我が家には1枚の写真を、絵葉書にしたものが飾ってあるが、それが殿敷侃(とのしき ただし)氏との出会いのキッカケになった作品だ。
日本海の透き通るような青空に、排気ガスで枯れた松が天に向ってそびえ立ち、その松の枝に古びた黒いタイヤが掛けてあり、吸い込まれそうな空に毅然と立っている。
枯れ松と古タイヤを組み合わせた、色の対比と構図が素晴らしく、自分の目で見たくなり、山口県長門市に車を走らせた。
その写真も同氏の作品集、「逆流する現実」の本に収録されているが、あれから少なくとも20年は経過しており、作品となった長門市の松も、朽ち果てていることだろう。
殿敷侃氏が制作した現代アートの作品は、展示されたり、現存しているものが少なく、今となっては作品集に納められたものが大部分で、貴重な本になってきた。
今回の展覧会では、この作品集を保管してきた親族の好意により、広島市現代美術館にて先着で何名かの希望者に販売するように聞いており、作品集を購入すれば、殿敷侃氏がより身近に思えるのではなかろうか。
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