(10年5月号掲載) 1人暮らしの高齢者や障がいのある人の見守りや、生活困窮者への支援、さらには子育ての悩みを抱える家庭への支援など、地域福祉を地道に支える民生委員・児童委員。 高齢化が急速に進み児童虐待などが頻発する中で、その役割はいよいよ大きくなっているが、委員の選出は年々困難になり、地域福祉の今後に影を落としている。 民生委員制度は、1917(大正6)年に岡山県に設置された「済世顧問制度」と、翌年、大阪府でスタートした「方面委員制度」が始まりで、それが全国各地に広がったといわれる。 その歴史を引き継いで戦後の1948(昭和23)年、民生委員法が施行され、現在の民生委員制度が確立した。その後、児童福祉法の規定に従って、民生委員が児童委員も兼ねることになり、「民生委員・児童委員」あるいは「民生児童委員」という呼び名が使われている。 民生委員は、地域の推薦を経て厚生労働大臣が任命する非常勤特別職公務員という位置づけだが、月に交通費・通信費として8500円が支給されるだけのボランティア。その一方、活動は忙しい。 1人暮らしの高齢者を訪問したり、相談を受けたり、行政の要請で最近生まれた赤ちゃん宅を訪ねたり、高齢者のふれあいサロンの運営や子育てサロンの手伝い、さらに地域の行事が加わる。 福岡市の調査によれば、平均活動日数は月に13.6日になるという。よほどの社会奉仕の精神と健康な体力、それに一定の経済的な裏付けがなければ、出来るものではない。 福岡市は220~440世帯に民生委員1人と決めており、市全体では約2300人に上る。全国では約23万人だ。任期は3年。今年はいっせい改選の年に当たっており、今年12月1日現在で25歳以上、74歳以下という条件で各地域に推薦が求められている。 だが、これが難題だ。毎回、年齢制限や転居、また体調悪化などで再任できない人が出てくるが、後任選びに各地域、具体的にいえば町内会長が四苦八苦するのだ。前述したように、実態は全くのボランティアではあるが、担っている責任は重い。 とくに最近は個人情報保護に過剰反応する人が多く、自宅の扉を開けてもらうのも一苦労。さらに、住民の7~8割がマンション住まいの福岡市では、オートロックに阻まれて、玄関の扉に到達するのもままならない。そんな状況の下では民生委員を引き受けようという人がなかなか現れないのだ。 国や地方自治体は福祉の充実をうたい、さまざまな施設や相談機関の整備を行っているが、それを必要とする人たちがその存在を明確に認識し、直接アプローチできているかといえば、そうしたケースは少ない。地域で目を配り、仲介を果たす民生委員がいてこそ、施設や機関もその役割を果たすことができるのだ。 関係者は「民生委員の役割の重要性に目を向け、関心をもってほしい」と訴えている。 【問い合わせ先】}
民生委員については各市町村の地域福祉課などへ
地域福祉を支えるボランティア 民生委員・児童委員 [2010年6月16日13:19更新]
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