弊社記事「シャンシャンで終われない都市計画審議会(2021年2月1日)」で報じた、広川IC(広川町)から道の駅たちばな(八女市)までを結ぶ国道3号バイパス計画は、昨年2月の福岡県都市計画審議会で委員から厳しい物言いがついた後、修正案も中止の表明も出ないまま放置状態が続いている。
国の直轄事業が、県の段階で1年3ヵ月もストップしたままというのは前代未聞、県の都市計画課に確認しても、「現状何も動きがありません」としか回答がない。
このバイパス計画が国交省のテーブルに初めて上がったのが平成30年11月だったが、その1年前の平成29年10月の衆院選の演説で「古賀先生がバイパスを持って来てくれた」と現職議員が叫んだのを多くの市民が聞いている。
また、国が計画を承認しルート3案を提示したのが令和元年、最終的に山側のルートに決まったのが令和2年、しかし、平成31年の町長選の集会で「上広川小学校の上を通して学校を立て替える」と現職町長が語ったのを 町民がしっかり覚えている。
政治家というのは自身の力を誇示したいのか、選挙の時には水面下で決まっている決定事項を つい 口を滑らしてしまう傾向にある様だ。
宣言したことがストップしていては、面目丸つぶれだろう。
更に、広川町の業者がルート上の土地を先行取得、八女市でもルート付近の広大な土地を買収し工業団地用に造成を始めるなど、ルートが決まる随分前から 動きが出ていたことが確認されている。
一部の民間人に 機密情報が流れていたことが窺われ、利権の温床になっているとの指摘もある。
過去の記事は 歪んだ3号線バイパス(八女市編①~⑰・広川町編①~⑨)をご覧いただきたい。
利権絡みで 出来レースを裏付ける材料が満載のバイパス計画、そう簡単に前に進められないのではなかろうか。
国主体の計画が県の段階でストップしている以上、いつまでも放置という訳にはいかないだろう。
こうした中、5月27日に「一般国道3号(広川~八女)バイパス整備促進協議会」、いわゆる期成会の第1回総会が八女市で開催されたという情報が入った。
国道の新設を要望する関係自治体や住民らは 期成会を作るのが慣例となっており、予算措置を行う国(3分の2)や県(3分の1)に要望活動を行う。
これまで このバイパス計画に 期成会もなかったというから驚きであるが、その背景には 地元の元代議士で国交大臣、自民党幹事長等を歴任した古賀誠氏(81)の存在がある。
現在も古賀氏は、道路行政に絶大な影響力を持つと言われている「全国道路利用者会議」の会長を務めており、広川町の町長が「古賀先生に頼めばいい」と豪語していたという話もある。
今回、古賀氏が動いたかどうかは不明だが、現状 膠着状態となっていることから、バイパス建設を急ぐグループは 期成会を作らざるを得なかったのだろう。
バイパス整備には 600億円(予定では300億円、自民某代議士が土建業者に吹聴しているのが 600億円)もの費用が投入される。
このバイパス整備に着手すると、本当に必要な国道3号の整備は後回しになるということを八女市・広川町の住民は認識すべきだ。
久留米市を通勤・通学圏とする八女市・広川町の住民からは、むしろ上津町~広川町間の国道3号の渋滞緩和、バイパス整備を望む声が圧倒的に多い。
また、広川IC~八女(立花町)間はの渋滞緩和を目的に、現在県道82号(久留米立花線)が整備中で、並行したルートに 国・県の予算が投入されることも忘れてはならない。
前述の様に、利権絡みで出来レースと判明しているこの計画が前に進むことはないと信じているが、期成会発足をきっかけに何らかの動きが出て来るかもしれないので 今後も注視していきたい。
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どうなる「国道3号バイパス広川~八女」
歪んだ3号線広川~八女バイパス「広川町編⑤」
TY氏が動き出した平成29年、もう一人動いた人物がいた。
製材業を経営するW氏であるが、平成29年7月31日付で土地6筆約3785㎡(下図の緑色の2ヶ所)を購入、その3年後にバイパスが通ることが決まった。
この場所は農地で、農業委員会の許可を得て購入している。
農地の売買は営農意欲の高い人に許されるのが前提で、広川町農業委員会の内規では、「所有権移転後3年間は農業を行う」とされているが、現地(写真)を見る限りW氏にそのような意欲はなさそうだ。
土地を売った方の話によると、「相続した土地だが、遠方に住んでいて管理できないので売却した」ということだった。
購入して3年でバイパスが通る、W氏は買い物上手の様だ。
歪んだ3号線広川~八女バイパス「広川町編④」
ところで、広川ICの供用開始が平成10年(1998年)、もう20年以上も前だ。
IC出口から3号線を突っ切って東に約1.8km、県道82号(久留米立花線)に突き当った場所、利便性の高い地点で、実際に県道84号(三潴上陽線)のバイパスの話もあったようだ。
今回、国道3号線のバイパスの起点になることがほぼ決定しているが、TY氏の「目の付け所」はさすがだったと言える。
二人の地権者の話を合わせると、TY氏が国道3号線のバイパスの話が出てくるずっと前から、バイパスが走ることを確信しており、計画が確実になればTY氏が法定手続きを代行し、開発行為に入るつもりだったと思われる。
問題は今回の開発行為を始めた時期だ。
平成28年11月、一般国道3号線改良促進期成会(久留米市・鳥栖市・小郡市・八女市・広川町・基山町)の要望書が国に提出されたが、この年までは、「未整備区間の整備(久留米市・広川町・八女市)久留米市上津町~八女市立花町」と記述されている。
だが、翌29年に、国交省福岡国道事務所が八女市と広川町のバイパスで検討するという考え方を取りまとめており、同年11月に提出された同要望書では、久留米市が分離され、バイパス新設(広川・八女東部地域)という記述に変更されている。
そして、農地を平地にする申請書が出され、開発行為の手続きが始まったのが同年9月20日のことだ。
このタイミング、偶然と言えるだろうか。
八女市編でお伝えしたように、T氏やJ氏が新会社を作って土地開発に動き出す時期とほぼ一致する。
バイパスの話は漏れたら大変なことになり、自治体の幹部と所管課の担当職員以外は知り得ない情報だ。
TY氏が何らかの方法で情報を掴んだと考えて間違いないだろう。
ー 続く ー
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歪んだ3号線広川~八女バイパス「広川町編③」
今回開発行為が行なわれた場所の地権者お二人から話を伺った。
一人は80歳は過ぎておられるようにお見受けしたが、
「あの場所は、土採取業者の営業が来て土砂を取りたいと言ってきた。平地になったら梨の栽培を始めたい。土砂の費用はもらってない。」
とのことだった。
ご高齢とは言え、農業に対する意欲は感じられた。
造成費用は全体で約1200万円とされているが、実際は土採取業者に無料で土砂を提供することで造成費を相殺、「Win Win」の取り引きが成立したようだ。
もう一人の地権者(久留米市在住)の方は、電話での取材となった。
「あそこの土地を、バイパスが走るというのはもう随分昔からの話、当時不動産会社の社長(現在は会長)TYさんがまとめて計画している。あの場所を何とかするということで、地権者みんなで集まって印鑑を押して任せている。」
と、TY氏が絵を描いていたことが判った。
計画では梅の木15本を植えることになっているので尋ねたところ、
「それもどうなるか分からない。何年か前に、どっかの差し金で、農地がどうのこうのという話になった。何が目的で何がどうなっているのか自分は分からない。」
と、ご自分で農業を始める気はないらしい。
農地改良の目的で開発行為を行なった場所は、その後農業をすることが前提だが、農業を行う期間の法的縛りはないため、地権者が望めば農地を宅地に転用することは手続き上可能という。
デベロッパーが宅地開発する際によく使う手ということで、近い将来、地権者から宅地への農地転用の申請の書類が提出されることだろう。
ー 続く ー
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歪んだ3号線広川~八女バイパス「広川町編①」
平成31年4月に行われた統一地方選挙、広川町では32年ぶりとなる町長選挙が行われた。
1期目から3期連続無投票で当選を続けていた現職の渡邉元喜町長(71)であったが、元航空自衛官将補の竹下英治氏他1名が立候補、厳しい選挙が予想される中、渡邉陣営は必死に支持拡大を訴えた。
その結果、農業団体から土木業界まで幅広い支持を得た渡邉氏が勝利を収めた。
同町で建設会社を経営するTY氏も渡邉氏を積極的に支援した一人、選挙前にTY氏の夫人が町長の引き回しをしたことで、地元では話題になっていた。
TY氏が経営する建設会社の売上は、毎期2億円台から7億円台と大口案件の有無で波があるが、同町では滅多に出ない1億円以上の町発注建設工事に過去10年の間に、JVで4回挑んで見事に4回落札と、強運ぶりを発揮している。
ところで、そのTY氏の会社から直線距離で約200m東に進んだところが、「八女~広川3号線バイパス」の起点(予定)である。
九州自動車道広川インターチェンジから国道3号を直進し、県道82号久留米立花線(通称藤山線)に突き当たったT字路の箇所である。
そのT字路に面した土地は、以前は小高い丘(地目は田・山林)で草木が生い茂っていたが、平成29年9月から大規模な造成が始まった。
3年前の航空写真はこちら
平成29年というと、「歪んだ3号線広川~八女バイパス『八女市編』」で伝えたように、久留米市を分離して広川から八女のバイパスという考え方が取りまとめられた年である。
そして、国交省が八女市・広川町に詳細ルートを示したのが今年6月、造成のスピードにギアが入った。
下は、今年10月2日と12月7日に撮った写真だが、いかに急いだかが見て取れる。
その土地について取材していくうちに、興味深い話を耳にした。
― 続く ―
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空想物語「八芽市の鷹羽氏」
舞台はお茶の産地として知られる八芽市、主人公は「鷹羽氏」、凄腕の不動産ブローカーだ。
八芽市の北側には弘川町が隣接、さらに北に行くと中核都市の久留目市がある。
幹線道路となる国道は2車線で、慢性的な渋滞区間となっている。
通勤通学や流通に時間が掛かり、かなりの経済的な損失が生じていることから、長年に亘り住民や商工関係者からは早期のバイパス建設の要望がなされていたが、事業化に向けて動き出すことはなかった。
ところで、今から約30年前、八芽市の彩藤市長(1977年~1993年)は、企業誘致を進めるために八芽市翻地区の山林や農地を開発する「八芽東部開発構想」を掲げた。
同構想を受け、鷹羽氏は山林や農地の買収、及び工場、産業廃棄物処理施設等の誘致を始め、着実に実現させていく。
しかし、彩藤市長退任後、乃田市長(1993年~2008年)になって同構想は立ち消えになる。
一方その頃、1994年に総事業費約42億円で「八芽東部土地改良事業」が始まったが、鷹羽氏は土地の売買交渉に参加、一部地権者や行政手続きで難航するも、見田村県議(当時)の献身的な力添えもあって、同事業は2004年に無事完了した。
見田村氏に恩義を感じた土地改良事業組合理事長は、以前から万年金欠病で名高い見田村氏に合計700万円を貸し出した。
2007年に理事長は亡くなり、見田村氏は借りた700万円を返済すべきところだったが、理事長と親しかった鷹羽氏が返済するは必要ないと進言し、返済されないまま現在に至っている。
2008年には、乃田市長の国政進出を受けて、見田村氏が県議を辞し市長選に出馬、初当選を果たす。
見田村市長の借金未返済の事実を知る鷹羽氏は、過去に「八芽東部開発構想」で買収した土地が無駄にならないよう、地元の翻地区にバイパスを走らせるよう市長に強く求めた。
国道の渋滞解消のために県道の整備が行なわれているところで、バイパスの必要性は全くなかったが、見田村市長は道路族の地元国会議員に頼み込んで了解をもらった。
2010年に八芽市は、鷹羽氏の要望に沿って、弘川町から翻地区を経由して橘までのルートを作成、トップシークレットとされた。
弘川町から橘、つまりこの時点で、最も渋滞の激しい弘川町から久留目市方面は分離されていたが、八芽市の独断で分離できるはずはなく、地元国会議員と国が同意の上だったと思われる。
翻地区の市道整備を強引に実現させるために、時には職員を恫喝するなどエスカレートしていった。
終いには、鷹羽氏の対応を続けてきた市の幹部が、恐怖と心労で年度途中に退職、その後も鷹羽氏から自宅にまで電話が掛かってきたことから、東南アジアに移住を余儀なくされてしまった。
上司が部下を守れない組織では、職員の士気は下がる一方、まさに「やりっぱなし」を地で行く鷹羽氏は、誰も手を付けられない状況を築き上げたのである。
2013年、国が正式に、但し、水面下で動き出した。
久留目市・八芽市・弘川町の担当職員と問題点の整理から始め、2017年に「久留目市を分離して八芽市と弘川町のバイパスで検討する」という考え方を取りまとめる。
このことを知っていたのは、市の幹部と一部の職員だけだったが、さすが情報通の鷹羽氏、部外秘の情報をやすやす入手し、3号線バイパスが予算化されることを確認、そこから素早く行動に打って出た。
長年、市役所内部から鷹羽氏の支援を続けてきた職員を2018年3月に早期退職させ、5月に八芽北部開発㈱を設立、6月にはホームページの不動産物件情報に「八芽北部工業団地」と題し、翻地区の山林4.3haを売却する旨を記載した。
その後は積極的に用地買収を進め、農業委員会に「農地転用の許可申請」の手続きを踏むことなく、今でも農地の大規模な造成に取り組んでいる。
国は道路建設の手順に従って、自治体や住民の意見聴取を行う手続を進め、2020年5月、3案の中から山側の帯を通るルートを決めたが、見事に鷹羽氏が造成中の翻地区を通ることになった。
来年度中には事業化が決定し、鷹羽氏の懐には大金が転がって来ることが確実である。
「あの道路は俺が引っ張ってきた。」
近しい人に自慢げに話す鷹羽氏、晩年に夢が叶ってハッピーエンド、凄腕ブローカー人生に1ミリの悔いも残していない。
― おしまい ―
歪んだ3号線広川~八女バイパス「八女市編 ⑫」
バイパス情報をいち早く掴み、共有していたT氏とU氏の武勇伝をもう少し。
T氏は、このシリーズ①②で紹介した土地改良区事業をはじめ、これまで数多くの土地取引に関わり、案件をまとめ上げてきた。
その間、工場や介護施設、産廃施設の誘致を成功させ、ある意味、雇用や税収を増やした凄腕のブローカーだ。
しかし、それらが法的手続きや手順を無視した強引な手法によるもので、その過程において地域住民とトラブルになったことも多く、市や県の職員が対応に頭を痛めてきたのも事実である。
現在造成中の場所から約500m離れた地点にT氏が所有する山林があり、大きく削られ土砂の採掘が行なわれているが、林地開発許可制度では「隣り合って開発したり、はじめは1ヘクタール以下でも将来的に1ヘクタールをこえて開発する場合は許可を要する」とされている。
監督官庁の県に確認したところT氏は林地開発の許可を受けておらず、2ヶ月程前に行政指導を行ったという。
また、「市道」からT氏宅までの「私道」約130mの区間が、「市道」になった話も興味深い。
往来の市道から、脇に30m入ったところに、「〇〇㈱(工場名) ↑100m これより関係者以外立入禁止」という立札があり、普通に読むとその先は工場敷地内と思う。
しかし、そこから先100mは市道だ。
平成9年(1997年)、八女市は約130mを地権者から寄付を受けて公衆用道路(市道)とした。
市は道路を所有すると維持管理のコストがかかるため、市道として認定するには基準をクリアする必要があり、一般的に、①市道間を連絡するもの、②国道、県道、他市町村道に連絡するもの、③主要地と連絡するもの、④都市計画上必要と認めたもの、のいずれかに該当すれば、購入または寄付を受けて用地を取得し、市道認定という流れになる。
その立札から100m先には工場とT氏の私邸があり、その先に住宅は1軒もない。
市が購入する前までは、地目は「田」となっており、工場関係者とT氏は、田の上に作った約130mの私道を通って市道に出ていた。
つまり、田んぼの真ん中に工場の入口と私邸があったことになる。
地権者(T氏とは別の人物)から、その私道を寄付して市道にするよう申し出があったということだが、市道認定基準に合致するものは見当たらない。
ちなみに、工場が現在地に作られたのが平成7年11月、T氏が自宅の所有権を取得したのが同8年5月、八女市が市道に認定したのが同9年12月となっている。
現在、この公衆用道路を使用しているのは1工場と1軒の家だけであるが、つい4年程前も、市は数百万円かけてこの区間の舗装工事をしたばかりだ。
これらはほんの一例だが、他にもT氏が17年前に誘致してきた産業廃棄物処理施設に係る問題は、未だに解決しておらず、住民を苦しませている。
とにかく「やりっぱなし」の人物像が浮かぶが、T氏は勉強熱心で法律に明るく、また、行政内部にも人脈を持ち、様々な方法で上手く使うツボを心得ている様だ。
もちろん、三田村市長とも旧知の仲、腐れ縁と呼ぶ人もいる。
先週弊社に届いたT氏を知る方からの手紙には、これまでT氏の行為に近隣住民が迷惑してきたこと、T氏自身の口から「行政は自分の言う通りに動く」という言葉が出ることなどが綴られていた。
ー 続く ー
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歪んだ3号線広川~八女バイパス「八女市編 ⑪」
平成28年(2016年)5月、八女市の用地買収を巡る贈賄申し込みの疑いで、元立花町議のU氏とその親族が逮捕され、翌年12月にU氏には懲役2年保護観察付き執行猶予4年の判決が言い渡されている。
同27年(2015年)12月、U氏の親族が市役所内で市幹部K氏に現金200万円を渡そうとしたという、ある意味 昭和なニュースだ。
T氏とU氏、八女市にはもう1人、行政を歪める「ぶっ飛んだ」人物がいると聞くが、本題に戻る。
そのU氏からバイパス建設で土地の先行取得の誘いを受けたことがある、という貴重な情報を八女市在住のA氏から頂いた。
それは8年前、平成24年(2012年)頃、国交省福岡国道事務所が動き出す直前のことだ。
U氏の話は、
「久留米市国分に陸上自衛隊久留米駐屯地があるが、国道3号線の八女市方面が慢性的に渋滞しており、有事の際に駐屯地からのアクセスは国防上の課題がある。そのため、久留米市国分から八女市にかけてバイパスを作ることが決まった。既にルートが決まっている。土地を買わないか。」
という内容だった。
なんと、A氏の部屋のホワイトボードには、その時のメモが今でも記されていた。
そこには、
藤山線バイパス 広川信号→ 忠見
一念寺 → 山内まごころ、6~7年のうち
国防省、緊急整備事業、図面
極小数者しか知らない、広川→立花町
と書かれている。
一念寺は八女市豊福地区、山内まごころとはJA八女葬祭センターのことで同市山内地区、まさに今回のルートの脇に存在しているし、時期的にも符合する。
U氏が掴んだ情報は正確だったと言えるのではなかろうか。
A氏はこの誘いには乗らなかったそうだが、「極小数者」の情報を得た者のうち、実際に行動に移した者もいる。
そのうちの1人がT氏、U氏と昵懇の中というのは周知の事実、情報を共有していたことは間違いないだろう。
ー 続く ー
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歪んだ3号線広川~八女バイパス「八女市編 ⑩」
下の図は、国が示した広川町の起点から八女市立花の終点までのルートで、浸水想定地域、土砂災害想定地域、矢部川などの地形を考慮しながら引かれている。
だが、過度の蛇行を見る限り、それだけかと勘ぐりたくなる。
このルート、広川町については「広川町編」で後述するが、「敢えて上広川小学校を壊すこと」、そして「T氏の売却物件情報の真ん中を通ること」、この2つが必須条件として線引きされた可能性が高いという関係者の声もある。
現在、福岡県が県道久留米立花線を整備中、国が示したバイパス案はそれより山側を並行し、しかも蛇行して走る予定で、費用対効果に疑問が残る。
ちなみに、バイパスの建設費の負担割合は国が3分の2,県が3分の1で、総工費300億円として100億円は県の負担、県道久留米立花線の整備費合わせて二重の支出となる。
県財政がひっ迫している中で、果たして県議会が同意するのかも疑問だ。
バイパスらしく、蛇行の少ない無駄のない、しかもより山側に近い曲線を描くと下図(青線)のようになる。
もちろん、諸条件はあってこの通りにはいかないだろうが、少なくとも上広川小学校とT氏の売り物件情報の円上を通る必要はないのではなかろうか。
上広川小学校とT氏の売り物件情報の円上を通ることで、煽りを食うのが八女市忠見・大籠地区の住民だ。
ルートは忠見地区の見崎中学校付近で急にカーブする。
広川町の起点からここまでは、山側の民家の少ないルートだが、なぜか忠見地区から民家の上を通過することになる。
少なくとも20軒以上の家を壊すことになり、移転補償のコストや、立ち退き拒否で工程が思った通りに進まない可能性も十分考えられる。
※国が示したルートと住宅地図を参考に作成した図、青色は民家
航空写真と住宅地図で確認すると、もう少し山側を走ると民家の通過を最小限に抑えるルートも十分考えられる。
本来であれば、移転しなくてもよかった住民の方が、ルートが歪められたことで移転を余儀なくされようとしている。
突然降って沸いたバイパス建設に、忠見・大籠地区の住民の多くから悲鳴が上がっている。
ー 続く ー
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歪んだ3号線広川~八女バイパス「八女市編 ⑨」
八女市農業委員会事務局から、農地から農地への造成の場合、正確には都市計画法上の開発許可ではなく、農地法上の「農地造成の一時転用」の許可を得る必要があると教えて頂いた。
その手続は、工事着工前までに農業委員会へ「農地造成届出書」が必要で、同委員会と関係課による確認後の許可になる。
提出書類には、造成完了後は必ず農地として利用する旨の誓約書や、造成図面、土砂の搬出入経路図、それに隣接農地所有者等の同意書などがあり、ハードルが高い。
T氏の会社がバイパス予定地で大規模な農地の造成中というのは前述の通りだが、実はその周辺の農地について数年前から造成されていることが窺われる。
全体で1.5万㎡以上の農地だが、遠目から土色一色で何かが栽培されているようには見えない。
同委員会の事務局では今後の対応を協議中とのことだが、コンクリートを入れている場合は現状に復帰させる等の指導を行っていくとのことだ。
2018年(平成30年)5月に設立されたT氏の会社で当初代表取締役だったJ氏は、2013年(平成25年)~ 2014年(平成26年)頃は、八女市農業委員会の事務局に在籍していた。
当時、J氏がT氏に対し農業委員会の手続きで便宜を図っていた疑いがあるという情報も聞いたが、そう言われればT氏が農地の造成を始めた時期と符合するかもしれない。
J氏はその後、別の課の課長になるが、2018年(平成30年)3月、定年前に早期退職をした。
その際、「バイパスの仕事をする」と話していたということを、元同僚から聞くことができた。
市役所内で、バイパスの話は初耳だったので驚いたそうだ。
退職して2ヵ月後、新会社の社長の名刺を持って挨拶に回っていたという。
T氏とJ氏が遅くともその時点で、(実際にはもっと早い段階で)バイパスが通るという確証を得ていて、行動に出たと考えるのが自然だろう。
― 続く ―
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歪んだ3号線広川~八女バイパス「八女市編 ⑧」
11月8日投開票の八女市長選挙が告示され、熱戦の火蓋が切られた。
広大な面積の中山間地域を擁する八女市は、高齢化が進み多くの課題を抱えている。
過疎化対策、経済振興策、防災ほか、新病院建設や庁舎の建て替え、そして3号線バイパスについて、候補者それぞれ主張が異なる。
八女市の未来が大きく変わってくるので、投票の行方に注目したい。
3号線バイパスは、計画段階に入っておりもう止めることはできないと思われる。
当然だが、必要な道路なら建設するべきだ。
300億円と言われている建設費、ある国会議員が600億円と言ったという話もある。
地元建設業はしばらく仕事には困らないだろうし、公共事業で雇用が増え消費が増えれば、それなりの経済効果が得られる。
ただし、「未曾有」の自然災害が毎年のように起こり、国土強靭化を求める声が大きい中で限られた国家予算をここに充てていいのか、少し立ち止まって考えるべきではなかろうか。
このバイパスが、「奥八女(黒木町・上陽町・星野村・矢部村)の発展のために必要」と声高に話す政治家がいるそうだが、それは少しピントがずれた意見だ。
あくまで3号線の渋滞解消が目的、百歩譲って過疎化対策というなら、もっと山側のルートを主張するべきでは?
3号線の渋滞解消を考えると、現在の広川町から八女市立花のルートより、むしろ久留米市から広川町を優先するべきという声が大きい。
また、3号線では「道の駅たちばな」から熊本方面、辺春付近は事故が多発し一日中渋滞することが多く、むしろそこにバイパスを付けてほしいとの声も聞いた。
それともうひとつ、道路建設は大きな利権を生む。
情報をいち早く掴んだ一部の者だけが、得をすることがあってはならない。
必要な場所に 「脱利権」、公正に作る道路なら賛成だ。
ー 続く ー
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躓いた八女市・前古賀工業団地計画 ー 前編 ー
「歪んだ3号線広川~八女バイパス『八女市編』」というタイトルで、私的な工業団地にまつわる話の連載中であるが、八女市が正式に進めている工業団地について取材した内容を紹介したい。
市が平成28年度から進めている前古賀工業団地計画に、地権者の一部が反発し膠着状態に陥っているという。
場所は八女インター近くの㈱明治九州工場に隣接する11.2haのまとまった農地だ。
同計画は過疎化が進み、地元で雇用を創出し人口流出に歯止めをかけたいという願いから始まったもので、総事業費18億円、八女市土地開発公社が先行取得後造成して分譲する予定でスタートした。
ところが、手順を誤った様だ。
工場立地は通常、農地転用許可や開発行為許可の申請が終わった後、土地の売買契約という流れだが、少なくとも許可申請前に全地権者の同意を取り付けておく必要がある。
現在、約90軒の地権者と同意を取り付け、先行して前渡金40%の支払いを済ませているが、2軒の地権者との交渉が決裂した状況で、1年以上も工程に遅れが出ているという。
公社によると、地権者の代理人が「法令に反する条件」を出してきたため、それ以降交渉がストップしているとの説明だった。
その地権者の代理人に話を聞いた。
「30年前から自分たちが地権者をまとめて工場を誘致する計画をしてきたが、市が後から来て横取りした。公社には伐採や造成の工事をやらせてもらうことが条件と伝えたら、条件を出すなら買えないと言われた。それから1年半こちらに何も連絡がない。」と、ボールは公社側にあると強調した。
確かに、地権者との交渉を1年以上も中断しているのは不可解だ。
― 続く ―
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歪んだ3号線広川~八女バイパス「八女市編 ⑦」
新設道路の計画は、内容が合理的で計画策定のプロセスが適切であることが求められる。
そのため、構想段階から事業化まで、様々な形で委員会や検討会、住民の意見聴取等が盛り込まれ、透明性や公正性において、クレームが出ないようにする必要がある。
しかし、道路行政に詳しい某市役所OBから、「道路建設をするかしないかは政治が決める。計画が表に出た時は全て終わっていて、その前にルートは決まっている。役所は後付けで文句の出ないプロセス作りに奔走するだけ。」という話を聞いた。
八女市では、上陽町・黒木町・立花町・矢部村・星野村との合併後、平成22年(2010年)に「第4次八女市総合計画」が策定され、その中に「国道3号線のバイパスの整備」という言葉がある。
もともとバイパス整備の構想はあったもので、道路建設に関係のある業界にとって、いつ実現に向けて動き出すかが最大の関心事で、政治家や行政関係者からの情報収集に努めていたことと思われる。
役所が動いたのが平成25年(2013年)10月、国交省福岡国道事務所が 久留米市・八女市、広川町の担当者から個別にヒアリングを始め、課題を整理するという作業を始めた。
この段階で、バイパス建設について、政治的にゴーサインが出ていたと想像される。
ただこの動きは役所の内部の人間しか知らないことだ。
仮に外に漏れれば、何かしら工作を始める輩が出てくることが考えられる。
少なくとも八女市に限っては、そのようなことは決してないと信じたい。
― 続く ―
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歪んだ3号線広川~八女バイパス「八女市編 ⑤」
下の図の中で、黒の円はT氏の不動産会社が2018年6月に物件情報として売り出している範囲を示している。
弊社の調査で、バイパスルート案が示された付近(黄色で囲った範囲)の一部をT氏が所有していることが判った。
注目すべきは緑色の部分の一部を、昨年から今年にかけて数人の地権者から購入していることだ。
中には、国がルート案を示した後、今年6月の売買もあった。
売却した地権者の1人は、「地区の世話役が家に来て、周りの地権者もT氏に売却しているから、あなたも売らんねと勧められた。バイパスが通ることは知らなかった。」と話す。
現在、T氏の会社名が記された重機が、ここ1年で取得した土地(緑色の箇所)の整地を進めている。
地元の人に聞いたところ、以前は緑色の部分はブドウやキウイ畑だったが、昨年から伐採して野焼き、そして整地が始まったということだ。
まるで工場でも誘致するかのような造成に見えるが、現状では登記上、地目が「田」や「畑」となっている。
整地後、一旦は野菜を栽培し、時期を見計らい農地転用の申請をして、最終的に工場用地として売却する計画と考えられ、当たっていればT氏の事業意欲は相当旺盛だ。
問題はその規模である。
農地の生産性向上を図る目的での「かさ上げ」や「畑に変更」等の形状変更であれば法的な縛りはないが、ここの場合は5000㎡以上の面積で、切土・盛土を含む土地の形状を含む都市計画法上の開発行為に該当しており、農業委員会を通じて県から許可を得る必要がある。
ところが、八女市農業委員会に確認したところ、議題に上がったことがないということが判った。
つまり、県の開発許可を得ずに行為に及んでいる法令違反状態、しかも主体が不動産会社とあっては確信犯と言えるだろう。
一方で、これほど堂々とした開発行為に地元の農業委員が気づかないはずはない。
これが罷り通れば、八女市では農地にビルを建てても許されるだろう。
ただの怠慢なのか、祟りが怖くて触らないのか、あるいは、黙認するよう誰からか指示があったのか、いずれの理由にせよ、農業委員会法に定められた職責を果たしているとはとても言い難い状況に陥っている。
ー 続く ー
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歪んだ3号線広川~八女バイパス「八女市編 ④」
下は、国が示した図面(バイパスルート案)である。
住民説明会等では公表してはいるものの、資料として配布されておらず、現時点においてインターネット上にも公開はしていない。
八女市北部の山林から南下して、道の駅たちばな付近で国道3号線に合流するコースであるが、国は地形等を考慮し、コンサル会社に委託して図面(バイパスルート案)を作成したとしている。
関係自治体と地域の事情等の調整はするが、細かい要望までは聞かないのが建前だ。
このルートを見て、新設のバイパスという割にはカーブが多く蛇行しており、中央部では民家の多い平地を通過することから、立ち退き・移転交渉などの金銭的、時間的な行政の負担も大きいのでは、というのが率直な感想である。
国が作成したルートなので、取りあえずこれがベストということで受け止めておく。
しかし、T氏の不動産会社が2年前から「バイパス着工予定」としていた通りに、国のバイパスルート案が示されたということで、裏があるかどうか調べてみる価値はある。
現地で取材を進めていくうちに、不動産会社が示した範囲の中に、興味深い点が出てきた。
ー 続く ー
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歪んだ3号線広川~八女バイパス「八女市編 ③」
現在もT氏は不動産業に精力的に打ち込んでいるようだが、2年前のネット上の売却物件情報が未来を言い当てており、憶測を呼んでいる。
情報の日付は2018年6月27日、内容は次の通り。
「八女北部工業団地」というタイトルがあるが、八女市役所に確認したが、現在そういった構想はないとのこと、おそらくT氏が命名したものと思われる。
国がこの山側ルートに決定したのが今年5月、翌6月に図面(バイパスルート案)が示された。
区間の起点が『陸上自衛隊久留米駐屯地』こそ違え、この物件情報で示された地域の真ん中を見事に通過している。
「国道3号線バイパスの開通(来年着工予定)」という記述から、T氏は少なくとも2年前の 2018年6月には、バイパスがこの周辺を通過することを確信していたと考えられる。
念のため、八女市建設課にバイパスのルート案は以前から出来ていたのか問い合わせたところ、きっぱりと否定された。
※ 不動産会社の物件情報に示された地図(バイパス案は、円の中心を通過)
ー 続く ー
歪んだ3号線広川~八女バイパス「八女市編 ②」
バイパスの話から、移転立ち退きの話になって、過去の土地改良区の話題になったとき、Aさんは次のように語った。
「N氏は既に亡くなったが、男気のある方で、『土地改良事業には、多くの地権者がいて困難を極めるが、理事長として何としても完成させたい』と、常々話しておられた。県議にお金を渡したというのはその通り。自分が聞いているのは700万円。あと300万円は自分の財布から出したのかな?」
土地改良事業においては一定の基準で宅地へ転用は認められており、宅地にしたことそのものは法令違反ではない。
しかし、土地改良区の収益の中から県議にお金が渡ったことが事実であれば、そこは問題があったと言える。
告発文には、参考人として2人の名前が記されている。
1人は土地改良区事務局のE氏(故人)、もう1人は「土地を買ったことは事実」と認めたとされる不動産会社社長T氏だ。
なぜ、本稿でこの告発文について紹介したかというと、バイパス計画の取材を進めていくうちに、不動産会社社長T氏の名前が浮上してきたからである。
T氏と元県議のM氏は、土地改良事業以降も続いている様だが、力関係ではT氏が強いという逸話を地元の人から聞いた。
18年程前に山里に突然、食品残渣等の発酵処理をする産廃中間処理施設ができ、そこから出る悪臭に周辺住民は悩まされてきたが、問題が起きた当初はM県議が率先して解決に取り組むことを住民の前で明言していた。
それを知ったT氏が激怒、なぜなら同施設を誘致したのはT氏だったからだ。
その後M県議は市議(故人)に連れ添われてT氏を訪ね謝罪、それからはこの問題からは手を引いたという。
ー 続く ー