誘致プロジェクト「最終局面」 久山町 テーマパーク計画 [2007年9月15日14:40更新]

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(07年9月号掲載) 

テーマパークの建設が計画されている山林これまで本紙で再三お伝えしてきた、久山町のパラマウントテーマパーク誘致プロジェクトが「最終局面」を迎えている。建設予定地の仮押さえ期限が今月30日に迫る中、地権者側は「プロジェクトの進展がみられない」として、契約終了の決断を下しそうな情勢だ。

一方、日本トレイド(福岡市博多区)の山崎和則社長は、トップに地元財界人を据えたSPC(特定目的会社)を設立する意向を示しているが、土地が確保できなければ計画は一気に破綻する。

絶体絶命の状況に追い込まれた山崎氏側に、はたして打つ手はあるのか。
(写真=久山町のテーマパーク建設予定地)



一発逆転の秘策!? それは「SPC」

「9月上旬には皆さんにいいニュースをお知らせできます」。契約期限を翌月に控えた8月上旬、山崎氏は地権者らを前に、自信たっぷりにそう語った。 その切り札は「SPC」。資産の流動化や証券化など特別な目的のために設立されるペーパーカンパニーのことだ。

SPCを設立してトップに地元財界人を登用すれば、支援と資金を得られる。地権者も納得して契約を延長するはずだ―これが、山崎社長が描く「一発逆転の秘策」である。

だが地元には呆れムードが流れている。「別会社を作っても資金調達法ついては曖昧なまま。お茶を濁しただけで、『またか』って感じ」(行政関係者)。

地権者らはこれまで、投入される資金の根拠を明らかにするよう、一貫して山崎氏に求めてきた。しかし、土地を売るように迫りながら、代金をいつ、誰が払うかについての説明を避ける山崎氏に、地権者が疑念を深めるのも無理はない。

資金調達の問題は依然として不透明

テーマパーク建設予定地は、大型商業施設「トリアス久山」に近い山林。日トレ社が04年3月から1千数百万円を支払って仮押さえしているが、地権者との契約では期限までに正式な登記を進めるか元に戻すかを決める予定。それまでに山崎氏が米投資グループと資金調達の交渉をまとめきれるかが焦点になっていた。

しかし期限を間近に控えながら、資金調達に話が及ぶと山崎氏の説明は歯切れが悪い。「テーマパーク建設には数年かかるので、最初から全額を調達する必要はないが、将来的に調達できることは決まっている」

山崎氏の説明では「テーマパークの運営方法は、土地をSPCが管理してパラマウント側に貸与する構図。施設やインフラを整備する資金はアメリカの投資グループが賄う。SPCと地権者の間で話がまとまった段階で出資してもらう約束を、すでに取り付けている。SPCの社長も決まっており、私に不信感を抱いている地権者にも理解してもらえるだろう」。

SPCを設立すればすべて丸く収まる―かのように聞こえるが・・。

所有権めぐり食い違う認識

一方、土地の所有権をめぐり新たな問題が浮上した。地権者の多くが賃貸を希望しているにもかかわらず、山崎氏が一括買収する方針を新たに示したことだ。米投資グループと検討した結果、「日本の法律上、賃貸では将来的に原状回復を求められる可能性があるため」で「大半の地権者が売却に同意している」という。

これに対し、ある地権者は真っ向から反発する。「売却に同意している人は多くても半数。絶対に売らないという人もいる。今になって突然そんなことを言い出すようじゃ、実現は無理だね」

山崎氏を「嘘つき」と呼ぶ関係者は多いが、こういった食い違いが信頼を失う原因といえる。

計画の裏でうごめく「怪しい面々」

このような状況の中、日トレ社の大口出資者で、同社への出資を募る宣伝役を担ってきた「人間と産業開発研究所」(H&M研究所)が、このほど福岡事務所を閉鎖。セミナーでも「パラマウントのパの字も出なかった」(ある参加者)という。

プロジェクトを取り巻く怪しい面々も、すでに計画の「賞味期限」が切れたことを察知しているのだろう。もはやテーマパークが実現する可能性は極めて低い。

そうなると注目されるのが、出資者への責任問題だ。

SPCは逃げ道作り?

登記簿などによると、1998年に設立された同社は、これまでに約4万株を発行。20億円超の出資を募っているとされる。だが山崎氏は「集めた金は使い切った」と公言、現在は経営にも窮しているという。

SPC社長には福岡市内の飲料会社社長が内定しているという(9月13日時点で未発表)が、「計画破綻を前提とした逃げ道作り」、つまり、場合によっては破綻の責任をSPCに押し付けることも想定される。少なくとも新社長は、地権者とのこじれた関係を修復し、1400億円もの資金調達の根拠を明確にする重責を担うことになる。

 

これまでの過程で、パラマウント社からの手紙に関して山崎氏の明らかな嘘があったほか、「不適切」な集金方法の情報も飛び交った。壮大なプロジェクトの破綻の末に、何が飛び出すのか? 山崎氏の話の何が真実で何が虚構だったのか? 多くの関係者が計画の結末を見守っている。