公正な貿易で途上国を支援 フェアトレード福岡 [2010年7月30日08:56更新]

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(10年6月号掲載)

スリランカ産のコーヒー・紅茶を持つ益富さん「価格低下」が止まらない。消費者としては歓迎すべきものだろうが、その反面には商品によっても違うが生産者の犠牲があることは忘れてならない。

特に農業など第1次産業では、生産の基盤を荒廃させる大きな要因になっている。 

こうした状況は国内においても見られるが、国際的にはさらに過酷なのが実情である。



コーヒーや紅茶、カカオ、スパイスなどの産出国はいずれも発展途上国。現地の生産者は運輸手段や加工設備を持たないため、仲買人に買いたたかれたり、伝統の技法を捨てさせられて、大規模なプランテーションの労働者として働かされるなど、貧しさから抜け出せない。 

そんな現状を変えるため、現地の人が生活できる価格で産品を買い取って販売したり、技術移転を行って、より高度な商品に仕上げることを援助し、その商品の買い上げを保証することなどが、世界的に行われている。これがフェアトレード(公正貿易)だ。

欧米では50年以上の歴史があるが、日本での歩みはまだ20年あまり。一般の認知度も極端に低い。そうした中でフェアトレードの普及に奮闘している1人が、福岡市南区在住の益富貴志さん(41、写真)である。

昨年、フェアトレード商品を扱うインターネットショップ「オルメンティア」を立ち上げ、今年3月にはNPO日本フェアトレード委員会(本部・熊本)の福岡支部を任された。事務局長として福岡県各地のイベントへの参加や月1回の勉強会、さらにはインターネットを駆使しての仲間づくりに奔走している。 

 

益富さんがフェアトレードに出会ったのは3年前。「友人を通じて知ったのですが、途上国の人を助けようという単なるボランティアではなく、きちんとビジネスとして成り立たせて、互いに利益を得るという考え方に共鳴しました。もちろん一朝一夕で成果が出るというものではありませんが、大きな可能性を感じましたね」 

益富さんは北九州市出身。大学を卒業して大手旅行代理店に就職し、仕事も含めて20数カ国を訪問。留学エージェントに転職し、オーストラリアやニュージーランドへの短期滞在も経験。その後、インターネットや携帯電話の会社に転職して、主に外国人ユーザーへのサービス提供やフォローを担当してきた。その過程で出会ったのがフェアトレードだという。 

早速、得意のインターネット技術を使って、フェアトレード商品や販路を求めている九州地域の地元特産物販売のオンラインショップを立ち上げた。当初は既存のフェアトレード企業を通じて商品を調達していたが、現在ではスリランカのコーヒーや紅茶、スパイスを栽培する農園と直接取引し、その生産物の全量を買い上げて日本全国に販売するまでになっている。 

 

ただ現在、この仕事が益富さんの生活を支えているわけではない。インターネットや携帯電話関連の仕事で生活の糧を得ながらの活動だ。

「時間がかかるのは覚悟の上です。福岡、九州のフェアトレードはスタートラインに立ったばかりと言っていいでしょう。それだけにやりがいがある。若い人の参加を期待しています」と益富さんは語る。

オルメンティアのHPはこちら