【記者’sEYEs】 – 大混乱の高島市政 [2012年7月18日16:21更新]

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5月17日、福岡市の土地開発公社職員・佐藤敬三被告が収賄容疑で逮捕された。しかもその「お詫び」のための会見が開かれた19日の前夜、市港湾局職員が酔ってタクシー運転手への暴行容疑で、さらに市保育課職員が飲酒の上で同僚への傷害容疑で逮捕されるという事件まで発覚した。 こうした不祥事の頻発に高島宗一郎福岡市長は、市職員に対し「禁酒令」を発表。ところがこれが大失敗。当初は賛否が半々だった市民も、「禁酒令」が及ぼす経済的影響を知るにつけ、政治がわからないヒステリーだと批判。慌てて「1ヶ月だから迷惑をかけるが理解してほしい」と、市長自らが言い出すに当たっては、あの大見得は何だったのだ、というマスコミ関係者もいる。

福岡市が情報提供?

今回の公社職員の逮捕は以前から噂が流れていた。中でも大野敏久副市長が、出身母体である福岡県警に佐藤被告の問題を通告、県警がこれを受け捜査し逮捕に至ったという話は興味深い。そもそも4年間で約1億円の歳費が必要な副市長職を、1人増やして3人にしたことが市民の不満を募らせた。しかも市民大学講座などで、大野副市長が「モラルの重要性」を語っても、肝心の市職員のモラルは改善されず、不祥事が連続。これでは大野副市長は何のためにいるのかわからない、などと陰口が叩かれ始めた矢先の事件だったからだ。

県警関係者は次のように語る。「本来、所轄の警察署が担当する事件。佐藤被告の職務責任がはっきりしない。当初は詐欺事件がいいところだった。佐藤被告がコンサルタントと親しく、用地買取価格を変更出来たため、職務責任があったと判断しているが、腕のいい弁護士がつけば職務責任の有無が争点となる。大野副市長の嘆願もあって、贈収賄事件として本部特捜班が取り扱うことになった」。もっとも東京では、早くから議員が本命といわれてきたが、事件はそこまで波及せず終わり、僅か数十万円の贈収賄事件で幕を閉じてしまった。

しかも佐藤被告が事情聴取を最初に受けたのは月曜日、だが高島市長はフランス出張中で不在、福岡市の要請で高島市長が帰福する水曜日まで待ち逮捕、と聞いては、あまりにも政治的で開いた口もふさがらない。

高島市長は記者会見で「大変申し訳ない。この時代に公社が必要なのかどうか、存続も含めて考える」と表明、責任者に副市長を任命した。

こうした市執行部の動きに不満を漏らす職員もいる。「普通なら、市は職員を守るべき立場。市職員を執行部が告発するとなれば、上司の顔色を見ながら仕事をすることになる。贈収賄などとんでもないが、親しい人間と話していただけで噂を立てられ、足元をすくわれかねない。良い街を造るため積極的に関与したら何を言われるかわからない」。この裏側には、市執行部は職員を守ってほしいという虫のよい考えも垣間見える。だが不良職員を警察に突き出すような執行部のもとで、市民に奉仕するサービス従事者として満足に仕事が出来ない、という心情も窺わせる。市職員は監視の目を光らせる執行部の下で、隷属を強いられることになる。

突然の禁酒令

記者会見が行われた18日夜、今度は酒に酔った市港湾局職員がタクシー運転手に暴行、また市保育課職員が同僚に傷害を負わせ、いずれも逮捕された。目を真っ赤にした高島市長が「酒を禁ずる」と叫んだことが、物議を呼んでいる。当然だが、禁酒の影響は市役所内にとどまらない。まず福岡市は福岡市最大の企業といってよい人員を抱えている。その数約1万6300人。上から下まで1ヶ月間の、酒を伴う外食費を5000円と計算しても8000万円。1億円近い金が福岡市から消える。しかもそれを決断したのが福岡市の市長なのである。

市職員がよく利用するスナックには金曜日というのに客がいない。「あの人は政治家なのかねえ。市職員の問題を市役所の中だけで解決するのなら、懲戒免職や退職金没収などでも、私らは理解するし応援もするけど、周りに迷惑かけるようなことをしたらいけんわね」というママ。間接的な波及まで考えると、1億円どころではなく数億円が地域経済から姿を消すような政策を、ヒステリックに発表した高島市長に幻滅した人たちは多い。

港湾局職員暴行で、反高島市長派が増えている。タクシー運転手はこういった。「市職員の陰口はスリー、ツー、ワン、ゼロですよ。桑原市長が3期、山崎広太郎市長が2期、吉田市長が1期、そして高島市長は途中辞任という意味です。女性問題があるというもっぱらの噂ですし、屋台課長まで作っておいて禁酒令では矛盾も甚だしいでしょう。タクシーの客も減りました」。

実際、東京からテレビ局や週刊誌が大挙して押し掛け、初めて政策の幼稚さに気がついた高島市長。今では頭を抱えているという。

誰か止めるブレーンはいなかったのかという質問に、ある古参議員は語っている。「みんな同じ水準です。市長は若手の耳当りの良い意見しか聞かない。誰が市長にしたといわれると困るが、あそこまでどうしようもない人とは思わなかった。大阪の橋下市長を横目で見ながらパフォーマンスしているだけ。周りのブレーンが大阪とは違うことに気づかず、しかも自分が時代を体現していると思っているだけに、よけい始末が悪い」。

誰も諌言することが出来ないお子様執行部の暴走。いったい誰が止めるのか。