宗像でも頓挫 テーマパーク計画 株主総会で「虚偽報告」 [2008年8月6日08:54更新]

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 (08年7月号掲載)

日トレ社があるビッグエア福岡日本トレイド(博多区、山崎和則社長)が進めているとされるパラマウントテーマパーク計画。久山町で頓挫した後「宗像市で土地を確保した」との"怪情報"が飛び交っていることを本紙2月号などで報じた。

6月下旬に開催された株主総会で山崎社長は、宗像市での計画について初めて公の場で言及。「土地所有者と売却で基本合意した」と報告した。

ところが所有者の企業は「条件が整わないために白紙撤回した」と話し、山崎社長の説明が「虚偽」であることが明らかに。

日トレ社、山崎氏はいつまでこのような嘘をつき続けるのか。
(写真=日トレ社があるビッグエア福岡)



 「九州縦貫道に新IC」

6月27日に開かれた日トレ社の株主総会。集まった株主を前に山崎社長は「計画は宗像市で進めることになった」と自信たっぷりに語ったという。

株主によると、総会には40人あまりが出席。山崎社長は、地権者との間で交わされたという土地売買に関した「証明書」と称する書類をスライドで紹介。

「宗像市の土地約40万坪を坪あたり約4000円で購入する。ここにテーマパークができる」

「事業費はパラマウントが全額払う」

「九州縦貫道に新たにインターチェンジを設ける。これが35億円くらいかかる」

「土地取得は久山町より簡単だった」

-などと話したという。

「ほとんどの株主は『おおそうか、頑張ってくれ』みたいな感じで。特段のトラブルもなく、総会はシャンシャンで終わりましたよ」(株主)。 

所有者は「白紙撤回」

ところが、土地の所有者である北九州市の企業は本紙取材に対し「土地を買いたいという申し出があったのは本当だが、その後の交渉で日トレ社が約束を守らないので、先月白紙撤回した」と話す。

説明によると、この企業は日トレ社関係者を通じて宗像市北部に所有する土地の売却を持ち掛けられた。

今年5月末までに現地調査の結果を示すことなどを条件に提示したが、6月に入っても調査は実施されなかった。

そのため企業側は協議を白紙とする申し入れ書を同月、日トレ社に送ったという。 

「土地取得で基本合意した」「久山より簡単」という株主への説明とは根本的に食い違っている。現状では山崎氏の発言はすべて嘘だったと断ずるほかない。

 「書かないでほしい」 本紙への申し入れ

昨年11月、同社が当初計画を進めていた久山町の地権者会は「山崎氏を信用できない」などとして解散を決定。にもかかわらず日トレ社は同12月、「計画は続行中」とする文書を株主に送り、以降は正式な説明は一切なかった。

その後、本紙が「日トレ社が宗像に土地確保」との怪情報をつかんだのは今年1月末。「久山で継続」としながら実際には宗像市での土地取得を目指し、ひそかに交渉を進めていたのだ。

本紙はこの事実をHPで報じたほか、2月号では「土地を確保したという嘘の情報を自らが流し、事業の継続を装っているのではないか」と指摘していた。

 

このころ、日トレ社周辺関係者が本紙に対して「土地を取得するため交渉中なので、記事を書かないでほしい」と接触してきた。まるで「計画が上手くいかないのは本紙のせい」とでも言いたいかのようだが、当然ながら要求に応じるはずもなく、その「交渉」の行方を"見守って"いた。

だが相手が求める基本的な条件整備にすら日トレ社が対応しないことが原因で頓挫。先月末には一部マスコミがその結末を報じる事態となった。

事業担う資格なし

今回の交渉決裂の責任はすべて日トレ社側にあると言ってよかろう。企業に対して土地の購入を持ち掛けながら相手側の要請に応えることはなく、その一方で「土地が取得できる」「買収で基本合意した」などと嘘の情報を垂れ流してきた。

さらに、計画移転されるはずの宗像市の土地は調整区域で、テーマパークを建設するとなると都市計画の変更が必要。だが宗像市側への接触は最初から最後まで1度もなかったという。これでは交渉相手から信用されるはずもない。

これらの経緯を見る限り、交渉とは名ばかりの「猿芝居」と言わざるをえない。

 

こうした日トレ社の姿勢は、果たして「1000億円規模の大プロジェクト」とされる計画を担う企業に相応しいものかどうか。

ある株主は「総会での話を聞いた時はうまくいっているのかと思ったが・・。これで山崎氏らが嘘つきであることがよく分かった」と憤る。

久山町では地権者らからサジを投げられ、宗像市では土地取得の交渉すら満足に進められなかった日トレ社。福岡に大規模テーマパークを建設するという「壮大な計画」はこれで宙に浮いた形となった。だが、山崎氏が自らの口で株主らに真実を伝えることは、当分ないだろう。

 

多くの株主や関係者を巻き込んだ末に「漂流」を始めたパラマウントテーマパーク計画。そのたどり着く先には、一体何が待っているのだろうか。