仲間たちの笑顔に惹かれ開設 善意集まる「あおぞら作業所」 [2007年4月15日10:26更新]

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(07年4月号掲載) 

新聞社を定年の1年前にやめ、小規模福祉作業所を開設した人がいると聞いて訪ねた。福岡市南区弥永2丁目。那珂川のほとりに広がる静かな住宅街に「あおぞら作業所」はあった。

作業所と聞いて、工場のような施設を思い浮かべる人もいるかもしれないが、そこは所長の大賀和男さん(60)の自宅の庭に建てられた延べ床面積23坪の木造2階建て。一般住宅とまったく変わらない外観で、内部も家庭的な雰囲気だ。05年4月にスタートして丸2年。ダウン症や自閉症など知的障がいのある仲間たち15人が通っている。



仲間たちは、クッキー班、はがき紙すき班、アルミ缶回収・プレス班に分かれて週5日、作業する。クッキーの材料の調合、紙すきの手さばき、リサイクルできないスティール缶を素早く見つけ出す技など、仲間たちの中から次々と「職人」が育っているという。

「にぎやかな仲間が時間になると真剣な顔になったり、仲間同士が見せる気遣い、笑顔のなかった仲間が今日は一度笑ったなど、小さなことですが、私は毎日感動をもらっています」と大賀さんは語る。

 

小規模作業所は、養護学校などを卒業して成人を迎える年齢となった障害者が、一般の職場には受け入れてもらえず、行き場のない現実に直面した親たちと障がい児教育や福祉の関係者が力を合わせて、障がい者の働く場所と仲間との交流の場所を確保しようと、1970年代から全国に作られ始めた。

現在、全国に6000カ所余り、障害者本人と親たちの希望の星となっている。最近では、大賀さんのように個人が開設する例も増えているという。

 

大賀さんは長崎大学で障害者のボランティアサークルに所属している時、「障害者と共に生きる」を実践する長崎の「なずな園」(99年閉園)園長の近藤原理さんに出会った。それが、自分の原点だという。「こんな素晴らしい人がいるんだと強い衝撃を受けました」と語る大賀さんは、福祉や医療の取材を志して毎日新聞社に入社。鹿児島、宮崎、沖縄など10回に及ぶ転勤生活の中でも、福祉の取材を行ってきた。

作業所開設を真剣に考えるようになったのは、今から6~7年前。「転勤先で出会った作業所の人たちの明るさ、仲間たちの純なやさしさに触れて、作業所っていいなと思っていた。定年後の人生を真剣に考える中で、やはり自分の原点は福祉、やってみようと」

運営はやはり厳しい。開設費用に約800万円、福岡市から年間約1200万円の助成金が出るが、大賀さんと妻・真理子さんを含めた職員6人の給与は10~18万円がギリギリだ。「でも、びっくりしたのは周囲の人々の善意。地元の町内会、前の職場の人たち、学校時代の同級生などが、ピアノや食器類、アルミ缶を持ってきてくれたり、賛助会員(年2000円)になってくれたり。作業所は人々のやさしさを集める磁場のように感じています」

《問合せ先》
電話092-502-7031