採択するか否か、国会審議を [2024年3月15日06:16更新]

前回の続き…。
麻生太郎財務大臣(当時)が、「武見敬三氏をUHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ・Universal Health Coverage)大使として任命しているWHOは怪しげな組織」と表現した。
3月12日の財政金融委員会で、原口議員から 「(麻生氏と)同じ認識をお持ちか」と尋ねられた 鈴木財務大臣は、「同じことを言っても許される人と許されない人がいる」とかわし、委員会室が笑いの渦に包まれた。

WHOが怪しげという表現もさることながら、武見氏が 能力がない人物のようにも聞こえるが、武見氏は 日本医師会会長として権勢をふるった故武見太郎氏を父に持つ厚労族、そればかりか、麻生派に所属し麻生氏の又従兄弟にあたる人物である。
このことから、WHOが武見氏を大使に任命したのには、麻生氏を含む日本政府の意向が働いていると思われる。



「全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態」を目指す UHCの理念そのものは素晴らしく、我が国がその分野で国際貢献することに反対する理由はない。

しかし、今問題となっているのは、その理念を飛び越えて IHR改正とパンデミック条約策定がWHOに資金拠出を行っている利害関係者の利益になるものではないのか、また、ワクチン接種を強制するなど自由を制限し憲法違反の恐れもあるにも拘わらず、その確認をしないで前に進めていいのかということである。



2022年までWHOの大使を務めた 武見氏が 現在厚生労働大臣に任命された。
5月のWHO総会時の採択に向けて 草案づくりを担ってきた 我が国の立場からすれば、採択を前提に進んでいることは明白だ。

日本のマスコミがパンデミック条約について全く報じないのは、政府がこれまで言及してこなかったからだ。
昨年から、条約策定に向けた意思決定過程が不透明なことに対し、国民の多くから疑問の声が上がったことから、今年1月 ようやく政府が一部情報を公開した。

しかし、総会まで2ヵ月を切ったというのに、政府は 協議中を理由に 草案の中身を公開していない。
上川陽子外務大臣は原口議員への答弁で、IHR改正について 国会審議は考えてないと述べたが、海外では 草案について既に議論が行われ、中国やインド、ブラジルほか、多くの途上国から公平性などに問題点があるという声明が出されているという。



2月には、自民・立憲を含む国会議員らが超党派の議連をつくり、今国会でこの問題を取り上げ始めている。
同議連は、パンデミック条約は 財政事項をふくむ国際約束で、政治的に重要な国際約束となることから、採択するかどうか国会の議決が必要と主張している。

5月の総会まで時間は残されていない。
政府には、IHR改正案とパンデミック条約の草案を早急に公開すると共に、海外各国の主張、また、法的な位置付け、強制力によって国民の生活や権利にどういう影響が出るかなど、丁寧な説明を求めたい。

外務省HP
パンデミックの予防、備え及び対応(PPR)に関するWHOの新たな法的文書
(いわゆる「パンデミック条約」)の交渉