国庫補助ストップ要請へ(1)鹿児島産廃処分場問題で反対派住民ら [2010年6月23日10:24更新]

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(10年5月号掲載)

予定地を調査する住民、専門家ら(昨年12月)鹿児島県(伊藤祐一郎知事)が同県薩摩川内市で進めている産廃処分場建設問題で、反対派住民らが近く、同事業に補助金を出さないよう求めるため、環境省に対して要望活動を行う。

県は「対象事業費については国庫補助を見込んでおり、環境省と協議する」としているが、反対派代理人である久留米の弁護士は「これほどずさんな計画・事業に国が補助金を出すことはまず考えられない」と自信を見せる。

仮に国からの補助金がストップすれば計画の見直しを迫られるのは必至で、事業が頓挫する可能性も出てくる。鹿児島県と反対派住民との間で今後、国の補助金をめぐって激しい綱引きが展開されることになりそうだ。  



 

この計画は、鹿児島県が薩摩川内市川永野地区の採石場跡地(下地図参照)に産業廃棄物管理型最終処分場を建設するもの。予定地が霊山として名高い冠岳の中腹にあり、かつ水源地でもあるため、地元住民らが県庁を訪れ伊藤知事に面会を求めるなど、激しい反対運動を展開している。  

計画に反対しているのは「鎮国寺」(同県いちき串木野市、村井宏彰山主)など九州7県の49寺院で構成する「九州四十九院薬師霊場会」が中心の「冠嶽(かんむりだけ)の霊山性を守る会」と地元住民で構成する「冠嶽水系の自然と未来の子ども達を守る会」の2団体。

2団体は昨年12月、専門家に依頼して予定地の地質調査を実施(写真上)。その予備報告を受けて3月、「計画には多大な問題がある」として公開質問状を鹿児島県に提出した。

県側は4月、「十分な現地調査により地質状況は把握している」「様々な点から適地であると判断した」などと回答した。だが2団体は「こちらの質問にまったく答えていない」と反発、再回答を求める方針。

いい加減でずさん 霊山性には触れず 

反対派住民が出した質問状は8項目。うち5項目で、予定地の地質や安定性、透水性などの観点から予定地が処分場建設に適切ではないと指摘している。 

質問状によると、専門家の調査の結果、予定地には硬質な岩盤だけではなく一部軟らかい地質があることや近くに活断層があることなどが判明。「地盤沈下や斜面崩壊、地下水汚染の可能性が高く、予定地はこの種の施設建設には不適切」と結論付け、県が最適地とした根拠・理由を明らかにするよう求めた。 

これに対し県側は「文献や現地の調査に加えてボーリング調査を実施し、十分な強度があると評価している」「万全な遮水構造を構築する」などと、これまで述べてきた見解・主張を繰り返すばかり。

また冠岳の霊山性については事実上まったく触れていない。 

2団体は他の候補地との比較・検討した結果資料も開示するよう求めたが、本紙が09年7月号で報じた通り、候補地の敷地面積やアクセスの利便性などについて○△×で示した「調査結果」、最後に残った4カ所について同じ項目を挙げて調査内容を示した「概要書」だけで、各候補地を詳細に調査した報告書や選考の際の会議録などはなかった。

(続く)