高速道路運営問題 一部の幹部が好き放題(2)「県民新聞に抗議しろ」 [2010年5月10日13:48更新]

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(10年4月号掲載)

NEXCO西日本SHDのあるビル(大阪市)「こうした対応は、一般社員や中間管理職だけでなく取締役クラスも同じ。2人のやることに対して正面から異議を唱える者はおらず、役員としての責務などまったく果たしていません。

ですから、Y氏に追従する一部社員が『ミニY』となって無理難題を押し付けたり、横暴に振る舞う例が増えている。福岡支店長の件はその典型です」(SHD社員)。 

好き放題に振る舞う幹部とそれを許し増長させる企業体質。

NEXCO、SHDにはコンプライアンス、企業倫理といった理念は感じられない。それは、本紙の取材や報道記事への対応にも如実に現れている。



契約ちらつかせ本紙に抗議するよう強要 

本紙は3月号で、PA運営会社「クレッセ」(博多区)幹部の「SHD福岡支店長が、知人らの商品を取り扱うよう強要した」との証言を紹介した。

この時、事前にNEXCO、そしてSHDに質問状を送ったのだが、これを読んだSHD幹部がクレッセ幹部に「質問の内容は事実無根だ。福岡県民新聞に抗議しろ」などと求めたというのだ。 

 

SHD関係者の証言を総合すると、クレッセ幹部がSHD本社に呼び出されたのは3月10日午前。SHD側はY氏や広報室長ら幹部4人、クレッセ側は1人が出席したという。 

話を始める前にまずSHD側からクレッセ側に「メモは取らないように」との注意があった。その上で「県民新聞から質問状を送られ、非常に迷惑している。この質問状に心当たりはないか」とクレッセ幹部に問い質したという。

クレッセ幹部が「ない」と答えると「この内容が記事になるとクレッセとの信頼関係にも関係してくる。このままでは、今後の(PAにおける)賃貸契約にも悪い影響が出かねない」「クレッセとして県民新聞に抗議しないのか」と述べた。

クレッセ幹部の言い分にはほとんど耳を貸さず、強い口調で再三「抗議しろ」と要求したという。 

クレッセ幹部は「私の一存では回答できない。帰って相談し後日回答する」と答え会議は終了。同幹部は福岡に戻り、質問状に書かれた内容について社内調査を実施。間違いがないことを確認して翌11日、SHD側に「当社としては抗議しない」と伝えた。 

あるクレッセ関係者は、「契約をちらつかせて事実をねじ曲げようとするSHDの行為は許されるものではない」と怒りを露わにしている。 

本紙の存在 社内で握りつぶす

SHDはこの時の本紙取材に対し文書で「テナントへの商品提案はお客様満足度の向上を目指すためのもの」と回答した。そうであればなぜ、上記の証言にあるように、本紙に抗議するようクレッセ幹部に強要し事実をねじ曲げようとしたのか。 

一方、NEXCOは本紙が送った質問状に関し、現在にいたるまで何の回答もなく、完全無視の状態。筆者はこれまで多くの役所や企業に取材してきたが、今回の2社のような対応は記憶になく、初めてである。 

さらに、本紙は2社に3月号を5部ずつ送付したのだが、「2社とも誰かが握りつぶしたようで、社内的には福岡県民新聞の記事など存在していないことになっています」(SHD関係者)。このような企業に対して確認取材をする意味はないと考え、今回は質問そのものを行っていない。  

 

SHD社員はため息を漏らしながら、最後にこうつぶやいた。

「取締役会が機能せず、コンプライアンス委員会も名前だけ。現状では自浄作用など望めない。高速道路利用者はもちろん、多くの人々に会社の実態を知ってもらうしかないのです」