足元揺らぐ「山本王国」添田町(2)  [2010年7月16日10:30更新]

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(10年6月号掲載)

記者会見する百条委(6月2日、添田町役場)そんな添田町で新たな問題が発覚し、町に対して疑惑の目が向けられている。 

関係者によると、先に述べた町長擁護の文書は封書で郵送された。ところが、選挙人名簿では分からないはずの世帯主宛てに送られたり、受け取った本人が通常は使わない戸籍上の漢字が宛名に使われる、誤って町に登録した住所がそのまま表記されていたなどのケースもあったという。

そのため議会は先月20日、「町が保有している個人情報(住民基本台帳の情報)が目的外に使われたのではないか」として、調査特別委員会(百条委員会)の設置を決定、調査に乗り出したのだ。

 



百条委は6月7日までに計5回開かれ、町長の後援会関係者や役場職員から事情を聴くなどして調べを進めている。だが一部から資料提出や証言を拒否されるなど、事実解明への道のりは遠いのが現状である。 

仮にこの文書を送る際に住民基本台帳が使われたとするならば、外部への流出には役場職員が関与していたと考えるのが自然だ。自ら関係者に漏らした、あるいは外部からのアクセスに便宜を図る、故意に見逃す─こうした不正行為があった疑いが当然、生じる。

なぜなら彼らの上司は、コンプライアンス(法令遵守)の意識が極めて希薄な山本町長なのだから。

町民の対立激化も  

6月9日、福岡地裁で開かれた初公判で、山本町長は起訴内容を認め「誠に申し訳ない」と謝罪した。だが町民に対する公の場での謝罪は、いまだにない。 

産炭地として栄え一時は約2万8000の人口を抱えながら、エネルギー革命とともに衰退した添田町。そんな小さな自治体の首長ながら中央官僚や国会議員と互角以上に渡り合い、県内外の首長から一目置かれる存在となった山本町長。

「すべて町のためにやったこと。これまでの実績を考えれば、たかがこれしきのことで町民がNOと言うはずがない」と考えているとしても不思議はない。 

 

ただ、住民投票が実施されれば町が二分され、これまで以上に対立が激化する事態も想定される。また投票結果がどちらになったとしても町民間にはしこりが残るだろう。そのような事態を避ける意味でも、町長の「英断」を望みたいが・・。 

現段階では住民投票が行われるのは必至の情勢。長期政権のひずみを一掃し混乱に一応の終止符を打つのか、刑事被告人をトップに据え続けるのか。添田町民の良識が問われることになるのは間違いない。

【編注】山本氏は本稿掲載後の今月5日、辞職願を提出。住民投票は実施されず、8月22日に出直し町長選挙が行われる。山本氏は出馬するかどうか明らかにしていない