選定過程に不備 整備先は各論併記 こども病院調査委 [2011年5月16日11:27更新]

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福岡市立こども病院(中央区唐人町)福岡市立こども病院(中央区、写真)の人工島移転事業をめぐり、その決定プロセスを検証する調査委員会が15日開かれ、最終報告をまとめた。

移転を決定した過程の合理性・妥当性については賛否両論を併記した上で、意志決定過程が不透明であることやガバナンス(法律を守りながら集団をうまく運営すること)が欠如していたと指摘。「こうした進め方が市役所の信頼を損ない、結果として病院建て替えを停滞させた」と結論付けた。



新しい整備先については1つにまとまらず、人工島を含め6カ所の候補地の長所・短所を挙げて一覧表にまとめた。報告書は会議後、高島宗一郎市長に手渡された。

同市長は整備地について「就任半年となる6月7日までに結論を出したい」と語った。(5月号で詳報予定) 

 

【以下は本紙3月号掲載記事です】

「不適切」の流れ決定的 こども病院問題で調査委

市立こども病院の人工島移転をめぐる問題で、市側が現地建て替え費用を1.5倍に水増した根拠として挙げていたゼネコンからの助言について、各社が「具体的な数字は示していない」と話していることが、このほど判明した。

本紙は2月号で、市が作成した「マル秘文書」の中で水増しの経緯が不適切とされることを想定していることから、人工島移転決定の過程を検証している調査委員会が「決定過程に問題あり」との結論にいたる可能性は高い─と指摘。ゼネコン各社の証言が明らかになったことで、市が想定した通り、この流れは決定的となった。 

市が聞き取り調査をしたというゼネコン3社の名前については水増し問題発覚以降、市議会などで再三明らかにするよう求められていた。だが市側は「社名を公表する同意が得られていない」としてこれを拒否。調査委は、「説明責任を果たさなければ議論が前に進まない」として、社名を公表するよう市側に強く要請していた。その結果、ゼネコン各社の話と市の説明とが食い違っていることが分かった。 

これを受け第3回調査委(3月6日)では「明確な根拠や説明責任を果たせない意思決定は手続き上、問題がある」「市には猛省を促したい」とした北川正恭委員長をはじめ、厳しい批判が相次いだ。吉田宏・前市長の下で行われた検証作業がいかにお粗末だったかが、浮き彫りとなった。 

調査委は次回から、現地建て替えの可能性を含め新病院の整備場所について検証作業に入る予定。これに関しては、患者らが通いやすい利便性を求めるのか、高度医療や広い駐車場などのサービス充実を重視するのか、様々な立場から意見が出されることが予想され、1つにまとめるのは困難と思われる。 

調査委の最終的な結論としては「吉田市政下での検証作業は不適切だった」「新病院の移転先については複数の意見を併記」という形に落ち着くのではないか─本紙はこう考える。 

今回、あらためて認識させられたのが、情報公開の重要性だ。ゼネコン名を明らかにさせたことで、市が出した数字の根拠、人工島移転決定にいたる経緯が、極めて不透明だったことがはっきりした。この1点だけでも調査委を立ち上げた意義があるのではないか。 

高島宗一郎市長が公約に掲げて速やかに着手した検証作業は、現時点ですでに一定の成果を上げているのは間違いない。