コンプライアンス違反の疑い [2022年11月11日10:22更新]

広川町長が 県民の血税 収奪発言?

現在国交省が進めている 国道3号広川~八女バイパスであるが、コンプライアンスに関わる問題が出てきた。
弊社は、広川町の渡邉元喜町長が ルート決定の1年前に「バイパスを小学校に通して建て替える」と話した際の録音データを入手、確信犯的な発言は波紋を広げそうだ。

それによると、町長選挙を3か月後に控えた 平成31年1月、渡邉町長が町内の行政区の集会で4期目に挑戦を述べ、「バイパスが立ち上がるまでは責任と使命がある」と 意気込みを語ったところまでは良かった。
当時はまだバイパスのバの字もない頃、参加者は何のことかよく分からなかったというが、リップサービスからか、表で言ってはいけない裏話をペラペラ喋ってしまった様だ。

問題の発言は、「バイパスのルートはどこを通るか分からないが、一つだけ言えることがある。絶対に上広川小学校を通せというふうに言っているので、ここだけは自信持って言える。平成4年に建て替えているのでまだまだ文科省の補助金は出ないので、バイパス建設の保証金で作ろうと考えている」という部分だ。
「上広川小学校を通せ」と言った相手は福岡国道事務所と思われるが、ここだけは自信があるということで、実に頼もしい。

小学校の建て替え費用は国が3分の1を補助、町が3分の2を負担することになっているが、当時上広川小学校は築27年、文科省の補助で耐震補強工事も終えたばかりで 建て替えは有り得なかった。

しかし、バイパス建設の話が水面下が進み 予算化の目途がついたことで、小学校の建て替えを思いついたと思われる。
国が新設するバイパスのルートが小学校を通れば保証金が出る、つまり町は1円も出さずに 全額 国道建設の予算(国が3分の2、県が3分の1)で建て替えができるということだ。
広川町の皆さんは、渡邉町長の発言が「町都合の学校建て替えに、福岡県民の財布から費用の一部を収奪する行為」と指摘されていることをご存知だろうか。

その後、とんとん拍子で話が進むことになる。


結論ありき、全て帳面消し

昨日の記事を読んだという広川町在住の女性から情報提供があった。
その方も 町長選に 別の公民館で開催された町政報告会に出席しており、町長が「バイパスの本当の目的は学校を建て替えること」と述べたのをはっきり覚えているとのことだった。
バイパスの本来の目的は「国道3号の渋滞緩和」であり、聞き捨てならない発言である。

このリップサービスが功を奏したのか、平成31年4月の町長選挙で渡邉町長は4選を果たす。
元号が令和に変わった5月、国交省の有識者会議において、国道3号広川~八女間の渋滞緩和について「バイパスを含め」検討する「計画段階評価」を進めることが決定し、初めて国のテーブルに乗ることになった。

同年11月の有識者会議では、① 現道の4車線拡幅化、② 山側バイパスルート帯(帯幅は約1km)、③ 最短バイパスルート帯の3案から住民の意見徴収をしていく進め方が確認されたが、この時点においても まだバイパス建設が決定した訳ではない。



翌 令和2年5月の有識者会議において、住民アンケートなどの結果から、3案のうち山側バイパスルート帯のバイパス案に決定、それを受けて、広川町長から国交省に、地域の集落を分断しないルートを要望する文書が提出されている。
国道事務所の考えていたルートは、小学校のプールに一部に掛かる予定だったが、町長の要望を受け入れ小学校の真上を通すルートで決着した。

平成31年1月の「これだけは自信を持って言える」という町長発言から わずか1年5ヵ月で、その通りにバイパスが小学校の上を通ることになり、町は1円も出さずに国の保証金で建て替える目途がついたのである。
こんな上手い話があるだろうか。

整理すると、
町長が「小学校の上を通せと言っているので、ここだけは自信持って言える。バイパス建設の保証金で作ろうと考えている」と発言
→ 国が 計画段階評価を開始
→ 国が3つのルート案を市・町に提示
→ 国がアンケートを取るなど住民から意見聴取
→ 国が 山側ルート帯(帯幅1km)に決定
→ 町が 集落を分断しないよう国に要望
→ 国は 要望を受けて、小学校の上を通すことを最終決定

必要な手続きを経た上で 学校を建て替えるルートに決まったことになっているが、誰が見ても結論ありき、アンケートなど意見聴取は帳面消しに過ぎず、協力した住民を愚弄していると言えよう。


録音データ公開

渡邉町長の発言通り(文末に録音データ公開)、バイパスルートが上広川小学校の上を通過することになり、立て替えが内定した。
前回までに、
県民が 本来支出しないはずの 町立学校の費用負担を強いられること
国道事務所が行った手続きが 全て帳面消しで結論ありきだったこと
を 問題として指摘した。
これらは国交省と広川町のコンプライアンス違反で、第三者による調査委員会を設置するレベルの話だ。

筆者はこうした問題を引き起こす 根本的な要因が国交省にあると考えている。
それは、道路整備の優先順位を決めるプロセスが不明確で、外部から政治的な関与が可能な仕組みになっている点であるが、下記のリンク先に詳しく書いている。

→ 道路行政の闇 ~「優先度が高い」に根拠書類なし~

渡邉町長の発言は問題だが、地方の首長が国や県の予算で活性化を望むのは当たり前で、バイパス建設を利用して学校を建て替える発想自体は起こり得ることだ。
最近の公務員はそのような要望は受け付けないはずだが、こと道路行政に関しては 政治家が口を挟む余地が残っている様だ。

平成31年4月には、当時の国土交通副大臣が「下関北九州道路」を事業化に向け国直轄調査に移行する決定をしたことについて、「(安倍)総理とか(麻生)副総理が言えないので私が忖度した」と述べ、辞任に追い込まれたことは記憶に新しい。

広川~八女バイパスについても、渡邉町長が「バイパスのことは古賀先生に頼めばいい」という発言をしたことは関係者の間では有名な話、また、藤丸敏代議士(現在内閣府副大臣)にあっては 平成29年10月の衆院選の際、「古賀先生がバイパスを持って来てくれました」と公衆の面前で叫んでいる。
これは渡邉町長の発言より2年も前の発言で、水面下で古賀先生が国交省と協議をしていたことが窺える。

福岡県内の国道には 約180箇所の渋滞箇所があり、各自治会をはじめ首長や議員から、早急な整備の要望が上がっている。
しかし、一向に整備が始まらない箇所があるかと思えば、 地元の要望のなかった道路が突然予算化されたりすることが起こっている。
今回のバイパスについても 地元住民からの要望が上がったことはなかった。

本来道路の優先順位は、国と県の限られた道路予算の中から、規模や緊急性、科学的データ等を考慮しながら行政が「公平公正」に決めていくべきものだが、実際にはそうなっていない。
その仕組みを改めない限りは、今後も外部からの関与により行政が歪められ、要らない道路に我々の血税が投入されていくだろう。

まずは、国土交通省の関係者の皆さん、そして、これから予算を審議する国会議員や県議会の先生方におかれては、渡邉町長の生の声を聞いて この計画を前に進めていいか判断して頂きたい。

ー 了 ー


国道3号 広川~八女バイパスについての町長発言 録音データ