【お耳拝借!】食の基本は健康な土にあり [2008年11月10日09:26更新]

タグで検索→ |

noimage

快適環境創造フォーラムより 九大院特任教授 金澤晋二郎(08年10月号掲載)

金澤晋二郎氏

日常茶飯事という言葉があるくらいですから、日本人にとってお茶というものはみなさんご存じの通り、古くから生活の一部として親しまれて来ました。 

最近では、お茶に含まれるカテキンという成分が抗酸化・老化抑制など体に非常に良い効用を持つということで、世界的にもブームとなっています。ですが、現在のお茶栽培は環境や安全の面で多くの問題を抱えています。

今回は、お茶にまつわる話を中心に「健康な土壌」の重要性について話したいと思います。



高級茶の味は 過剰に与えた化学肥料の味

お茶という木は強酸性の土壌に非常に強いという特徴があります。ですからやせた土地でも生育するんです。そして高窒素植物でもある。つまり、窒素=化学肥料を与えればそれを葉っぱにどんどん取り込んで生育するため、高品質の茶葉となるのです。 

たとえばサツマイモなどは、化学肥料を与えすぎると葉ばかり繁って肝心のイモが生育しない。一方、お茶は取り込んだ窒素をアミノ酸に変え、葉に蓄える。つまり化学肥料を与えればそれだけうまみ成分が増す。味が良くて高級茶葉として販売されているものの多くは、大量の化学肥料を与えた結果、といえます。

免疫力が低下 大量の農薬が必要に

ところが、あまり窒素肥料を与えすぎるとお茶の木そのものの生育に問題が生じてくるんです。 

みなさんが毎日毎日ステーキやフランス料理などの高級料理を食べ続けたらどうなるでしょう?痛風やら糖尿病やら健康を害することになるのは簡単に想像できますね。お茶もこれと一緒。免疫力が低下するなどいわば「不健康」な状態になってしまうんです。病気や害虫に弱くなる。 

そこで農薬で守らなければならなくなるんですね。殺虫剤、殺菌剤、除草剤。商品として価値の高い茶葉を作るために、こうした農薬を大量に使うのが常態化している。 

寒い時期、春先の1番茶はまだいい。2番茶以降は梅雨時期から夏、農薬が大量に使われる時期に収穫されているんです。

私は土壌微生物の研究が専門です。それがなぜか、鹿児島でお茶を栽培しています。これまで述べたことを踏まえ、有機栽培・無農薬、つまり「健康な土」で。

日本を代表する農業県 鹿児島に魅了され

私は北海道の生まれでして。東大で講師をしている時に鹿児島大学へ行かないかという話があり、1993年に赴任しました。 

実は私自身、鹿児島には非常に良い印象を持っていたんです。北海道開拓時代、九州からも多くの人が入植し、中でも薩摩の侍は屯田兵として大きな足跡を残している。新婚旅行も鹿児島だったんです。  

実際に行ってびっくりしたのは、日本有数の農業県だったということ。お茶の生産もそうですし、牛や豚などの食肉類もそう。北海道も農業・畜産業は盛んですが鹿児島は日本一といっていい。恥ずかしながら、現地に行くまで全然知りませんでした(笑)。 

退官後は宮沢賢治じゃないですが、晴耕雨読の生活をしたいと思ってたんです。九大に移る前でしたので永住も考え、喜入町という所に土地を買いまして。そこにお茶を植えたのですが、雑草との戦いがいかに大変であるか身に染みて分かりましたね。福岡から通い、現地の方に手伝って頂きながら、何とか維持してきました。 

栽培を自ら実践して

金澤茶園で生産されたお茶 ごく小さな畑ではありますが、茶木はおかげで非常に健康です。 

採れた茶葉は肉厚で、1煎目は今のお茶に慣れた人には味が薄いと言われるのですが、2煎目以降の方がより味が濃くなる。「昔のお茶の味がする」「香りがいい」と評価していただいてます。 

これまで長いこと研究室などで土をいじってきました。それで思うのは、健康な食物は「健康な土」から生まれる、ということ。当然、人の健康も「健康な土」が基本なんです。こうした研究の成果を、お茶栽培を通じてあらためて痛感しています。 

最初はほかの農家の方から「無農薬でできるわけがない」と言われましたが、今では周囲にも無農薬栽培を始める方が出てきました。それが嬉しいですね。

金澤氏が運営する「金澤茶園」のHPはこちら

 

【金澤晋二郎】 <かなざわ・しんじろう>
1942年、北海道小樽市生(66歳)福岡市在住
69年、 東大大学院修士課程修了(土壌学)
93年、鹿児島大農学部助教授 98年、九大農学部教授 
06年、九大大学院農学部研究員特任教授茶道裏千家・淡交会 福岡副支部長

【快適環境創造フォーラム】  
快適な環境づくりを目指し健康産業やデザイナー、建築家など様々な分野の専門家らが参加する交流会

★記事は、講演を元にあらためて取材・再構成したものです<随時掲載>