プロの仕事で地域に根付く 「かうひい工房 ぺるる」 [2007年11月14日10:52更新]

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(07年10月号掲載) 

かうひい工房 ぺるる人1人すれ違うことができるだけの細い路地、常連客ときさくにやりとりする店の人。福岡市博多区の吉塚市場(商店街)は、昔の風情をそのままに残す数少ない市場だ。

精神障がい者小規模作業所「かうひい工房 ぺるる」(写真)はその一角にある。 ただ、そのたたずまいは写真でも分かるように、とってもおしゃれ。とくに昔ながらの市場の風情とは好対照で、障がいを持つ人の作業所とは分からない。



「確かに小規模作業所と名前がついていますが、私は障がい者の作業所を作った覚えはないんです。ごく普通のプロの仕事をする直火焙煎コーヒーと本格ドイツパンの店を作り、そこでたまたま障がいを持つ人が働いているというだけです」

こう言うのは、施設長の小串武さん(66)。小串さんは県職員として長く障がい者施設の現場を歩き、とくに精神障がいの人たちやその関係者とかかわってきた。その中で膨らんできた疑問は、多くの施設や関係者は精神障がいを持つ人を、障がいの殻から解放するのでなく、殻の中に押し込める役割を果たしているのではないか、ということだった。

「障がいの殻は、本人達にとって居心地よい場所という側面もあるんです。初めてのことなどにぶつかるとパニックを起こすという、この障がい特有の問題などには配慮しながら、できるかぎり健常者と同じに扱って、外への巣立ちを助けるべきではないかと考えたのです」

言うだけでは説得力がない。「自分で実際にやるしかない」と作業所づくりに飛び込んだのが2001年。しかし、小串さんは作業所づくりのノウハウを全く持っていなかった。それで1年間は、他の作業所の下請けをした。

分かったのは、多くの作業所では一般の企業などと互角に渡り合える商品を持たないということだった。「プロとしての仕事、プロとしての商品でなければ、本人達も育たないと思いました」

そこで、選んだのが直火焙煎のコーヒーと本格ドイツパン。コーヒー豆を厳選し、パン生地は本場ヨーロッパから空輸したものという。02年10月にスタートして、03年4月に正式認可を得た。「手を抜かずに教え込めば、製造も接客も彼らは実に真面目にやるんです」

これで自信を得て、1~2年でこの作業所を巣立つ人も多い。その様子はホームページで公開している。「そのため、ピーク時に20人ほどいたのが、10人ほどになってしまいました。もちろん戻ってくる人もいます。またやり直せばいいんです」

「ぺるる」は市場にしっかり溶け込んでいるのも特徴だ。店の前のスペースは、市場のもちつき大会などイベント会場になる。小串さんは今や市場の商店会の事務局長もる。「まずはあいさつですね。顔見知りになると、激励してくれます。そんなことが彼らの自信にもつながるんです」

電話&FAX  092-6117725