統一地方選こぼれ話(1) [2011年5月23日11:58更新]

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(11年4月号掲載)

福岡県庁統一地方選が終了した。

多党相乗り候補と共産候補の一騎打ちとなった県知事選、4分の1以上の選挙区で無投票となった県議選など、民主が躍進した前回と比べまったく盛り上がらなかった。 

マスコミ記者からは「結果が見えており、記事の書きようがない」といった声が漏れる一方、東日本大震災の影響で新人の派手なパフォーマンスなどは陰を潜め、見所や話題が少なかったのも事実。

そんな選挙戦の中からいくつかエピソードを拾ってみた。



幻の知事選候補  

「ある著名人が知事選に名乗りを上げ、3月12日に発表する予定だった。だが前日に発生した震災のおかげで吹っ飛んだ」

3月半ば、関係者の間をこんな“怪情報”が駆けめぐった。 

この著名人とはジャーナリストの鳥越俊太郎氏。浮羽郡吉井町(現うきは市)出身でテレビの報道番組を中心に活躍、07年には民主から都知事選への出馬を打診されたこともある。ただ71歳と高齢の上、健康に不安も抱えており「現実的にはありえない」(民主関係者)。 

また2月ごろには「サプライズ候補」として、舛添要一参院議員の名前も一部で取りざたされた。

昨年の段階ですでに水面下での出馬オファーを断ったとされていたが、年明けから福岡の民放番組に出演したり新聞社を訪問するなど、なぜか地元での露出が増したのがその理由。ほかにも地元選出有名国会議員の実子の名が浮上、「第3の候補」をめぐる空騒ぎは最後まで続いた。 

こうした現象は、一度は擁立を見送った人物に相乗りした「腰抜け」民主など既存政党に対する失望、麻生県政の後継者への反発、そして脱政党候補出現への期待感から生じたと考えられる。過去最低だった投票率とともに、県政に対する閉塞感を象徴している。 

有権者全体に占める小川氏の得票率はわずか27.8%、前回選挙での麻生知事とほぼ同じだ。当選を喜ぶ小川氏や麻生知事らの目には、この数字は映っていないに違いない。

低レベルな争い  

定数62に対し96人が立候補した福岡市議選。うち新人は43人、その中でも関係者の注目を集めたのは中央区の橋田和義氏だ。 

同氏は九電工社長、橋田紘一氏の実子。いずれも選挙好きで知られる橋田氏と同社会長で福岡商工会議所会頭の河部浩幸氏とが旧来の企業選挙を展開。

だが支援を強く要請された九電の取引先などから「福島の原発事故で大変なこの時期、他にやることがあるはずだ」「なぜ九電工社長の息子という理由だけで応援しなければならないのか」といった怒りや不満が噴出していたという。 

それでも、最下位ながら初当選を果たした和義氏。昨年の市長選で落選した現職を推していた橋田、河部両氏もほっと一息といったところだろう。

ただ、本人の演説を聞く限り何をやりたいのかまったく分からず、市政や議会の知識もないのは明らか。このような人物に一体何が出来るというのか。暗澹たる気分になる。 

(続く)