在任中パーティ自粛発言の余波

岸田総理は2月29日の衆議院政治倫理審査会における野田佳彦議員の質問で、「在任中はパーティをやることはない」と言わされてしまった。
かなり後悔しておられるのでは。

5日の参議院予算委員会では共産党の田村智子委員長が質問に立ち、総務省が岸田総理の政治資金団体「新政治経済研究会」の過去5年分の収入のうち、政治資金パーティによる収入額と割合を答弁した。(下表の通り)


令和4年にはパーティで1億5509万円もの収入があり、収入の98.4%を占めている。
これまで岸田総理が大臣規範に反し、「勉強会だから問題はない」とうそぶいてまでパーティを開催してきたのは、私設秘書や運転手、事務担当者の給与の支払いなど事務所を維持する費用を稼ぐ必要があるからだ。

「在任中はパーティをやらない」という発言を聞いて、林芳正官房長官もギョッとしたのでは。
林氏も外務大臣だった令和4年、パーティを8回開催し 8468万円の収入があった。


これから大臣になる先生方は、在任中は懐が寒くなることを覚悟しなければならないだろう。

政倫審に呼ぶならこの人

自民党安倍派の事務総長だった下村博文元政調会長が、衆議院の政治倫理審査会に出席する考えをSNS上で表明した。

下村氏は記者会見で、キックバックの協議があったことを言明しているキーパソン、敢えて政倫審に出席し、身の潔白を晴らしたいという想いがあるのだろうが、吉と出るか凶と出るか。

国内外の問題が山積する中、いつまでも「政治とカネ」問題に時間を費やす訳にはいかない。
下村氏以外であと1人、絞って政倫審に出席を求めるとすれば、宮澤博行元防衛副大臣だろう。
宮澤氏は「安倍派を介錯する」と発言したほか、かなり際どい発言をしている。

「派閥の方から『収支報告書に記載しなくてよい』という指示がございました」
「こうなった以上、正直に申し上げます。『大丈夫かな?』とは思いましたけれども『これで長年やってきているんだったら適法なのかな』と、そういう風に推測せざるを得ませんでしたので、その指示に従ったわけです」

「『しゃべるな!しゃべるな!』これですよ」
「仲間の信頼を裏切ってしまったわけですので、これについては慎重に考えたいと思っております」

「“一時の感情”といえばそうかもしれませんが『その(更迭の)判断はないだろう』」
「不記載ということはお詫びしなければなりませんけれども、厳正に管理をしてきて『この結果ですか?』ということは正直、大変残念」
「国民の皆さんに開示するときが来たと私は判断致しました」

誰がいつ「記載しなくていい」と指示を出したのか?
個人で貰ったのか、それとも政治団体に貰ったという認識だったのか?
誰が「しゃべるな」と言ったのか?
岸田総理の更迭の判断に対してどう思うか?
など、宮澤氏なら正直に答えてくれるだろう。

宮澤氏は、前回衆院選は選挙区で敗れ比例復活で当選、このままだと次期選挙もかなり厳しいと思われる。
ここは自ら政倫審に出席し 真相を明らかにした方が、確実に有権者の好感度が上がるのでは。

長老議員に厳しい意見書

鞍手郡小竹町では、令和4年12月に24年ぶりとなる町長選挙が行われ、無所属新人でNPO法人役員の井上頼子氏が元町議ら2人を破って初当選を果たした。
しかしこの1年、町長に対し、複数の町議による品位のない言動が続いてきたという。

一つ例を挙げると、昨年9月議会の補正予算審査特別委員会で、和田賢二郎議員(83)が「町長さん、口ちゃ便利なもんですね、嘘が平気で言えますか」と侮辱と取れる発言を行った。
その場で委員長が謝罪するよう促したが、「私は嘘を言うてない、本当にそう思ってますから」と開き直った。

令和5年9月19日 補正予算審査特別委員会



 

このやり取りはYoutubeの小竹町議会チャンネルで公開されていたが、さすがに目に余ると感じた一般町民が、昨年12月、議長宛に政治倫理上の問題として調査を行うよう請求を行っていた。
その後、第三者による政治倫理審査会が開催され、当事者に聞き取りを行い、取りまとめた意見書が 今月提出された。

意見書によると、和田議員は「人を傷つけたのなら、これは私の発言が悪いと思います」と反省の意を示しながらも、「議長、副議長から何の注意もない。それは皆さんが私を支援してくれていると私流に解釈する」と発言を正当化、更には「(町長が)いかに嘘をついているか、例えば9月議会、5回ですよ。訂正して謝罪をしている」など、町長が議会において虚偽発言を繰り返したとの供述を行ったという。

審査会の結論は、
「(和田賢二郎議員の)発言は、品位と名誉を損なう言動として政治倫理条例に抵触するものと判断せざるを得ず、かつ、今後も同様の発言を行うおそれは否定できない」、
議会の場における侮辱、または名誉毀損行為を議会全体が容認する如き雰囲気、あるいは 議員が町職員に対しいかなる発言をしても許されるとの議会の認識を示すものとすれば、町民の議会に対する信頼を大きく失墜させるものであり相当問題
と締めくくっている。

素晴らしい審査会の意見書、春日市の政治倫理審査会とは大違いだ。
あとは、和田議員が同様の発言を繰り返さないか。
和田議員以外でこれまで同様の発言を行ってきた議員らが、今後言動を慎むかどうか。
そして、彼らがこうした言動を繰り返した場合に、議長や委員長がしっかりコントロールできるかである。

人口約7000人、高齢化率 42%と少子高齢化が進む小竹町だが、町民の間からは議員が個人的な問題を議会に持ち込み、町政を停滞させているとの指摘がある。
30年後、50年後を見据えた政策提案が期待されるが、ベテラン議員らにそれができるか注目が集まっている。

高い倫理性が求められる政治家

多くの市町村において、首長や議員を対象にした「政治倫理条例」が制定されている。
その目的として、市民全体の奉仕者としてその人格と倫理の向上に努め、市政に対する市民の信頼に応えることと明記されている。

 

忖度が働く政治倫理審査会

政治家が政治倫理条例を遵守しているかどうか疑わしい事実がある場合は、住民の求めに応じて「政治倫理審査会」が事実関係を調査報告をすることになっているが、審査会が機能していないとの指摘が多く聞かれる。
というのも、審査会の委員は、弁護士、税理士など士業や大学の先生が選任されることが多いが、委員が調査対象となる首長や議員と個人的な関わりがあり忖度するケースがあるからだ。

最近では昨年、春日市において、市長の資産報告に疑義があるとして市民が審査請求を行ったが、市長が疑惑を払拭する根拠書類の提出要請を無視したにもかかわらず、審査会としてそれ以上の要求をしなかった。
審査会に利害関係者がいては客観的な審査ができないので、狭い自治体の場合は市外、町外在住の委員を選任するべきだろう。

春日市長等政治倫理審査会 会議結果

 

政治倫理条例がない県議会

ところで、県道延伸予定地を 県議会議員の親戚が代表を務める会社が購入後、県議とその家族が所有する不動産を担保に提供しているケースがあった。
また、親戚が代表を務める事務所を県議が賃借し、家賃の半額を政務活動費から支出しているケースもある。

弊社の記事を見た読者から、「政治倫理審査会で審査されるべきでは」という問い合わせがあったので、福岡県の条例を調べてみたところ 政治倫理条例がないことが分かった。
一般財団法人地方自治研究機構のホームページによると、現在政治倫理条例を制定している都道府県は9団体(岩手県、宮城県、福井県、三重県、滋賀県、奈良県、鳥取県、広島県、長崎県)ということで、意外だった。

一般財団法人地方自治研究機構のホームページ

政治倫理条例がないからと言って、何でも許される訳ではない。
福岡市議会の政治倫理条例を例に挙げると、議員の責務として「市民全体の代表者として市政に携わる権能と責務を深く自覚し、市民の信頼に値する高い倫理性を持つとともに、市民に対し、常に政治倫理に関する高潔性を示すことができるよう努めなければならない」と明記されている。

県議に高潔性が求められていることは言うまでもない。

何かと話題になる坂平副議長

県内4番目の人口を擁する飯塚市の市議会に、議長になるために500万円を保証金として渡そうとした 「太っ腹の市議」がいるという。
市民には全く理解できない話だが、地方議員にとって「議長」というポストは魅力があるものらしい。

 

議長選挙前はドロドロ

一般的に、首長(知事・市町村長)は「相応の能力」と「最低限の品格」が求められ、選挙で勝つとなるとハードルも高い。
一方、多少若い頃ヤンチャした者でも、地域活動に汗をかき 周囲が認めれば 選挙で「議員」に押し上げられ、期数を重ねていくと議長になるチャンスは出てくる。
地方自治体の中で、首長と対等な議会のトップということで、この上ない名誉職の様だ。

チャンスがあるといっても、改選後の議会で行われる議長選挙で勝つ必要があり、派閥争いがある場合は 思い通りにいかないこともある。
そこで議長選直前になると、票を固めるために派閥の議員らが集まって、様々な工作が繰り広げられるのが常で、
「A議員には あの有力支援者から頼んでもらおう」
「B議員は 女性問題を知っていると言えばこっちに来るだろう」
「C議員は 委員長ポストをエサに声かけしよう」
といった生々しい会話が飛び交う。

こうした 背景もあるので、金で話をつけようとする議員がいても不思議ではないが、地方で500万円をポンと出せる者はそういない。
資産家か 余程金回りがいい議員と思われる。

コンプライアンスの厳しい令和の時代に、札束で名誉職を手に入れようとする議員と、それを擁護する低レベルの議員がいることを有権者は知っておく必要がある。

現在、話題の人物は刑事告訴されていると共に 政治倫理審査会で審査されている最中で、最終的な結論は出ていないが、議場で発言された公式な議事録と取材に基づき、稿を進めていきたい。



 

議場での仰天発言

飯塚市議会では2年毎に議長が交代することになっているが、令和3年5月25日に 任期折り返しの議長選が行われることになっていた。
その前日、議長になりたかった副議長が同僚議員に対し、500万円を渡すことなどを条件に 投票依頼をしたという話で、全容は 同年の6月議会最終日の会議録(→)に、また録画中継(→)も残っているので、リンク先を参照して頂きたい。

それは「坂平末雄副議長に対する副議長辞職勧告決議案」に対する小幡俊之議員の賛成討論の中で述べられた。
以下 まとめると、次のようになる。



議長選投票日前日の夕方、小幡市議の事務所に 古本俊克市議と坂平副議長が訪ねてきて2つのお願いをされた。
1つ目は、坂平副議長から「残り2年の任期のうち最初の1年を自分が、後の1年を小幡市議が議長になるということでお願いしたい」と提案があった。
「議長選で坂平に1票入れてほしい。その代わり2日後に保証金として500万円を渡す。それと明日までに1年後の議長の辞表願を予め手渡しておく」という条件を出してきた。

2つ目は、坂平副議長から「議長選の票が足りないので ある会派の3人の議員に白票を投じるよう頼んでほしい。それで自分が議長になれば、その会派の代表を副議長にしてやる」と依頼された。
そして、「仮に議長選に敗れた場合、副議長を辞めると約束する。副議長の辞職願を今渡すので、明日これを3人の議員に見せて説得してほしい」と言われた。

小幡市議が古本市議に「なぜそこまでして坂平副議長を応援するのか」と尋ねたところ「道祖議員(立憲民主党)に頼まれた。2年前の借りがまだ残っている」と意味不明の答えだった。

結局、翌日の議長選で坂平副議長は敗れたが、手渡した副議長の辞職願を撤回し、何事もなかったかのように副議長の席にしがみついており、決して容認できない。
よって、坂平副議長は副議長にふさわしくない。






以上であるが、当日採決が行われ、賛成10、反対8、棄権8で、「坂平副議長に対する副議長辞職勧告決議案」は可決された。
しかし、1年3ヵ月以上経った現在も副議長職に止まっており、来年4月の改選まで続けていく様だ。


坂平末雄副議長に対する副議長辞職勧告決議案 議決結果

 

刑事告発と政治倫理審査会

議会の議決は重い。
副議長辞職勧告決議が可決されたのにも拘わらず、法的拘束力がないのをいいことに椅子にしがみついている坂平副議長、市民の目にどう映ろうと気にしない強靭な精神力をお持ちの方とお見受けする。

これまでの経過を時系列に記す。



小幡市議は昨年12月、贈賄申し込み容疑の告発状を福岡地検に提出しているが、現時点で検察が動いているかどうかは明らかになっていない。
しびれを切らした市民が 今年6月、市条例に基づき政治倫理審査会の開催を要求、開催される運びとなった。
8月30日の審査会では、非公開で坂平副議長と古本市議の聴取が行われ、「小幡市議議から保証金名目で500万円を求められた」と 食い違う証言がされている。

双方の主張が全く異なり、審査会もこれ以上の進展はないかと思われたが、10月7日の審査会での小幡市議に対する聴取で 新たな展開があった。

小幡市議によると、議長選より5日前の5月20日、古本市議から「今回の議長選、前期1年を坂平、後期1年を江口徹市議でどうか。坂平を1年で辞めさせるために1000万円の保証金を積ませるから江口に話してほしい」という提案があったという。
言われたまま江口市議に伝えるだけ伝えたが、当然のことながら江口市議が断った。
それで小幡市議に話が回ってきたというのである。

また、坂平副議長と古本市議から議長選の協力を求められた際の 録音データがあることが明らかにされた。
小幡市議は必要があれば買収に関する箇所の録音データを 審査会に提出する用意があると述べている。

録音データの存在はこれまで憶測の域を出なかったが、実際にあるとなれば新たな局面を迎えることになるだろう。


副議長はサカヒラの株主

坂平末雄副議長については、まだまだ興味深い話がある。
飯塚市の老舗企業で、生コン製造販売及び建設業を営む ㈱サカヒラ(飯塚市潤野1133-6 代表者 坂平隆司氏)という企業があるが、市内では納税額も多い優良企業として知られる。

そのサカヒラは、飯塚市発注の公共工事ほか、飯塚市が出資する 飯塚地区消防組合(飯塚市・嘉麻市・桂川町)及び ふくおか県央環境広域施設組合(飯塚市・嘉麻市・桂川町・小竹町)が発注する公共工事を請け負うこともあるが、市内の総合評価が最も高く、行政からの信頼も厚い。
最近では、令和3年7月に飯塚市発注の「幸袋交流センター建設工事」を 3億3625万1300円(税込)で落札している。



同年9月議会に、この契約の承認を求める議案が上程され、協働環境委員会での審査・可決を経て、最終日に本会議で賛成多数で可決し、サカヒラの契約が決まった。

これについて、市民から問題を指摘する声が出ている。
というのも、委員会で議案審査し、本会議でも賛成に手を挙げた坂平副議長が利害関係者だからだ。
提供頂いた資料は、毎年議員に報告が義務付けられている「資産等報告書(下図)」で、令和4年5月31日付のものである。

そこには、坂平副議長が サカヒラの株式を125株保有しており、1年で 625万円の配当を得ていたことが記載されていた。

議員に託された業務の一つは、行政の予算の使い方が適正かどうか審査することである。
● 市が 建設会社と3億円以上の契約をしようとしている。
● 市議がその会社の株式を所有しており、利益が出れば配当金をもらえる。
● その市議が、契約が適正かどうか審査して「賛成」で手を挙げる。

これが まかり通っていることに 市民が注目し始めた。





 

親会社と子会社の2社入札

前回、飯塚市議会で建設工事の契約議案審査を行う坂平末雄副議長が、令和3年にサカヒラ㈱から 625万円もの株式配当を得ていたことを書いたが、同業者の方から 普段見落としがちな一部事務組合における入札について情報提供があった。

ごみ処理施設等を広域で行う ふくおか県央環境広域施設組合(飯塚市・嘉麻市・桂川町・小竹町で構成)が行った入札に、サカヒラとその100%子会社である九特興業㈱の2社のみが参加して、サカヒラが予定価格いっぱいの高額で落札したというだ。
九特興業とは昭和39年創業の老舗建設会社で、現在はサカヒラの経営者一族が全株式を保有、本社もサカヒラと同住所で地元では同一視されている。



問題の入札は、今年 8月31日に開札された「嘉麻クリーンセンター最終処分場押え盛土築造工事」の条件付き一般競争入札、予定価格 8633万3000円(税抜)、経審800点以上の土木業者が対象で、公共工事が減りつつある筑豊地区において、誰もが欲しい工事と思われる。
経審800点以上と言えば 地区内に30社以上あり、本来なら多数の参加が見込まれたはずだが、入札が行われたことすら知らない業者が殆どだというのだ

公告期間は 8月1日から9日まで、同組合の公式ホームページや2市2町の公式ホームページでも案内されているので、公平公正に周知はされている。
しかし、公告期間が9日間と短かったことに加え、通常の市や町の発注ではなかったことから、業者が定期的にチェックしている工事関係のページではなく、普段開かない新着情報のページで案内されたため、見逃されてしまった様だ。

サカヒラと九特興業の担当者が、くまなく情報をチェックしていたという見方もあるがそれだけではない。
飯塚市議会の坂平末雄副議長は、市議会を代表して同組合議会の議員として参加しており、今年度の予算審議で当該工事が予算化されることを把握している。
更に ゴミ処理を所管する第一委員会の委員長を務め、6月の委員会で発注予定の報告を受けていた。
つまり、確実に発注情報を掴める立場にいたことは間違いない。

結果として 応札したのは サカヒラとその子会社の九特興業、落札したのが 坂平副議長(同組合議会では委員長)が配当を得ているサカヒラである。
これで競争と言えるのかという声もあるが、入札金額の不自然さが指摘されている。


ある県警OBの推理

ふくおか県央環境広域施設組合が公表している「嘉麻クリーンセンター最終処分場押え盛土築造工事」の入札結果表は、税抜金額と税込金額が分かりづらかったので注釈を入れた。(下図)

これを見ると、九特興業は予定価格 8633万3000円(税抜)と同額の札を入れているので 鼻から取る気がなかったことが分かる。
一方、サカヒラは8500万円(税抜)の札で落札、予定価格に対する割合(落札率)は 98.5%と 業者側から見た入札結果としては満点と言えるだろうが、「通常は有り得ない」結果に関係者から疑問の声が上がっている。

この入札は、 8月1日公告、同 9日に参加申込みが締め切られ、参加が認められた業者は 入札金額を書いた書類を郵便で事務局に送付し、31日に開封・開札という流れだった。

入札参加申込みを提出した業者は、締切までに何社が申込みをしたのか知り得ないので、どうしても落札したい業者は最低制限価格7833万4000円(税抜)に近い札を入れることになる。
ところが、今回の2社、九特興業は予定価格に対して100%、サカヒラは98.5%の札を入れており、競争する意思が見られない。

ある県警OBから次のような推理を聞くことができた。

「2社は札を入れる際、参加申込みが自分たちだけと分かっていたと思います。
何らかの方法で情報を得た可能性もありますね。
親会社と子会社の2社入札、子会社が予定価格と同額というのが 明らかにおかしい。
指名競争入札においては、辞退する代わりに100%の札を入れることはありますが、これは一般競争入札、何のために経費をかけて参加するんでしょうね。
1社入札の場合は 不調(入札無効)になるので、それを避けるために参加しただけ、そこで何も考えず100%の札を入れたのでは。
完全に入札を舐めてますよ。」


不自然な新体育館入札

ふくおか県央環境広域施設組合の土木工事の入札に、株主が同じ サカヒラと九特興業の2社のみの入札になった。
この2社が関係した入札と言えば、現在建設中の飯塚市新体育館建設工事の入札が思い出される。
3回目で決まったこの入札は、当時話題になり 地元紙も報じている。

経過は下表の通りで、
1)1回目の入札で、告示から参加締切まで土日を除いて たった8日間
2)1回目の入札日当日に、サカヒラJVと九特興業JVの2者が共に辞退
3)2回目の入札日前日に、サカヒラJVと九特興業JVの2者が共に辞退
4)サカヒラが組んだゼネコンが3回とも異なる
など、不自然な点が指摘された。

前回コメントをもらった県警OBが、この状況についての推理を語ってくれた。

1)について
入札の告示から締め切りまで8日間という短さ、JVの相手を決めて積算するには あまりにも短く、いわゆる不意打ち的な告示で、予め準備をしていた業者しか 間に合わせることができない。
前述の様に、サカヒラと九特興業は 同じ株主の企業、その2社だけが JVを組むことができたことになる。
公告期間を短く設定したのは市役所という点が気になる。

2)について
1回目の入札当日、2者が辞退しているが 参加者数の情報が漏れていたのでは。
なぜなら、仮に4者以上が参加していれば 入札は成立していた可能性が高い。
入札の予定価格を吊り上げる目的だったと想像するが、2者しかいないと分かっていたから 安心して辞退できたのだろう。

3)について
2回目の入札は 前日に2者が辞退している。
2者は 分離発注で落札できると踏んでいたところ、想定していなかった「東洋建設・赤尾組JV」が参加してきたので慌てたのでは。
1者入札だと成立しないため、2者共に辞退して 入札を流そうとしたのだろう。
4者以上が参加していれば 辞退はできないはずで、3者が参加するという情報が 漏れていたかもしれない。

4)について
サカヒラが組んだJVの相手が3回とも異なっているが、このような例は聞いたことがない。
一般競争入札にも拘わらず、サカヒラは3回とも辞退しており、初めから九特興業に落札させるつもりだったと想像できる。
三井住友建設、西松建設、淺沼組は 名前を貸しただけで、真面目に積算していないのでは。

以上は あくまで県警OBの推理である。
結局、予定価格を約2億円吊り上げて3回目の入札が行われたのだが、最低制限価格付近で 安藤ハザマ・九特興業JVが落札しており、ガチンコで決まったと思われる。
市役所が1回目の入札を辞退した理由を ゼネコンにヒアリングした際、2者共に 「予定価格を積算が上回ったため」と答えたという。

しかし、3回目の落札金額は 1回目の予定価格を下回っており、1回目の辞退理由が意味を成さないものとなっている。
1回目の入札を不調にして、工事費を2億円増額しようとしたところ、もう1者が参加してきたことで、思惑が外れ お粗末な結果となってしまったのではなかろうか。



 

13社中10社が辞退した入札

新体育館の建設工事の入札では、1回目と2回目が不調となり、3回目で 九特興業JVが落札した。

サカヒラJVと九特興業JVが1回目の入札を辞退した理由は「予定価格(25億8979万円)が積算より低かったから」、しかし3回目の入札で 予定価格が約2億円引き上げられたにも拘わらず、1回目の予定価格より低い 25億8700万円で落札したことから、「受注価格を吊り上げる思惑が外れたのでは」と 業界で当時話題になった。

その2年後、同工事に関連する物品納入案件において 冗談のような入札結果が披露された。

その案件とは「移動式観覧席」の設置費用、1回目の時には工事費に含まれていたが 、3回目の入札の仕様書で密かに分離され、別途発注されることになっていた。
「密かに」というのは、議案審査の際、役所から分離した旨の説明がなく議員に知らされていなかったという意味で、今年の6月議会に「移動式観覧席 7843万円」の財産取得議案が上程され、議員らは初めて知ることになる。

本来 建設工事に含まれるべき観覧席を分離発注すれば、建設業者ではない 物品納入業者に受注のチャンスが出てくる。

5月19日、「事務用品」の物品納入の登録業者を対象に 指名競争入札が行われたのだが、指名された13社のうち 何と10社が辞退、応札したのは 3社のみで そのうち グッドイナフ㈱が 7843万円(税込)で落札した。
10社の辞退理由を確認したところ、「商品が入手困難」「納期が未定」「納品後のメンテナンスが出来ない」などで、まるで 取り扱い出来ないことを分かっていながら 指名したようだ。

ちなみに 予定価格の算定のため、役所が指名した13社のうち2社に事前見積りを依頼していたことが判っているが、それがどの会社なのか 議会で尋ねられるも明らかにしていない。
明らかにできない理由があるのだろうか。

今回辞退した10社が事前見積りをしたことは考えられず、応札した3社のうちの2社ということで間違いなかろう。
㈱福岡ソフトウェアセンターは 飯塚市の第三セクターで業歴が長く 見積りは可能と思われるが、グッドイナフ㈱と ㈱S・Yはどうか。

問題視されているのは、その2社が 坂平副議長に関係する会社だったことである。



 

課長と副議長と業者で会食

12月議会に提出された請願の中身が衝撃的だ。
飯塚市新体育館移動式観覧式の入札において、 落札した業者と市の職員、そして 市議会議員が会食していたので、百条委員会を設置して官製談合の疑いがないか調査してほしいというもの。

請願したのは飯塚市の建設業に携わる市民3人、今年2月26日、市内の飲食店で 市職員(当時の契約課長)、落札した グッドイナフ㈱の代表者、そして 坂平副議長と某女性の4人が会食していたのを目撃したという。

9月議会の決算委員会において、上野伸吾議員の質問に対し 市はそのような事実はないという回答している。
しかし、今朝の朝刊で、11月28日に同職員は会食をしたこと認め 市に報告したと 地元紙が報じた。

明日8日の議会運営委員会で百条委員会を設置するかどうか協議されるという話だが、次号で移動式観覧席を落札したグッドイナフと入札に参加したS・Yがどんな会社か解説していくので 乞うご期待。






 

グッドイナフってどんな会社?

今年2月、契約課長(当時)と坂平副議長と女性、及び 飯塚市新体育館 移動式観覧席を落札した グッドイナフ㈱の社長が 会食をしていたことが、議会でも取り上げられているが、グッドイナフとはどのような会社だろう。

市内で その名を聞いたことのある人は殆どいないと思われるが、それもそのはず、平成29年1月5日設立と業歴が浅く、本社は飯塚市役所側の賃貸マンションの1室にあり、社員数1名の小さな会社だ。

法人登記を確認したところ、設立目的に「1.ガス,石油類,工業用薬品,石灰石,生石炭,消石灰,活性炭の販売,斡旋販売」と記載されている。
その後、飯塚市の建設・建築資材の物品納入業者として登録し、同30年3月に「活性炭入り消石灰納入業務」の入札に参加し見事落札、年間約1500~2500万円を売り上げている。
驚くことに、そこから令和4年度まで5年連続で落札しているので、社長はさぞ商才に長けた方とお見受けする。



同社は令和2年8月、定款の事業目的に「コンピュータ、周辺機器、通信機器、ソフトウェア並びに家庭用電気製品、電子機器及び事務機器、事務用品の卸・販売・販売代理・仲介・輸出入業務」を追加、翌年(令和3年)、飯塚市に事務用品と教育用品の物品納入を追加登録、新規参入ながらタブレットやクオカード等 1年間で約830万円分を売り上げることができた。

そして 今年5月19日の新体育館移動式観覧席の入札に至る。
13社中10社が取り扱いしていない等という理由で辞退する中、この程度の納入実績のグッドイナフが 7843万円で落札したのである。
事務用品を追加登録したのは、こちらが主たる目的だったと 関係者は見ている様だ。

以上、グッドイナフとはこんな会社だ。

ひとつ言い忘れていた。
ここの凄腕社長は 坂平副議長の後援会長だったという。



 

S・Yってどんな会社?

前述のように、新体育館移動式観覧席の入札に参加したのは3者、そのうち1者は ㈱S・Yという会社だが、調べてみたところ突っ込みどころ満載だった。

同社は平成25年に設立した会社であるが、代表者は坂平姓の女性、何と坂平副議長の奥様である。



そして、坂平副議長の資産報告書で、現在発行している400株のうち 208株を坂平副議長が保有していることが判った。
つまり、坂平副議長がオーナーを務める会社が、堂々と移動式観覧席の入札に参加していたことになる。



S・Yの過去5年分の飯塚市の発注実績を確認したところ、平成29年度から飯塚市クリーンセンターへの「酸素パイプ納入」の入札において令和元年を除く4回落札し、年間約1000万円の売り上げていることも判明、クリーンセンターへの消耗品納入の5年連続落札という芸当は、どこか別の会社でもあった話だが、これについては後述する。

新体育館移動式観覧席の指名競争入札に話を戻すが、指名されたのは13者、市はそのうち2者に事前見積りを依頼したとのことだが どの業者かは公表していない。
そして、13者中10者が「商品が入手困難」等の理由で辞退、参加したのが ① グッドイナフ(代表者が坂平副議長の後援会長)、② S・Y(坂平副議長がオーナーで代表者が奥様)、③ ㈱福岡ソフトウェアセンター(飯塚市の第三セクター)の3者である。

3者のうちの2者が坂平副議長が関係する会社、しかも業歴が浅く納入実績の乏しい企業である。
事前見積りについても、グッドイナフかS・Yに依頼した可能性が高い。

12月議会に提出された請願で、新体育館移動式観覧席の入札関係者が会食していたことが問題になっているが、参加していたのは以下の4人である。
1.落札業者したグッドイナフの代表者(坂平副議長の後援会長)
2.契約課長(当時)
3.坂平副議長
4.女性
4の女性について確認が取れていないが、S・Yの代表者である坂平副議長の奥様だったのではないかと関係者は見ている。



 

奥様は名ばかり社長、オーナーは坂平副議長

飯塚市議会では3月議会の合間を縫って、「新体育館移動式観覧席の入札に係る官製談合等調査特別委員会(百条委員会)」が開催されている。
1ヵ月後の市議選が気になりながらの審査で、委員の皆さんは大変そうだが、これまでの証人尋問でいくつか興味深い話が出ている。

その中で、入札に参加した3社の代表者の証人尋問のうちS・Yの代表者で坂平末雄副議長の奥様、由美氏の証言には驚いた。




Q 会社の住所は。
A 番地は分からない。
Q 指名業者にいつなり、何の業種を希望したか。
A 事務員に任せているので分からない。
Q 役所との取引実績は。
A 分からない。

(役所から)参考見積の依頼を受けたか。
A インテリア関係の知り合いの業者に相談した。業者名は迷惑をかけるので言えない。
Q 今回の入札について、市や議員などに事前の働きかけをしたか。
A 働きかけの意味が分からない。

Q 入札金額がちょうど8000万円ちょうどだが、どうやって決めたか。
A 相談して決めた。これくらいじゃないかなぁと。
Q 落とそうという意思がないように感じられるが、無理と判断していたか。
A 多分そうだったと思う。

Q あなたの会社の最大株主は。
A 主人(坂平副議長)。






社長とは名ばかり、本当に何も知らなさそうで、このような場に呼び出されてたいへんお気の毒である。
誰が実際に会社を動かしているかは容易に想像できるが、ここで「インテリア関係の知り合いの業者」というのが出てきた。

弊社ではこの業者について既に調べはついているが、この体育館建設工事ほか、他の市発注の大型工事に深く関与しており、今後の委員会審査が楽しみになってきた。



 

来期こそ議長に・坂平副議長

4月の市議選に向け、飯塚市議会の坂平末雄副議長が精力的に動いている。
丁寧な個別訪問、留守宅には討議資料と名刺、そして手書きの手紙を郵便受けに入れ足跡を残す、こうしたきめ細かさは新人候補のお手本となるものだ。

さて、坂平氏は今期4年間は副議長を務めた。
途中、副議長辞職勧告決議が可決されるも動じることなく辞任を拒否、議長の補佐役に徹し、また、時には入札案件を取り扱う契約課の課長を呼び出し飲食を共にするなど、プライベートでも行政と市民とのパイプ役として、「あなたの声を市政に」を実践してきた。



辞職勧告決議の原因となった2年前の議長選挙の際は、「この世は金ばい!」で有名になった古本俊克議員の仲介で、同僚議員に500万円の「保証金」を渡すという条件を提示して票の取りまとめを依頼したが、話はまとまらず敗れることに。
ここで言う保証金とは「1年間だけ議長を先にやらせてほしい。もし1年後、議長を辞めないで約束を破った時は、500万円は渡します」を意味するが、飯塚市議会では過去にもこうした例があったという。

古本議員は今期限りで引退の意向を示しており強力な後ろ盾が一つなくなるが、道祖満議員はじめ固い絆で結ばれた仲間がいるので夢を諦める必要はない。
保証金を積み増してキャスティングボードを握る会派に提示すれば、議長の椅子が手に入るかもしれない。

坂平氏の討議資料には、「住み続けたい飯塚市の実現のために今すべき事を、今行います」という約束があるが、今すべきことを今行わない議員はいないのでは…。
そんな約束より、政治倫理上の問題点を改める、例えば「自身が株主の会社の契約議案の採決には加わりません」とか「自身がオーナーの会社は市や組合の入札に参加しません」などの現実的な約束に差し替えた方が票になると思われる。

坂平氏におかれては、来期こそ議長としてご活躍されることを期待している。



 

坂平氏告発議案の賛否

飯塚市議会 3月定例会最終日、「百条委員会に出席を求められるも正当な理由なく出頭しなかった」として、坂平末雄市議を告発する議案が賛成多数で可決した。
今月中に福岡地検に告発状が提出されるという。

坂平氏を巡るドタバタ劇は、令和3年6月議会で議長選の買収疑惑が暴露され、副議長辞職勧告決議が可決したところから始まった。
昨年6月議会で議案となった新体育館移動式観覧席の入札が極めて不自然で、坂平氏の関係する2社(後援会長が代表を務める会社と自身が最大株主の会社)が関与していたことから 市役所を巻き込む騒動に発展した。

ところで、これまでの坂平氏にまつわる議案の賛否を表にしてみたが、なかなか面白い。
副議長の辞職勧告決議案は、選挙で選ばれた議員の身分に関わり慎重な判断が求められることから、棄権や反対が多かった。
移動式観覧席の疑惑が出た後の昨年9月議会では、百条委員会の設置を求める請願が出されたが、公明党などが反対に回り否決されている。

しかし、昨年11月に 坂平氏が入札の3ヵ月前に、当時の契約課長や落札した後援会長と会食をしていたことが明るみになると空気が一変、12月議会で同様の請願が再び提出され、賛成多数で百条委員会設置が決まった。



百条委員会では時間的な制約もあったが、かなり踏み込んだところまで解明できたと思われる。
肝心の坂平氏の証言は出頭拒否のため得ることができなかったが、疑惑は深まったと言えよう。

新体育館移動式観覧席の入札に係る官製談合等調査特別委員会

採決の結果、賛成19、反対5、坂平氏と同じ会派の瀬戸光市議、及び「この世は金ばい」で知られる古本俊克市議の2名が棄権した。
注目された公明党は、4人のうち3人が賛成に回り、田中裕二市議は反対した。
棄権した古本市議と同じ会派の田中武春市議が賛成したのは意外だった。



立憲民主党の道祖満議員は徹底して反対を貫いた。
反対討論では、「坂平氏は動画撮影を拒否しただけで調査に協力する意思はあった」として、告発を決定した委員会の手続きを批判した。

確かにそういう反論も分からぬではないが、撮影があっても やましいことが無ければ堂々と尋問を受ければ良かったはずだ。
それより、公明党の3人が賛成しているのに立憲民主党の2人が反対に回った構図を見て、自治労はじめ支持団体はどう考えるか心配になってきた。

井上市長の資産報告に虚偽記載の疑い?

殆どの自治体において、首長には政治倫理条例に基づく資産報告書の提出が毎年義務付けられており、不正な収入等がないか審査会がチェックすることとなっている。
しかし、審査会の委員は首長が委嘱することになっており、構造的に審査がザルになりがちという声もある。

ところで、春日市の井上澄和市長の資産報告書の内容に「記載漏れ 或いは虚偽記載の疑いがある」として 2月1日付で 市民65名が調査請求を行っていることが分かった。

疑義の根拠として「井上市長は7年間で約2億円の収入を得ているが、贈与の記載もないのに資産が減少している」ことを挙げている。
調査請求書には、平成27年から令和3年分まで過去7年の資産報告書の明細を一覧表にした資料が添付されているが、確かに不思議な点がある。

収入面では 2回の退職金計3884万円を含め 7年間で約2億円、一方資産では 預貯金が増えるも借入金がそれ以上増え、不動産・動産、有価証券等含めた資産が 合計で418万円目減りしていた。
2億円収入がありながら資産が 418万円減少ということで、調査請求書は「タンス預金をしているなら別だが、社会通念上考えられない」と指摘している。

春日市長の給与は条例で月額95万2100円と定められており、県内60自治体のうち 5番目に高く、令和3年実績でボーナスを含め年間1648万円の所得があった。
また、1期4年務め終える度に 退職金が1942万円支払われるが、6期目の井上市長には既に5回、そして任期が終わる4月には6回目が支払われることになっており、その合計額は 1億1652万円に上る。

今後、審査会で調査が行われるが、本当にこれだけ貰っても資産が目減りするなら「市長」という仕事は割に合わない職業ということになるだろう。