(10年6月号掲載) 県町村会による贈収賄事件に絡み起訴された山本文男被告が、いまだに町長を続ける添田町(写真=添田町役場)。そんな「山本王国」が今、足元から揺れている。 一部町民が町長のリコール(解職請求)運動を進め近く住民投票が行われる見通しに。同時にこの手続きに関連し、町保有の個人情報が目的外に利用された疑惑が浮上、調査が行われる事態となっているからだ。 事件を発端に全国にその名が知れ渡った添田町。今問われているのは「町民の良識」にほかならない。 【編注】山本氏は本稿掲載後の今月5日、辞職願を提出。住民投票は実施されず、8月22日に出直し町長選挙が行われる。山本氏は出馬するかどうか明らかにしていない 「町のイメージをダウンさせた責任は大きい。進退について町長自身が『町民の意見を聞いてから決めたい』としている以上、今のままでいいのか、みんなで決めるための場として住民投票実施を求めたのです」 住民団体「山本町長をリコールする会」の副代表(11人)に名を連ねる7町議の1人は、こう説明する。 山本町長は起訴後、「事件の被害者は誰か」という記者の質問に「私でしょう」と答えたり、町議会の全員協議会で「町には迷惑をかけてない」と述べてマスコミなどから批判を浴びた。3月には議会が辞職勧告決議を可決したが応じず、町長職に止まり続けている。 地方自治法では有権者の1/3以上の署名を集めれば首長などの解職を請求できると定めている。リコールする会が有権者(3月1日現在9871人)の1/3(3291人)を超える3677人分の署名を同町選挙管理委員会に提出したのは5月24日。町選管は6月13日、3497人分が有効と認め告示した。 同会が本請求すれば8月にも住民投票が実施され、有効投票総数の過半数の賛成があれば山本町長は失職する。 10期40年近くもの間トップに君臨し、有力国会議員や中央とのパイプを活かして次々に事業と予算を引っ張るなどその力を誇示してきた山本氏。それだけにリコール運動への町民の反発は激しかった。 「このような行為は添田町にとって不名誉なことであり、行政運営の多大な遅滞と混乱を招くことは明白」 「我々としては、断じて許すわけにはいかない」 こんな内容の文書が4月末から計約4000枚、何者かによって各家庭に配布され、さらには「町長がリコールされたら学校給食がなくなる」といったデマも流れたという。 「お世話になっているからという理由で署名をためらう人や拒む人は確かに多かった。それでもこれだけの数が集まったことは非常に意義深い」(前出町議)。 (続く)
足元揺らぐ「山本王国」添田町(1) [2010年7月14日09:01更新]
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リコール運動に反発激しく