【お耳拝借!】色彩が人を、環境を輝かせる [2008年7月14日14:15更新]

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快適環境創造フォーラムより コミュニティ・カラリスト 山口ひろこ(08年6月号掲載) 

コミュニティ・カラリスト山口ひろこ氏「コミュニティ・カラリスト」と申しましても、聞き慣れない、イメージがわかない方が多いと思います。

色が人の心理に与える効用は最近では広く知られています。それを踏まえ「色彩を使って環境・都市景観デザインをプロデュースする」わけですが、壁紙を違う色に張り替えるとか心安らぐ色をアドバイスするとか、そういった仕事とも、ちょっと違うんですね。

商店街や店舗など公共の場、人が集まる場所を、色彩を軸にして多くの人が「心地良い」と感じられる場所に変える。

ですから、色=視覚だけでなく聴覚や嗅覚など人の五感すべてに訴えて「また来たいな」と思っていただける、そんな環境作りが私の仕事です。



総合的に考える 

例えば先日、バラエティー番組の「ナニコレ珍百景」(テレビ朝日)で取上げられてびっくりしたんですが、JR小倉駅ホームにあるうどん店「ぷらっと・ぴっと」。この名前、実は私が発案したんです。「色と関係ないじゃないか」と言われれば、その通り。色だけでなくこうしたネーミングも含めて考えるんですね。

地域や商業施設の再生・再活性化の仕事が多いです。もっとお店に客が入るようにしてほしい、人が集まるよう商店街のイメージを変えてほしい、といった具合。「ならば店内を明るい色で統一しよう」とか、そう単純ではないんです。

10数年前、小倉玉屋の社長さんからこんな相談を受けました。「3階の倉庫スペースが死んでいる。生き返らせてほしい」。そこはまったく人が近寄らない空間だったんですが「よし、何とかやってみよう」と。

パスタ中心のレストランを開き、手前に作家小物を扱う物販コーナーを設けました。今でこそこうした現代的和風の店は珍しくありませんが、当時は斬新だったんですよ。

店の看板などは蒸栗色を基調にしました。高級感とレトロ感を出したい、新しいけど懐かしい、そんなイメージで。そして、店の前方にトンネルで「暗部」を作り、その先に自然光が入るレストランを配置しました。 

色と光、光と影

視覚は、明るい場所にいると暗い部分を求めるという性質があります。当時の百貨店は、フロア全体を明るく照らしすぎて、暗い部分、影がなく不満を感じていました。それをあえて作り出すことで特色が生まれ「ブランド化」できる。そうすると人の記憶に残る、また来たいと思うんです。

学生にも言うのですが色彩と光、光と影は切っても切り離せない。色彩以外の要素も総合的に考えた「美しく見せる環境作り」。これが重要なんですね。そして、こうした環境こそが人を引き付け心地良さを与える、人を輝かせることができるんだと思います。 

こうした考え方は、ここ10年くらいでやっと市民権を得てきました。別に女性を賛美するわけではありませんけど(笑)、男性よりも変化に敏感で新しい環境に対応する能力が優れているように思います。変革のきっかけを作るのはいつも女性ではないでしょうか。

明るく照らされたフロアとか、現在の都会ののっぺりした景観、そういった空間は男性側の視点からの発想です。そうした社会には「人が輝ける場所」が少ないんですよね。 

景観こそが財産

私が大好きな街、宮崎市の美しさは日本有数だと思います。1969年には全国に先駆けて「県沿道修景美化条例」を制定した、都市景観先進地なんですね。

根底にあるのは故・岩切章太郎氏(1893―1985)から引き継がれている発想。氏は「たった1本のフェニックスを植えるのでも絵になるように植えなさい」と説いたんです。

これは都市景観を考える上で非常に重要だと感じます。景観こそが財産。それは経済効果を生むという意味だけではなく、人を引き付ける魅力に満ちた環境作りへの出発点なんです。残念ながら、福岡はこの点では遅れていますね。 

「隣」を思いやる

ちょっとした発想の転換が必要です。例えばご夫婦で外出する時。自分がどんな色の服を着るかでなく、どんな服を着れば奥様が美しく見えるか、引き立つかと考えてみる。

「自分がよければいい」ではなく周囲の引き立て役になる、それが結果的に自分を輝かせるという発想。隣合う人や建物を意識する、そうして街の景観をわがこととして捉えてほしいのです。

そうすれば都市景観への関心が高まり、魅力的な街づくりへとつながっていくのではないでしょうか。

【山口 ひろこ】<やまぐち・ひろこ>
1958年、北九州市生まれ(50歳) 同市在住
タウン誌編集部、光学機器総合商社などに勤務 
91年、「イゴス環境・色彩研究所」設立 
九産大、西日本工大などで講師を務める

【快適環境創造フォーラム】
快適な環境づくりを目指し健康産業やデザイナー、建築家など様々な分野の専門家らが参加する交流会

★記事は、講演を元にあらためて取材・再構成したものです<随時掲載>