非を認めた上で謝罪する。さらに「被害の弁償を行う」との念書などを後日送り、事件になることを極力避けている。その手口は実に巧妙で、詐欺師ながらほめてやりたいほどである。 

その被害は福岡県内はもちろん、本紙が把握しているだけで大分、熊本など九州一円に広がっている。このまま放置すれば、いずれは被害者の中から自殺に追い込まれる者も出るかもしれない。

(J)