<写真特集>続・知られざる屋久島 ある山師の記録(5) [2010年2月26日09:15更新]

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伐り出された屋久杉が集められる小杉谷。近代の伐採が始まる頃には、樹齢400年から500年の「小杉」が林立する、屋久杉の宝庫だった。

険しい山岳地帯と比べて傾斜の緩い谷沿いには栄養分の多い土がたまる。雨も多く、杉が生育するにはもってこいの場所だった。

しかし、森林軌道が通ると、大伐採の適地となった。屋久杉をはじめとする木々が伐りつくされ、「屋久杉の墓場」とさえ言われた。その小杉谷と荒川登山口とを結ぶのが、日本で唯一残された木材搬出専用のトロッコである。



冒頭で述べた屋久杉とは別の現場から杉を運び出す作業に立ち会った。

 

土場に降ろされた屋久杉を トロッコに積み込む。

バランスを考えなければトロッコが脱線する原因となる。ここでも山師としての高田さんの経験がものをいう。 

トロッコ1台には通常、3トンを超える杉が積み込まれる。樹齢1500年ほどと思われる屋久杉が積まれると、これだけでトロッコは一杯になった。

トロッコが動き出した。大きな岩を積んでいるかのようだ。

山を下るときには傾斜を利用して、動力なしで下っていく。疾走するトロッコの手綱をたくみに操り、ブレーキをかけながら速度を調整する。

山間部を走るため線路はカーブが多く、過去には脱線やけが人を出したこともある。伐り出しとは違う緊張を強いられる。

伐採が盛んなころは、屋久杉を満載したトロッコが、毎日ひっきりなしに山から下りてきた。

だが2009年、この森林軌道を使った土埋木の搬出は終了することになった。今後は登山道の保線作業などに使われる。

だから、屋久杉を載せた風景は、これが最後となるかもしれない。

(続く)