【お耳拝借!】引きこもりは脳の栄養不足!? [2010年12月16日12:33更新]

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ひきこもり支援相談講演会より栄養療法専門クリニック院長 溝口徹氏(10年11月号掲載)

栄養療法専門クリニック院長 溝口徹氏

今や社会現象となった子どもや若者の引きこもり、不登校の問題。学校でのいじめや親子関係のトラブル引き金になるケースが多いものですから、心の問題と考えている方が多いと思います。 

ですが実は、食事や栄養不足が原因であるケースも相当あるのです。 

子どもは大人が考える以上に、いろんな事で悩んでいるもの。私も小さい頃はアトピーや肥満で悩んでいました。中学生になると不安を抱く傾向が強まるとのデータもあります。 

成長期の子どもは栄養の影響を直接受けます。そういった大切な時期、子どもたちが一体何を食べているか、ご家庭でしっかり把握されているでしょうか。

今日は食事と栄養が脳、そして心に及ぼす影響についてお話したいと思います。 



タンパク質が肉体・脳の基本  

人の行動や感情を司る臓器が脳であることは皆さんご存知ですよね。

心や感情をコントロールするということは、興奮状態と抑制状態をバランス良く保つということ。そのため脳の内部では興奮系物質と抑制系物質、それから両者を調整する物質。これら3つの神経伝達物質が、それぞれ働いているのです。 

興奮系物質が不足すれば気分が落ち込み、過剰であればイライラしたり不安や恐怖に襲われる。抑制系物質が不足すればけいれんや興奮、行動異常を招く。これらがバランス良く分泌されることが精神状態の安定には重要なのです。 

興奮系物質はノルアドレナリンやドーパミンなど。抑制系物質はγ-アミノ酸(GABA)。調整系物質はセロトニンやメラトニン。これらは皆、タンパク質(プロテイン)に含まれるアミノ酸から合成される。 

ダイエットする女性などで「私は肉を食べない」という方もおられますが、タンパク質が不足することは肉体の成長・維持の面だけでなく、脳のことを考えても非常に危険だと言わざるをえません。 

脳に必要な「オイル」

脳は、例えるならスーパーカーのようなものです。非常に精密で高性能。その上、人体の中で最もガソリン=エネルギーを必要とする臓器なんですね。 

この精密機械がうまく機能するには良質の「オイル」もいる。オイルとはすなわち、ビタミンやミネラルなどの栄養素。先ほど述べた神経伝達物質がアミノ酸から合成されるには、多くのオイル=栄養素が必要です。

特に大切なのはビタミンB群、ナイアシン。女性であれば鉄分も。

ストレスや食事が原因でこれらが不足すると、たちまち脳は機能不全に陥る。行動異常など多くの精神症状の原因となってしまう。 

砂糖は脳に必要か?  

それでは私たちは何を食べるべきか。それはずばり肉類です。良質のアミノ酸とビタミンB群が含まれている、脳と体にとっては最高の食材です。 

一時期、「お砂糖は脳が喜ぶエネルギー」と大々的に宣伝されたことがありました。おかげで脳のためには糖分を摂らなければ、と考えてらっしゃる方も多いと思います。ですが、誤解を恐れず言うと、これは間違っています。 

糖分を摂取すれば急激に血糖値が上がります。脳の活動エネルギーが増えて集中力が高まり幸福感、満足感が得られるのは確かです。

しかし今度は血糖値を下げるホルモン、インシュリンが分泌される。これが過剰だと急激に血糖値が下がりやる気が一気に低下してしまう。脳は血糖値が変動することを嫌う。甘い物を摂ることは血糖値の乱高下から来る精神の不安定を招くのです。 

肉類中心の食事に変えよう  

血糖値が短時間の間に高くなったり低くなったりすることを低血糖症と言います。やる気が失われたり悪寒や眠気、急な不安感や過食などの症状が起きる。脳が異常を来すんですね。これが不登校や就労不能の原因になっているケースが相当数あります。

本来は食事と栄養に原因があるのですが、これをうつ病や統合失調症と誤って診断されて大量の投薬を受け、もうろうとなった状態で私のところに来る方も多い。そんな患者さんは必要な栄養素を与え、食事の方法や内容について指導することで、ほとんどが改善されます。 

人の体と脳の発達にはタンパク質が不可欠。肉類を中心にした食事に変え、栄養をたっぷり摂ることが重要なのです。糖分、甘い物は出来る限り避けた方が良いでしょう。

間食には良質のタンパク質を含むチーズやアーモンドがおすすめですし、飲み物も普通の水か麦茶で十分。もちろん、家族や友人と語らいながらゆっくりと楽しむことも重要です。 

タンパク質やビタミンB群、ミネラルなど必要な栄養素をきちんと摂る、適度な休息を与える、運動や笑いでリラックスさせる。そうして「悩みがちな脳」とおさらばしましょう!

 

【溝口 徹】<みぞぐち・とおる>
1964年、神奈川県生(46歳) 90年、福島県立医科大卒
2003年、日本初の栄養療法専門クリニック「新宿溝口クリニック」を開設
主著に「診たて違いの心の病-実は栄養欠損だった!」(第三文明社)
「『うつ』は食べ物が原因だった!」(青春新書INTELLIGENCE)

【新宿溝口クリニックのHPはこちら】

【ひきこもり支援相談士認定協議会のHPはこちら】

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