(10年2月号掲載) 天下りや談合、族議員の暗躍などが明らかになり国民の批判を浴びた旧道路関係4公団。小泉政権下において同公団が分割・民営化されたのは05年、利権を排し経営体質を改めるのが目的のはずだった。 ところが4年あまりが経ち、国土交通省や一部の識者から「民営化は失敗だった」との指摘が出ているのが現状だ。 民主党が公約に掲げた高速道路の一部無料化。その実現へ向け政府は、6月をめどに実施する高速道路無料化実験の対象路線を2月2日、発表した。 この直前の1月末、前原誠司国土交通相は高速道路のあり方を抜本的に議論する検討会を設置する方針を表明。「民営化は看板倒れだった」と、民営化の枠組み見直しも含め検討することを示唆している。 「実は、国交省の幹部からも『何のための民営化だったのか分からない』という声が漏れています。民営化で誕生した西日本高速道路など特殊会社6社の、子会社などの体質は、公団時代とほとんど変わっていないどころかむしろ悪化しているのが現実、というのです」 こう話すのは東京のあるジャーナリストだ。 「改めるはずの利権構造はそのまま温存され、業者からのキックバックや不透明な契約実態などの情報や噂が絶えない。ところが今となっては国交省もチェックできない部分が生じ、いわばブラックボックス化してしまった。今回のSA、PAをめぐる騒動は、その実態を端的に示す1例と言えるかもしれません」 「西日本高速道路サービス・ホールディングス」(NEXCO西日本SHD、大阪市)は、西日本高速道路管内のSA、PAを管理運営するために05年12月に設立。それまで管理していた財団法人から管理運営権を譲渡され06年4月、本格的に業務を開始した(上図参照)。 「今のSHDの最大の問題点は、役員会が機能していないために、経営の意志決定過程がきわめて不透明なこと。ノーチェックになった分、道路公団時代よりもさらに悪くなった」。あるSHD関係者は、声をひそめてこう語る。 鳩山政権発足以来、高速道路の問題は多くの国民の関心を集め、利用料無料化の是非などをめぐって様々な議論が展開されている。その一方で、民営化した結果、運営の実態はどうなっているのか、このままでいいのか─といった視点からの問題提起や議論は、あまり行われていないようだ。 今回表面化したSA、PAをめぐるSHDとテナント業者のあつれきと、高速道路運営の暗部。これを契機に政府は、早急に実態を調査した上で、あらためて無料化問題や運営のあり方を議論すべきであろう。
民営化でブラックボックス化 高速道路運営 政府は実態調査を [2010年3月12日12:39更新]
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