ここは大任町?「おやつ代」非開示で争う井上市長

弊社では昨年来、春日市の放課後児童クラブの指定管理者「㈱テノ.コーポレーション」が事業報告書の中で、保護者から実費徴収しているおやつ代の支出額を黒塗りにして公開している問題を報じてきた。

おやつ代と保険代を隠す学童保育(2022年8月20日)

令和2年度と3年度のおやつ代の収支が黒塗りで公開されておらず、現在 住民が開示を市に求め裁判で争っているところだ。
ところが、この黒塗りをしたことで、市民図書館など他の公共施設の収支の一部も黒塗りにすることになり、市民はもとより 議会ですらその中身を知ることができなくなった。
さすがに、市長派の議員からも指摘があり、テノ社の令和4年度分の事業報告書からは黒塗りがなくなり 全て公開されている。

それなのに、令和2年度と3年度分については まだ黒塗りのままで、裁判が継続中という矛盾、令和4年度で 黒塗りを止めた訳だから、これ以上市民の税金を使って裁判で争う必要はないはずである。
余程 黒塗りの中身が見られたくない酷い内容と想像が膨らむばかりで、井上市長の情報公開を拒む姿勢については「大任町と同じ」という声も上がっている。

さて、公開された令和4年度分の事業報告書から判ったこと。
実費徴収した間食代(おやつ代) 2275万4600円に対し、支出が 2056万6964円、執行率にすると約90%、約 218万円の残が出ている。
一般的に、実費とは「実際に支払った金額」を表す言葉で手数料や利益は含まない。
余ったら返すのが実費徴収の常識だろう。

しかし、9月議会の一般質問で教育長が、
「おやつ代については、指定管理者との協定により、実費相当額となるよう保護者から徴収し、指定管理者の収入とすることができる旨を定めている。保護者が負担したおやつ代の合計額と、実際におやつ購入に充てた費用総額との差額が生じた場合であっても、保護者に返金するようにはなっていない。」
と答弁、協定書そのものが考えられない内容になっていることが判った。
この内容で通るなら、徴収したおやつ代の半分だけ提供して、残りは利益に回しても問題にならないことになる。
市は執行率が何%までなら実費相当額として許容するか基準を決めるべきだろう。

テノ社もやましいところがないなら、堂々と 令和2年度と3年度分を堂々と公開すればいいはずだ。
市がテノ社の主張に沿って 未だに黒塗りの正当性を主張し争っているのは「執行率が常識の範囲を超えて、後ろめたいところがあるからでは」と疑われても仕方がない。
テノ社が、常識の範囲を超えて他の経費に回していたことになれば、上場会社としての信用を大きく失墜させることになる。

テノ社がそんな疑念を払拭し今後発展していくためにも、井上市長におかれては 直ちに裁判を中止すると同時に 令和2年度と3年度の黒塗り部分を公開するよう決断することを期待したい。

反問権で市議を攻撃? 井上市長

国会でも地方議会でも、議員は首長に対し議会の場で様々な要望を伝える。
直接有権者の声を拾い集めている議員が、行政が見落としている部分を指摘するのは真っ当なことだ。

一方で、限られた財源の中でやり繰りをし予算を決めている首長は 、議員をはじめ団体や有権者などから上がってきた全ての要望をいったん受け、最終的に自身の責任で取捨選択する。
要望を切り捨てた際は 恨みつらみを言われるかもしれない。
つらい立場ではあるが、好んで首長になったのだから それも受け止め、堂々としていればいい。

春日市議会9月定例会における井上澄和市長の発言が酷かった。
質問に立ったのは吉居恭子市議、この日は 弊社が報じてきた 放課後児童クラブの指定管理者㈱テノ.サポート(福岡市 代表者 池内比呂子氏)の おやつ代の実費徴収の取り扱いについて質問することになっていたので注目されていた。
(おやつ代の取り扱いに関する珍答弁は別途報じる。)



吉居市議の質問の前半は、市民生活への支援策として「18歳までの医療費無償化」「小中学校給食費無償化」「就学援助の認定基準額の大幅引上げ」「3歳未満児の保育料減額」「全世帯への光熱費等の支援」など 確かに多岐にわたり 予算の掛かることではあった。
とは言っても、前述の様に 有権者からの声を行政に伝えるのが議員の務めである。

井上市長は「答弁に入る前に」と前置きをして、自治体の予算がなんたるかについて、吉居市議のホームページの内容まで引用して、「自治体経営に無知」と言わんばかりの主張を約6分30秒続けた。

そして、「反問権」を行使してきた。
反問権とは、議員からの質問の趣旨や内容などを確認するため、首長が議員に質問することを指す。
井上市長が吉居市議に尋ねたのは、

1.あらゆる事務事業をそれぞれ最も進んでいると思う自治体に合わせるということができると思って、このような質問をしているのか。
2.あらゆる面で最高のサービスを提供していると思われる自治体があれば参考にするので紹介してほしい。
3.提案の支援策に必要となる膨大な財源をどこに求めるべきと考えているのか。

の3点、中身がないのはもちろん、議員の質問権を封じようとしていると受け止められても仕方がない内容で、公の場で吉居市議を貶めようとする意図が見えた。

7期目に入った井上市長だが、発言を聞いた市民からは「市民の代表に対して高飛車な物言いは失礼だ」「度量の小ささが際立った」などの声が上がっている。



 

上場企業が協定書違反、監査から厳しい指摘

春日市の監査委員が、放課後児童クラブを運営する指定管理者 ㈱テノ.コーポ―レーションの監査を行った結果を公表した。
同社は福岡発の上場会社、異次元の少子化対策で株価も上昇しているが、情報公開においては極めて消極的、実費聴取のおやつ代さえも 何に使ったか黒塗りで公表しない残念な企業だ。

今回の監査で、テノ社が複数の基本協定書違反を行っていることや、基本的な経理の知識が不足している点を指摘されており、公共事業にも拘わらず ブラックボックス化していたテノ社の運営が、いかに杜撰だったかが明らかになった。
また、市側も 補助金で購入した備品の取り扱いについての規定に則っていない点など不備が指摘されている。

監査結果(春日市公式ウェブサイト)はこちら

これで謎が解けた。
今まで 情報公開請求で テノ社と市が結託し、肝心な箇所を黒塗りにしてきた理由は ここにある。

そもそも、上場企業が 協定書違反を犯すこと自体が考えられない。
市側も基本協定違反を把握していたのではないか。
情報公開請求があった時に気づくはず、気がつかなければ 行政のプロ失格だ。

おそらく、情報公開請求を受けた際、市はテノ社の違反と自らのミスに気がつき、公開することができず黒塗りで提出する判断をしたのだろう。
そして、公開している他の公共施設の事業報告との整合が取れないため、 他の公共施設の事業報告まで黒塗りにしたと思われる。

おかげで 春日市民は図書館がいくら分の図書を購入したか 知ることができなくなった。
また、議会も 予算決算の審査で公共施設の収支を見ることができない。
これは異常なことだ。

6月20日から一般質問が始まり、岩渕穣議員、吉居恭子議員、船久保信昭の3人が監査結果について質問する。
特に、岩淵議員と船久保議員におかれては、この異常事態を改め、公共施設の収支は全てオープンにするよう求めて頂きたい。

大任町と同じと言われないように。





令和4年度公の施設の指定管理者に対する監査結果報告

(1) 指定管理者に対する指摘事項

ア 帳簿の整備及び経理の区分について
指定管理者は、本業務に係る帳票や記録を整備し、常にその状況を明らかにしておかなければならず(基本協定書第23条)、本業務の実施に係る経理についてはその他の事業に係る経理と区分しなければならない(基本協定書第28条)。
しかし、本業務に係る請求書、領収書等の証憑や帳簿を本業務以外の業務に係るものと一括して管理しており、本監査においてそれらの書類を円滑に提出することができなかった。
本業務に関する帳簿と証憑を区分して保管し、独立した経理規定及び会計帳簿書類を設け、会計年度における施設の収支状況が明らかになるようにすることが必要である。
基本協定書違反

イ 支出(計上)内容について
(ア)児童クラブを利用する児童の父親に係る弔慰金10,000円児童クラブを利用する児童の父親に係る慶弔は、本業務の範囲外(基本協定書第7条ほか)である。
(イ)小口現金の紛失金16,000円現金の管理は、厳重かつ適切に行う必要がある。
基本協定書違反

ウ 収支決算書等について
(ア)収支決算書は予算と比較する形で作成されているところ、予算は現金主義で計上されているが、決算において発生主義に基づく項目(減価償却費)が計上されていた。予算と収支決算書は計画された業務が適切に実施されたかどうかを確認できるように、同じ基準で作成すべきである。
(イ)新型コロナウイルス感染症対策関連の補助金等に関する収入及び支出が計上されていなかった。また、一部の支出について、計上区分が誤っていた。
(ウ)「その他」の項目があり、その内容が分かりづらいものとなっていた。
基本的な経理の能力がない

 

(2) 所管課(市)に対する指摘事項

ア 補助金の活用により購入された備品について、備品台帳への登録が行われていなかった。
基本的な業務を怠っている

イ 指定管理者は、指定管理料について、児童クラブに係る修繕費の年間の実績額が基準額に満たない場合は、その満たない部分の金額(以下「剰余金」という。)を本市へ返還しなければならない(基本協定書第25条第3項及び年度協定書第4条第4項)。しかし、指定管理者に対し、令和3年度における剰余金147,787円の返還を求めていなかった。
協定書違反を指摘していない

 

井上市長の資産報告に虚偽記載の疑い?

殆どの自治体において、首長には政治倫理条例に基づく資産報告書の提出が毎年義務付けられており、不正な収入等がないか審査会がチェックすることとなっている。
しかし、審査会の委員は首長が委嘱することになっており、構造的に審査がザルになりがちという声もある。

ところで、春日市の井上澄和市長の資産報告書の内容に「記載漏れ 或いは虚偽記載の疑いがある」として 2月1日付で 市民65名が調査請求を行っていることが分かった。

疑義の根拠として「井上市長は7年間で約2億円の収入を得ているが、贈与の記載もないのに資産が減少している」ことを挙げている。
調査請求書には、平成27年から令和3年分まで過去7年の資産報告書の明細を一覧表にした資料が添付されているが、確かに不思議な点がある。

収入面では 2回の退職金計3884万円を含め 7年間で約2億円、一方資産では 預貯金が増えるも借入金がそれ以上増え、不動産・動産、有価証券等含めた資産が 合計で418万円目減りしていた。
2億円収入がありながら資産が 418万円減少ということで、調査請求書は「タンス預金をしているなら別だが、社会通念上考えられない」と指摘している。

春日市長の給与は条例で月額95万2100円と定められており、県内60自治体のうち 5番目に高く、令和3年実績でボーナスを含め年間1648万円の所得があった。
また、1期4年務め終える度に 退職金が1942万円支払われるが、6期目の井上市長には既に5回、そして任期が終わる4月には6回目が支払われることになっており、その合計額は 1億1652万円に上る。

今後、審査会で調査が行われるが、本当にこれだけ貰っても資産が目減りするなら「市長」という仕事は割に合わない職業ということになるだろう。

核心に触れない質問をする市議

首長が批判をかわすため、議員に一般質問を指示するケースがあるという。
職員が予め「問題点を鋭く突っ込んだふうの原稿」を準備して議員が質問、再質問、再々質問までして 最後は納得して終わるパターンだ。
福岡都市圏の議会に限って言えば、こうした猿芝居はないと思われる。

ところで、春日市議会12月定例会の一般質問の動画及び会議録が公開された。

昨年来 弊社が報じている放課後児童クラブの決算・予算の収支内訳書が黒塗りで公開されている問題について、迫賢二議員が質問に立った。
迫議員は、「黒塗りでの公開は透明性が欠ける」と市の対応を批判しながら、その理由について核心部分を外した質問に終始、これに対し、井上澄和市長はいかに黒塗りが正当なものか理路整然と答弁し、対応に全く問題がないことを強調した。

弊社が指摘しているのは、
① 実費徴収したおやつ代の合計約2000万円の支出額が黒塗りとされていること
② テノ社が アレルギー等の危機管理マニュアルを著作権を理由に公開しないこと
③ テノ社の収支内訳を黒塗りにしたことが発端で 図書館など他の公共施設の収支まで黒塗りとなり、議員も予算の使い道をチェックできなくなったこと
である。

迫議員は質問の中で、「一方的な論調がウェブニュースなどに掲載されている」と発言していることから、おそらく弊社の記事を読んでいると想像するが、見事なくらい核心に触れていない。
市立図書館の図書購入費まで黒塗りで議会がチェックできないというのに、たいへん物分かりのいい先生だ。

テノ社に関する過去記事はこちら

迫議員の一般質問動画はこちら

学童危機管理マニュアル、著作権理由に不開示?

「子育てしやすい街」というイメージの春日市だが、引越し先を探している子育て世代が同市の学童保育の実態を知れば、候補から外すことになるだろう。

市民が市に対し、放課後児童クラブ(学童保育)の「安全危機管理マニュアル」「けが、病気対応マニュアル」等の情報開示を求めたところ、「公表権を持つ指定管理者(テノ.サポート社)が 開示に反対意見を表示した(著作権法第18条第3項第3号)」との理由で開示しないことを決定した。
つまり、運営するテノ社が開示を拒否したので見せられないというのだ。
テノ社と言えば、実費徴収した おやつ代の支出を黒塗りにして開示しないことで知られる。

市民が安全危機管理マニュアルの情報開示を求めたのには理由がある。

令和4年8月、テノ社が指定管理者を務める福岡都市圏の某小学校の学童保育で、担当者(支援員)がアレルギー反応を起こした児童の対応を誤るという重大事案があった。

その児童は 卵・小麦アレルギーが有り「エピペン」を所持、エピペンとは、医師の治療を受けるまでの間、アナフィラキシー症状の進行を一時的に緩和し、ショックを防ぐための補助治療剤(アドレナリン自己注射薬)である。
食物によるアナフィラキシー発現から心停止までの時間は わずか30分と報告されており、症状があらわれたらできるだけ早期にエピペンを注射するとともに、救急車を呼ぶこととされている。

こうした対応は学校現場においては常識で、日頃から保護者も同席する中で研修も行われているという。



しかし、事件は同じ学校の敷地内、学童保育の施設内で起こった。
当日、学童保育で誤ってアレルギー物質入りのおやつが児童に提供され、腹痛が起こり嘔吐を始めたが、支援員はエピペンを使用せず 母親に連絡したのである。

母親が到着して 病院に連れて行き幸いにも大事には至らずに済んだが、30分以上時間が経過しておりアレルギー対応としては不適切、テノ社の安全危機管理体制が疑われる状況だった。

この話が保護者間のネットワークで広まり、テノ社が運営している春日市放課後児童クラブの保護者からも心配する声が出てきた。

そもそも安全危機管理マニュアルはあるのか、児童クラブに常備しているのか、アレルギー対応について記述があるのか、エピペンについての知識があるかなど、子どもを預ける親にとって把握しておきたいのは当然だ。

公共施設の事業における児童の安全危機管理マニュアル等が、そもそも著作権法の著作物に該当するのかという問題もあるが、6期24年の井上市長もテノ社の主張を認めた格好となっている。
市の担当者は、「マニュアルは見せることができないが 疑問点があれば個別に回答する」としている。

テノ社と春日市が実費徴収のおやつ代をいくら使ったか黒塗りで出してきたのにも驚いたが、両者の隠蔽体質は筋金入りの様だ。

春日市長に読んでほしい社説

1月12日の西日本新聞の社説は、春日市の井上澄和市長にとって耳の痛い指摘だろう。
冒頭に、「行政機関が持つ情報は公開が原則だ。悪質な情報隠しや非公開は住民の信用を失墜させる。首長は常に肝に銘じておかねばならない」とストレートな正論。
実費で集めたおやつ代の支出を黒塗りで公表しない春日市長もそうだ。

参考 → おやつ代と保険代を隠す学童保育(2022/8/20)

参考 → 図書購入費も黒塗りの怪(2022/9/2)

また、大任町を例に挙げ、「厳しい視線は町の行政全体に向かっている。是正できない町議会も同罪」と厳しく断じている。
春日市議会にも言えることだ。

参考 → 市議会が おやつ代黒塗り企業を承認(2022/9/29)

更に「情報隠しは主権者である住民への背信行為、職員にも継続的な研修を求めたい」と続く。
井上市長の判断だとしても、それにモノを言えない職員も みな同じと見られて仕方がないだろう。

最後に「国、地方を問わず行政機関全体に、不都合な情報を覆い隠す温床がないだろうか。首長や議員に対する行政職員の忖度は誤った判断につながる。悪意があろうとなかろうと起こり得る。」と結ばれている。
職員も本当は分かっているはず、大任町を笑えないと。