パワハラ企業のトンデモ裁判(前編) [2023年9月4日08:00更新]

㈱大島産業(宗像市)のCEOが、雇用していたトラック運転手を丸刈りにして高圧洗浄機で水を噴射したり、川に入るよう命じて打ち上げ花火で狙ったりした写真をブログで公開、慰謝料等を求め運転手が提訴し最高裁まで争い、2019年9月、大島に約1500万円の支払いを命じる判決が確定した。
当時これほど壮絶なパワハラが現実に存在し、CEO自身のブログで公開していたことが話題になり、関係者に衝撃を与えた。

丸刈りや土下座、パワハラ認定 1500万円支払い命ず(朝日新聞 2018年9月15日)

その大島産業の名前が 再びマスコミに登場したのが 2020年10月、あの文春砲だった。
NEXCO中日本が発注した中央高速道の耐震補強工事で 鉄筋不足等の施工不良が発覚、国会でも問題となった。

実は、発覚後約3年が経とうとしているのに、NEXCO中日本と大島産業の間で 未だ決着に至っていない。
当時施工不良の対応に追われたNEXCO中日本は、同年12月に大島産業との契約を工事途中で打ち切ったのだが、補修工事の費用も含め 最終的な支払額が未だ決定しておらず、建設工事紛争審査会の裁定に委ねているという。

そもそも当該工事は、当初の契約金額と工期が 5回に亘り変更になっている異例の工事だった。
当初契約金額は 6億0242万円、落札率74%で 低入札調査の対象となるほど安く受注したのだが、最終的に13億2910万円と 2倍以上に膨らみ、工期も1年以上延期されている。

その原因は、第三者調査委員会の報告書に詳しいが、工期遅れは下請の手配ができなかったことや、交通規制の保安費に4億5000万円が請求されるなど不透明な部分が多いことが記載されている。



→ NEXCO中日本 E20 中央道を跨ぐ橋梁の耐震補強工事施工不良に関する調査委員会 報告書(2021年7月22日)

当時のNEXCO中日本の副社長への忖度もあり、そうしたことが有耶無耶になったまま 契約変更が行われたのが2020年10月23日、文春によるスクープはちょうどその直後のタイミングだった。
調査の結果鉄筋不足が現実のものとなり、12月には契約を解除、約4億円をかけてNEXCO中日本は自ら補修工事を行なっている。

NEXCO中日本としては、水増し請求など積算が不透明なことも第三者調査委員会で指摘されており、補修費用の請求を含め 適正な支払いをしたいという立場、大島産業は 契約解除はNEXCO側の都合なので契約金額を支払ってほしいということで折り合いがつかず、建設工事紛争審査会で審査をしている段階だ。

こうした中、例の鉄筋不足の現場担当だった大島産業の管理技術者K氏が原告となり、NEXCO中日本の監督員や支社長らに対しパワハラを受けたとして二百数十万円の慰謝料を求める裁判を起こしていることが判った。
パワハラが認定された企業の社員が パワハラ裁判を提訴しているということで、実に興味深い裁判だ。

ー 続 く ー