福岡市・副市長人事の内幕   [2007年3月15日18:07更新]

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(07年3月号掲載) 

福岡市役所福岡市の吉田宏市長が、就任3カ月を迎えた。初めて本格編成に取り組んだ07年度当初予算案に「留守家庭子ども会の無料化」や「公園の芝生化」などの選挙公約を盛り込み、徐々に「吉田カラー」を打ち出し始めている。

ただ、今春から起用する新副市長2人の手腕には市役所内外で懐疑的な声が多い。今回の人選の意図は何か。様々な思惑が絡み合った人事の舞台裏を探った。
(写真=福岡市役所)

 



"ラッキーマン"

「副市長に高田、靍川氏 福岡市長方針」

2月23日、新聞各紙の朝刊に、こんな見出しが躍った。吉田市長が中元弘利、永松正彦両副市長を3月末で辞任させ、後任に高田洋征水道事業管理者と靍川洋財政局長を充てる方針を固めたという内容。市役所内は一日中、この話題で持ちきりになった。  

「無難というか華がないというか」「何をやりたいかがさっぱり見えない」。複数の市幹部がこう感想を漏らした。あるベテラン市議も「はっきり言って2人ともよく知らん。議会対策は大丈夫なのか」と首をかしげる。  

市幹部によると、総務企画局長の経験がある高田氏が多数野党の議会対策、靍川氏は市長が公約に掲げた財政健全化を推進する役割を担うという。だが高田氏はかつて総務企画局長に“出世”した際「福岡市制始まって以来のラッキーマン」と揶揄された人物。靍川氏も市役所内で「まじめだけが取り得」との“評価”が定着しているだけに、実質的な市政のかじ取り役としては「力不足」という見方がもっぱらだ。

構想外だった2人 

ではなぜ彼らが選ばれたのか。 

吉田市長は選挙公約の1つに「収入役廃止、副市長3人を2人にする」ことを挙げた。昨年12月の就任後、さっそく山崎広太郎・前市長の腹心だった江頭和彦副市長と北嶋雄二郎収入役を「追放」。残る副市長2人も替える考えを表明した。  

実は吉田市長の構想に当初、高田・靍川両氏の名はなかった。新副市長に想定したのは、05年まで総務省から市に出向していた山崎一樹・前財政局長。ところが総務省との調整前に一部マスコミが「山崎氏起用へ」と報じたことでご破算に。

吉田市長の選対本部長だった古賀友行・元県議に相談し、市役所生え抜き2人を充てることにした。そこで候補リストにピックアップされたのが高田・靍川両氏と鹿野至総務企画局長、中村耕二都市整備局長の4人。ただし、優先順位は靍川氏が2番目、高田氏は4番目でしかなかった。

今年1月下旬には、中村・靍川両氏を登用する腹をほぼ決め、水面下で調整に入った。この時も議会が難色を示したのは、中村氏よりむしろ靍川氏の方だった。

「海図なき航海」? 

唐突に決まったように見える今回の人事。だが、市役所内の事情に詳しいマスコミOBの1人は、意外な事実を明かす。「伏線は前からあった」というのだ。 

市長選の2カ月ほど前、市の元助役と地元選出の自民党大物国会議員が会談。「選挙での吉田氏支援」で一致した。  

元助役は、公明党とパイプを持つ中元副市長と気脈を通ずる仲だが、山崎前市長とは疎遠だった。「次の選挙は危ない」とされるこの国会議員と市長選後も陰で市政に力を行使したい元助役にとって、新市長誕生は悪い話ではなかった。  

そして、彼らの「狙い」通り市長は交代。吉田市長から副市長候補の人選を依頼された中元副市長が元助役の意を受けて推薦したのが、中村・靍川両氏だった。

中村氏は、西区選出の市議との不適切な関係が噂されたこともあり脱落。代わって元助役の「子飼い」といわれる高田氏がまたまた「ラッキー」を発揮して抜擢された―というわけだ。  

こうしてみると、政策を前提としていないことは明白でまさに打算の産物としか言いようがない人事。市役所内にも「このままでは海図なき航海になる」と危ぐする職員は少なくない。