福岡県提訴の「突破者」に聞く(1)県警の行為は作家の全否定 [2010年10月25日10:17更新]

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(10年9月号掲載)

作家・宮崎学氏の著作(左)とそれを原作とするコミック福岡県警が昨年、暴力団を専門的に扱う雑誌やコミック誌を販売しないよう県内のコンビニエンスストアに要請、販売が中止されたことに関連し、著書「突破者」などで知られる作家の宮崎学氏が「表現の自由を保障した憲法に違反する」などとして、福岡県に損害賠償を求める訴訟を同地裁に起こしている。

本紙は先月号で県暴力団排除条例に対して根強い批判があることを取り上げたが、宮崎氏は県の一連の施策について「ヤクザを異端視して排除するという発想や規制は、さらなる悪循環を招くだけ」などと批判する。

今回の提訴に踏み切った理由、「暴排」の名の下に規制や罰則が強化される現状について、宮崎氏に聞いた。



 

宮崎氏が提訴したのは今年4月。訴状などによると、県警は昨年12月末、「県コンビニエンスストア等防犯協議会」に暴力団を扱う雑誌・書籍の撤去、販売中止を要請、今年2月には書店団体にも同様の要請をしたという。

この際、県警は「暴力団関係書籍・雑誌」として月刊誌3冊とコミック73冊を列記した一覧表を添付したが、この中に宮崎氏の著作を原作とするコミック1冊が含まれていた(写真)

宮崎氏側は

(1)誰がどのような基準で、前記の著作物を暴力団関係書籍・雑誌だと判断したのか、まったく不明

(2)県警が行った「要請」は事実上の「強制」である

(3)著者・出版社側に対する事前の告知や反論の機会がなく手続きに不備がある

などとして「一連の県警の措置は、表現・出版の自由を規制する違憲・違法な行政行為」と主張。「原告の著作活動への妨害であり、県から『有害』とされたことで精神的苦痛を受けた」として計550万円の損害賠償を求めている。

宮崎氏  その内容がどうであれ、表現したいという欲求が作家の原点。独立した作家側の欲求を容認する社会が自由な社会であると思う。それを妨害することは作家たる存在の全否定。だから、自らの存在を守るために提訴したわけや。 

福岡県警の行為は出版界全体に悪影響を及ぼす大問題。だから最初は友人の作家仲間や出版社と連名で起こすことも考えたけど、面倒だから止めた。

表現というのは個的なもの、個として反応するべきや、と。

作家の宮崎学氏宮崎学氏(写真)は京都府出身。グリコ・森永事件では「キツネ目の男」に似た重要参考人Mとして警察にマークされるという経験を持つ。1996年、「突破者」(南風社)で作家デビュー。警察の腐敗追及やアウトローの世界を主なテーマに執筆活動を続けている。

今回提訴した4月1日は奇しくも、福岡県が定めた暴力団排除条例が施行されるその日であった。9月8日には第2回口頭弁論が同地裁で開かれている。

(続く)